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エピソード(EV-2):身体の軸と節、そして四肢-脊椎動物の多様性の不思議

脊椎動物の出現そのものは、カンブリア紀の後期からオルドビオス紀、約5億年前後と考えられる。それが陸に上がったのは約3億5000年前で、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類と分岐し、進化してきた。
 
その特徴はいうまでもなく、椎骨の連続である脊柱と、前進運動機構(Undulation、うねり(くねくね)運動)とその制御のための、魚類の鰭に起源のある四肢である。
 
身体は頭側から尾側への前後「軸」と、その前後軸自体が頭、首、胸、腹、腰・尾という機能集合の「節」でできている。
こうした構造は、節足動物である昆虫にも共通する形態形成遺伝子のhox遺伝子が規定している(参考:高校生物学補習YouTubeより、https://www.youtube.com/watch?v=squJltnmmQI、さらに詳しくは、https://www.youtube.com/watch?v=mSUb37bJaLA)。
 
形態形成遺伝子、なかなか理解は難しいが、地球上生物に共通する身体設計図とは何かという、深い問題の入り口でもある。焦らず、諦めず、他のYouTube資料も探して理解を広げてください。
 
 
西野流呼吸法の稽古をしていると、こうした地球上の動物の進化に思いが至るから不思議だ。
「足芯呼吸」により、足の裏から丹田、さらに背骨を上方へたどって頭頂まで、何度も身体内を意識する。
一方、「華輪」という稽古は、この前後軸である脊柱を中心にして、体幹と上肢を回旋する。
両手を振るといやでも、前足として使った四足歩行のことが思い出される。
そして、そうした200回以上の回旋を経て、全身の筋群に脱力感(あるいは四肢と体幹の連携感)が身に付く。
 
 
少しこうした身体の構造の最近の研究を調べてみよう。
椎体の数は動物種ではほぼ一定している。
例えば人は33椎体であるが、蛇では10倍の300個前後の椎体が存在する(Nature、2008;https://www.nature.com/articles/nature07020)。
これは形態形成の過程でいくつかの遺伝子(特定されている)がサイクル毎に次々働いて、順次形成される。蛇の場合は、100分間で1椎体が形成されるという(https://media.springernature.com/m685/springer-static/image/art%3A10.1038%2Fnature07020/MediaObjects/41586_2008_BFnature07020_Fig1_HTML.jpg)。
 
そしてこの椎体の前後軸に対して、魚類では対鰭(胸びれ、腹鰭)と呼ばれる、上陸した動物にとっての四肢が形成される。
四肢の形成にも先に出てきた、hoxAとかhoxD遺伝子が関与する。
例えば上肢の手首以下、腕部分、拇指側、小指側の形成が規定されている。
 
 
今後全塩基配列が判明した我々のゲノムの中で、こうした担当遺伝子の機能やその発現の制御が、身体形成にいかなる意味があるか、どんどん解明されることになるだろう。
 
 
さらに興味あるのは、この四肢がまた進化を経て逆に消失する事象である。
蛇では四肢全部が、クジラでは後肢が退縮している。
こうしたことが数千万年間の時間で起こるのは、足の形態形成に関与するゲノムの部分には、繰り返し配列として知られるtransposon(ゲノムのなかの寄生的に遺伝子とでも呼ぶべき構造、LINE(long interspersed repetitive element)やSINE(short interspersed repetitive elements))などが知られている(脳科学辞典:https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%82%BE%E3%83%B3)。
 
進化とは、こうした寄生的遺伝子が長い期間にあちこち移動することで、全く見た目が違う身体になる過程だ、という考え方もある。
逆に、こうしたSINEがゲノムのどの位置に挿入されているかが、進化系統をたどる上での指標となる。
この方法で調べると、ひげクジラや歯クジラは、カバと同じ系統である偶蹄目に入ることが判明している(Wikipedia、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AF%A8%E5%81%B6%E8%B9%84%E7%9B%AE)。

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