日本でポッドキャストが流行るかを再び考える


特にアメリカを中心に流行しているというポッドキャストだが、最近になって日本でも流行ると主張する人が表れ、今年に入ってポッドキャストに力を入れる日本のラジオ局も増え始めてる。本当にポッドキャストは日本でも流行るのだろうか?

ポッドキャストとは?

ポッドキャストとは、インターネットで聞ける音声データによるラジオ番組のことである。近年になって欧米で流行ってると言われているポッドキャストだが、そのじつ登場はそこまで最近ではない。

日本でも十年ぐらい遡れば、ポッドキャストがもてはやされたことがあった。一般の人が作ったものもラジオ局の制作も含め、日本でもポッドキャストが一時は大量にあった。

しかし流行りは去り、配信されるポッドキャストも減り、TBSラジオのようにポッドキャストそのものから撤退したラジオ局も現れた。その後、一部の人気ポッドキャストは残っているが、動画やSNSのような他の人気コンテンツの中に埋もれてしまった感じは拭えなくなった。

そして今、ポッドキャストが蘇る…のか?

近年になって、アメリカを中心にポッドキャストが流行っているとされ、日本でも去年の末辺りから日本でポッドキャストが流行ると主張する人が出始めた。

今年に入ってから、ポッドキャストに力を入れるラジオ局が増え始めた。始めに私が気づいたのは、ニッポン放送がオールナイトニッポンゼロを本格的に配信し始めたことだ。他にも、J-WAVEがSPINEARと言うサービスをこの春から始めて、ラジオ番組のポッドキャスト配信だけでなく、オリジナルのコンテンツも配信を始めた。クラウドサービスに移行したはずのTBSラジオも、スポティファイをスポンサーに迎えて、ポッドキャスト配信を始めた番組(通称アトロク)も出始めた。

やはり、とどめはニッポン放送が主催する一般制作のオリジナルのポッドキャストから優れたコンテンツを選ぶコンテストが始まったことで、近頃その大賞が発表されたばかりだ。私の印象でも、素人制作のポッドキャストはここ数年で(駄話を脱する)質の高いものが増えつつあると感じる。

日本でもポッドキャストが流行る条件は揃ってきたようにも見える。これから日本でもポッドキャストは流行するのだろうか?

はっきり言おう、日本でポッドキャストが流行る気配などない!

日本でポッドキャストが流行らない理由

以前の記事でも、日本でポッドキャストは流行りそうにない理由は触れた(素人制作番組の質とビジネスモデル)。他にもスマートスピーカの普及具合も関係あるかもしれないが、特に確証はないのでそこには触れない。ラジオクラウドやJFNパークのようにポッドキャストとは異なる音声データの問題もあるかもしれない。

今回はまた別の視点からこの問題に迫ってみたい。

異常なまでの日本のYouTube依存

最近になって日本では、多くの芸能人がYouTubeに参戦し始めている。その中で、ある芸能人がYouTubeに投稿し始めて話題になったが、それがその芸能人が長年やりたくてできなかったラジオ番組だという。もちろん、ラジオ番組をやりたいならポッドキャストでも構わない(むしろ適切な)はずだ。なぜその芸能人はYouTubeでラジオ番組を配信し始めたのだろうか?

その芸能人がポッドキャストを知らなかった可能性も当然ある。しかし、もっとも大きな理由は日本でのYouTubeの圧倒的な知名度にあるの考えるのが妥当だ。

YouTubeには、日本のラジオ局で作られた番組が上がっていることも多い。もちろん、これは公式なものでなく、勝手に上げられた法的に問題のあるものだ。だが、そうした違法でアップされたラジオ番組は人気でよく聞かれている。YouTubeに上がっている中にはポッドキャストで配信されているラジオ番組もたまにある。

最近は中には、YouTubeでしかそうしたラジオ番組を聞かない人さえいる。せっかくポッドキャストで配信してもYouTubeでのアップロードには敵わない気がする。それはなぜか?それはYouTubeの圧倒的な利用者数と、それを可能にしたビッグデータを活用したプラットフォーム作りにあると言える。

ポッドキャストはYouTubeの壁を超えられるか?

ポッドキャストの普及にとって、YouTubeは壁になっている。特に日本では、発信する側と聞く側もポッドキャストよりもYouTubeへと導かれる結果になっている。

ポッドキャストからもっと視点を広げてれば、日本の芸能人がネットフリックスのようなサブスクリプション(定額有料サービス)に向かわずに、まずYouTubeに向かってしまうのはなぜか?を考えてみよう。日本では、ポッドキャストも含め他に適切なサービスがあるにも関わらず、YouTubeに過剰に集中する理由はもっと問われてよい。

この理由の一つはYouTubeが便利な巨大プラットフォームであるせいだ。ただ、これは海外でも事情は同じはずだ。日本のYouTube依存には別の理由が必要だ。そこには日本の特殊なメディア事情があると思うが、それを語るともはやただのポッドキャスト論の域を大きく超えしまう。

日本でポッドキャストが流行りにくい理由の背景には、日本の特殊なメディア事情が控えている…と指摘するところで今回はおしまい。


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