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寿司レベ

私は社会人になるまで、まともに
板前さんに注文して都度握ってもらうお寿司」を食べた事がなかった。


回転寿司は美味い!

100円寿司も美味い!

生魚が安価に食べられる日本に生まれて良かった!

と思いながら寿司を食っているし、今もそう思っている。



ただ、新卒の時、彼に連れられて初めて行った板前さんのいるお寿司屋さんは、私にとっての「寿司」という料理の概念を更新する体験だった。



まずカウンターに座る。緊張。
飲み物を聞かれる。ウーロン茶でもいいのだろうか。
その寿司屋に行き慣れた彼が同じくウーロン茶を頼んでいたので大丈夫だろうと一先ず胸を撫で下す。


さて、注文...


助けてくれ。


あの忙しそうな板前さんにいつ話しかければいいのだ。
そして私は実はワサビが食べられない。

恥ずかしい。

大人がこういう場所でワサビ抜きで注文してもいいのだろうか。


不安を彼にそっと打ち明ける。
すると彼が良いタイミングで板前さんに声を掛けてくれた...!
ありがとう...ありがとう....

「注文いいですか?2人前で。この子の方はワサビ抜きで。」

「はい!」
板前さんは嫌な顔もせず受け入れてくれ、それから彼に注文されるがまま、新鮮な寿司を次々に頬張る。


う、うまい......!


ネタの厚みが米に対して大きすぎるでもなく、
適度に贅沢な厚みで口に飛び込んでくる。

そして口でとろける魚の旨みが含まれた脂
青魚が生臭いなんて事はもちろん無く、次々におかわりを置いてくれるガリさえいつものとは違う...!


そして隣で黙々と寿司を食う彼の注文の仕方は、20代のくせに堂に入っている。

まずマグロやサーモンといった、回転寿司でメインを張るエースネタは頼まない。

白身と青魚、たまに脂の豊富な季節のネタを挟み、最後は芽ねぎで締める。




いや大人かよ!!!!


対して私は寿司初心者。


目の前に板前さんがいるのに、分厚い寿司のネタだけ剥がして

醤油にワンバンさせてもう一回シャリとフュージョンさせる

という下品極まる食べ方をしてしまったり、
(後に彼に付き合う前にあれされてたら付き合ってなかったと言われました)

慌てて寿司下駄の上に置かれた寿司を倒して

死...

と言う声にならない声を出して勝手に絶望したりしている。
(もちろん板前さん達はそんな事気にも留めず、何なら笑顔で向きを直してくれた)


自分の寿司レベルの低さ、そして彼の寿司レベルの高さ...

寿司レベ格差


を実感したデートだった...
いつか彼と同じ寿司レベになれる日が来るのだろうか...

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