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詩『apostrophe』

原稿用紙の升目を舞台にして
無視された誤字脱字と踊ろうか
記号で隠された息遣いは
確かに鼓膜を巣食っている。

貴方が豆腐を食べるとき
必ずはじめに左端の角を匙で掬い取る
歯磨き粉がなくなりそうなとき
広告の曲を調子外れに口遊む。

喉元にアポストロフィ
言語化するまでもない気づき
記憶が液体ならもう
蒸発して残り香の末路。

指先にアスタリスク
残虐な対義語に埋もれたい
理想が額縁ならもう
絵は抜かれて空虚の偶像。

悪癖のなか気づかぬふりで
沈黙の誤字脱字を拾い集める
記号で隠された息遣いは
顔を上げれば確かにいる。

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