詩『last august』
残暑を飲みながら闊歩する台風の眼を睨んだ
光る静寂が私を軸に渦巻いている 宵闇を遮りながら。
憎むべき恒星系の光源が跨ぐ日付変更線の斜向かいで
惑星の回転を緩めるためのショートカット
文字盤の異字体を打ち込むのは徒労の極みだと。
揺らぐみどり視点は否応なしに移ろう
胡乱な鼓動で抗うには弱音を抱えすぎた心臓
異次元のパスワードには接続済み
種を個が越えるため飛び込んだ電子の波の中
巻き戻しの効かない十二進法の夕景に
防災無線から流れるオルタナティヴロック。
彼岸までの命綱あるいは此岸の熱を忘れ去る絶縁体
立方体の隣にまた立方体 マンネリスムの常套句に洗われ
時代のマトリョーシカから抜け出す術は未だ実証不可能。
殺される前に死んでやる。
創造できないなら破壊するのみ 腐敗した二元論の片隅で
我が進退ここに窮まれりと嘆きながら死神と口づけを。
表面を見ずに裏は見え透けない 生きるには飽き飽きだけど
黄泉の国は語ることで辿り着く場所だから さよならだね。
子供みたいな感傷主義や愛は丸めて投げ棄てた
残暑を飲みながら闊歩する八月の最期に。