詩『箸の持ち方がわからなくなって』
箸の持ち方がわからなくなって
豆粒みたいな思想ひとつ器用に扱えません
意図的に誤植を加えた遺伝子の中で
ひとの心は恒に形質転換していくもの
結局わたしは独りに成れませんでしたよ
貴方がそうだったように。
瞬きが止まらなくなるのを
想像すると息が詰まるような
瞳を開ければ水槽に押し込まれる頭
透明な涙はとろけて消えていく。
箸の持ち方がわからなくなって
狂言綺語の類には食欲を求められません
諦められるなら楽かなと言って
生きる価値も思い浮かばなくなって
単純な言葉しか脳裏を過ぎらなくなって
気づいた
本当の言葉は此処にしか宿らない
光になる前に貴方が吐き捨てた闇のように
まばゆい風で在れる場所を探す
私がそうだったように。