詩『Raspberry』
小指を絡めて額を合わせて昇せちまった想い出の果実を頬張って
力を強めて痛いから離してなんて気づかぬままに擦れ合っていた。
灯りを消して言葉を忘れて溢れちまった涙の数を星屑に結びつけて
いまだ求めて苦いから触れないで気づかぬままに首を締め合っていた。
繰り返しの夢模様に染められた壁紙に寄りかかった
布団の中で膨らむ寝息をそっと奪おうとしている。
臆病者だと罵られようと救いようのない鈍感を
誰かが愛してくれるの 誰かが認めてくれるの。
焼け焦げたラズベリーの匂いが嗅覚をくすぐって溶けた
淡く育つ後悔の芽吹きが青いつぼみをやわらかに結ぶ。
小指を切って額を冷まして昇せちまった倦怠の果実を湯がいて
力弱めて痛みよ飛んでゆけ気づかぬままに狂い合っていた。
灯りを点けて言葉を探して溢れちまった嘘の類を惑星に括りつけて
いまだ欲しくて苦くても良くて気づかぬままに首を絞め合っていた。
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