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世界でバリだけの特別な日!音もせず、電気も使わず、家から出ない?バリヒンドゥーの新年「ニュピ」
ニュピとは何か?
こんにちは!今回はバリの特別な日「ニュピ」についてご紹介します。ニュピは、バリのヒンドゥー教における「静寂の日」として知られ、新年を祝う特別な日です。毎年3月頃に行われ、サカ暦のティレム・ケサンガ (IX)にあたります。この日は、神々の浄化の日とも信じられています。
ニュピの意味と儀式
ニュピでは、ヒンドゥー教の神、イダ・サンヒャン・ウィディ・ワサに祈りを捧げ、人間と宇宙の要素を浄化することが重要な意味です。この儀式は、以下の5つの段階を経て行われます。
メラスティ(MELASTI)
タウル・アグン・ケサンガ (TAWUR AGUNG KESANGA)
オゴホゴ (OGOH-OGOH)
ニュピ (NYEPI)
ネンバック・ゲニ (NGEMBAK GENI)
最初の3つはニュピの数日前に行われ、最終的にニュピ(静寂の日)を迎えます。この日は、日常から離れ、心を落ち着けさせるようにします。
1. メラスティ
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ニュピの段階の中で最初に行われるのが「メラスティ」という儀式です。この儀式は、自然の汚れを命の水で洗い流すという意味を持ちます。
メラスティでは、ヒンドゥー教の寺院にあるすべての祈りの道具が海で清められます。海は「ティルタ・アメルタ」、つまり生命の聖水の源と信じ、とても重要な段階です。
バリでは村の人たちと一緒に行うこの儀式では、夜中から朝方にかけて村から海まで歩いていきます。皆で協力し合い、神聖な体験を共有する特別な時間です。
この通りメラスティは、ニュピの始まりを告げる大切な儀式ですね!
ペンゲルプカンの日
ペンゲルプカンの日は、ニュピの前日に行われる重要な行事です。この特別な日は、2つの段階から成り立っています。まず、家の中や庭、さらには周囲の地域を清め、ブタ・カラ(邪悪な存在)を追い払うことを目的としています。この儀式は、悪影響を除去し、新年を迎える準備を整える大切な意味を持っています。
この日には、地域の絆が深まり、人々が心を一つにして新年を迎える準備を整える姿が見られます。
こうした儀式は、バリ島の文化の豊かさや、人と自然、そして神々とのつながりを実感させてくれる貴重な時間です。
2. タウル・アグン・ケサンガ
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バリのニュピにおける「タウル・ケサンガ」の儀式は、昼間に行われる段階です。この儀式の目的は、人間の中にある邪悪な存在を浄化することを目的としています。
この日、村の人々はブタ・カラに「チャル」(お供え物)を捧げます。ブタ・カラは自然と人間のバランスを崩す存在とされっという意味を持っています。
3. オゴホゴ
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ニュピの前日、夕方になるとバリ島では家々で邪気払いの行事が行われます。家や庭にタウル米を撒き、松明や線香の煙で清め、竹を叩いて音を出し、邪悪な存在「ブタ・カラ」を家から追い払うのが目的です。
その後、各村では巨大な張りぼて人形「オゴホゴ」を練り歩きます。村の人々は、家から追い出されたブタ・カラがオゴホゴに乗り移ると信じており、最後にオゴホゴを燃やすことでブタ・カラを浄化し、再び元の場へ戻ることを神様に願います。ブタ・カラは恐ろしく神秘的な存在と想像され、人間の生活や自然との不調和をもたらす象徴とされています。
4. ニュピ
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ニュピの実行時間は、朝6時から始まり、翌日の朝6時に終了します。
ニュピを始める時、ヒンドゥー教はチャテゥール・ブラタ・ペニュピアン (ニュピの時実行しなければならない四ツの事)を実行します、その中には :
a. アマティ・ゲニ (Amati Geni) : 火や電気などの光を一切使わず。家の中も外も暗く保たれます。これはただ光を消すだけではなく、心の中に潜む怒りや興奮を沈め、静けさを取り戻す意味も込められています。
光や炎は私たちのエネルギーを象徴し、時には怒りや焦り、強すぎる感情を引き起こすことが多くあります。この戒律では、そうした感情の「光」を一度消し去り、自分の内面に平穏を取り戻すことを意味します。
b. アマティ・レラングアン (Amati Lelanguan) : 贅沢や遊びすぎを控える。これは単に「節約しなさい」「慎みなさい」ということだけではなく、何事もほどほどに、自分の心や行動をコントロールすることの大切さを教えてくれています。普段の日常の忙しさ、楽しむことに夢中になりがちですが、こうして立ち止まり、自分自身を見つめ直す時間を作ることも重要です。
人生はバランスが大事で、やりすぎると心や体に負担がかかります。ニュピの日を通して、バリの人々はそのことを再確認し、心をリセットして、慎み深く生きることの意味を考えるのです。
c. アマティ・レランガン(Amati Lelungan) : 外出を禁じ、自宅で一日を静かに過ごします。街も村も静まり返り、いつも賑やかなバリ島全体が、まるで止まったように感じられるほどです。この日は空港も閉鎖され、国内線も国際線もすべて停止し、観光客も含めて島全体が移動を制限されます。
この戒律は行くべきではない場所に立ち入らない、つまり、日常生活の中での誘惑や、つい足を踏み入れてしまいがちな場所、心の迷いを持つべきではない領域に対する戒めでもあります。この一日は、外の喧騒から距離を置き、家族と穏やかに過ごしています。
また、この戒律には、環境への配慮という側面もあります。人々が一日外出を控えることで車やバイクの交通もほとんど止まり、排気ガスも減り、空気が浄化されるのです。この一日を通して、自然と調和し、健康的にも良い影響になります。
d. アマティ・カリヤ (Amati Karya) : 24時間の間、仕事をすることが禁じられています。この日の間は、仕事やビジネスの活動を一切行わないため、通常の生活リズムが大きく変わります。
この戒律の教えには、良くないことを避けるという意味も含まれています。仕事をすることは大切ですが、時にはその労働がストレスや不安を生む原因にもなります。この特別な一日には、そのような良くない影響から解放されることを促してくれます。
さらに、この戒律は、私たちにとって「休むことの重要性」を再認識させてくれます。忙しい日常生活の中で、自分自身のケアを怠りがちですが、この日はその逆境から解放される機会ができるのです。
ニュピの夜空
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ニュピの日になると、バリ島の夜空はまるで宝石のように輝く星々で満ち溢れます。この特別な一日は、普段の忙しい生活とは全く異なる静けさに包まれ、星空が見せる美しさに心を奪われる瞬間が訪れます。
どうしてこんなに夜空が綺麗にできるのか?
その理由は、日常生活で常に存在する光害や乗り物の排気が一時的に消え去るからです。
通常、私たちの生活空間は、街の明かりや車のヘッドライト、様々な人工の光によって覆われています。そのため、夜空に輝く星々を見上げる機会は意外と少ないものです。しかし、ニュピの日には、外出が禁じられ、全ての電気が消され、まるで世界が一時停止したかのような一日です。
この時、人工光の干渉が最小限に抑えられるため、普段は見ることのできない星々の美しさが際立つのです!
空気中の汚染物質が減り、騒音もなくなることで、私たちは自然の美しさに心を開くことができます。
無数の星がまるで私たちに語りかけているかのように輝き、宇宙の広大さや神秘を感じることができるのです。この夜空の景色を見ると、自然とのつながりを改めて実感させてくれる大切なひとときです!
5. ネンバック・ゲニ
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ネンバック・ゲニは、ニュピの最終段階として非常に重要な段階です。この特別な日には、私たちが過去の行動を振り返り、これまでの出来事や人間関係について考え直す機会が与えられます。私たちは、日常生活の中での小さな誤解や未解決の問題を思い出し、それを解決するために周囲の人々に謝罪することが求められます。
このようにして、心の中に抱えた不安や負担を解消し、前に進むための準備を整えるのです。
ネンバック・ゲニでは、家族や親戚、友人、近所の人々を訪ねることが習慣となっています。この日、私たちは自分の思いを率直に伝え、心から謝罪することで、互いの絆を深めることができます。謝罪は単なる言葉だけではなく、相手を思いやる心が込められた行為です。
また、ネンバック・ゲニのこの特別な機会に私たちは神様に祈りを捧げることも大切です。心を込めて祈ることで、感謝の気持ちを表し、また新たな年に向けての希望や願いを込めます。私たちは、これからの一年がより良いものであるように、神様にお願いするのです。
さらに、沐浴もネンバック・ゲニの日に行われるのが多いにあります。沐浴は、心身を清め、新たなスタートを切るための儀式です。この行為は、過去の出来事を洗い流します。神聖な水で身体を清めることで、内面的な浄化も促され、心が軽くなり、新しい気持ちで日々を迎えることができます。
取材
こちらは、私の学校のヒンドゥー教の先生に「ニュピ」についてお話を伺ったときの内容です。ニュピについての深い意味や背景を教えていただき、なぜこの特別な日が選ばれているのか、そしてその意義についても改めて考える機会になりました。
質問:どうしてニュピはティレム・ケサンガの日に行われるのですか?ティレム・ケサンガとはどういう意味ですか?
先生の答え:
「ティレム・ケサンガ」という言葉は、暗闇が深く静まる時、つまり最も暗い月のことを指しています。バリ暦において、「ケサンガ」とは「九」を意味し、「ティレム・ケサンガ」は1年で最も闇が深い九番目の月にあたります。この月には月明かりがほとんどなく、空は真っ暗に包まれますが、やがてその闇の中から少しずつ光が現れるように、その光が新たな希望が生まれるという解釈です。この「闇から光へ」という自然の変化が新年の始まりにふさわしい象徴であるため、ニュピがこの日に設定されのお話です。
質問:ニュピを実行する意味とは何ですか?
先生の答え:
ニュピは、バリ島でしか行われない特別な儀式です。この日は、ただの「静寂の日」というだけでなく、深い反省と内面の浄化のための時間です。世界中の人々にニュピを通して伝えたいメッセージがひとつだけあります。それは、「自分がこれまでしてきたことを振り返り、新しい年に向けて心を改める」ということ。私たちは過去の行動や考え方を再評価し、次の年に新たな希望を持って進んでいくのです。
ニュピの儀式は、体と心を浄化し、新たなスタートに備えるための大切なプロセスです。私たちはこれを通して、自分の過去を振り返り、静かに再出発するための準備です。この日には、日常を離れ、真の意味での「静けさ」を体感し、内なる平和を取り戻すことができるのです。
ニュピの全体を通して、私たちは「自己反省」「浄化」「再生」を実感します。この日は、心の中にある「暗闇」を取り除き、新しい「光」を迎えるための大切な機会なのです。
これがバリ島ならではの新年「ニュピ」です。いかがでしたでしょうか? ニュピはバリの人々にとって、とても大切で特別な日です。この記事を通して、少しでもバリの文化に触れていただけたなら嬉しいです。
また次の記事でお会いしましょう!最後に読んでいただき、ありがとうございました。