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社史のゴールは紙芝居? 会社物語をまとめる3つのステップ

ここ15年ぐらい、企業の社史編纂のプロジェクトに携わっているのですが、参加する社員のみなさんに「社史のゴールは紙芝居です」とお伝することがあります。

つまり、限られた数のスライドを使って、紙芝居のように、会社の歴史を分かりやすく「会社物語」として話せれば大成功だと私は考えています。

では、どのようにすれば、紙芝居のような分かりやすい物語にまとめられるのでしょうか? 私がおすすめするのは、3つのステップです。

年表を整理する

年表? いきなり面倒な作業から入るのか、と思われるかもしれません。
でも、社史は史実に基づくものですから、事実の整理は必須です。それにこの年表から会社物語のストーリーが浮かび上がってくるのです。

それぞれの史料から重要と思われる出来事を確認したら、年表に転記をしていきます。まずは、アウトプットを意識せずに、知り得た情報を盛り込んで詳細な年表をつくっていきましょう。

サンプルとして、サッポロビールの歴史を年表化してみます。

1949年から2002年の歴史を年表化すると下記のような感じです。

サッポロビール「歴史・沿革」ページより作成 https://www.sapporobeer.jp/company/history/

それぞれの行には、年(できれば月まで)、出来事の内容、出典(どの資料から引っ張ってきた事実か)を記しておきます。

社史編纂において年表は「帰る場所」です。作業が進み、原稿などができたときも、年表にしっかり出典が記載してあれば、確実に事実確認ができるのです。

ある程度、年表づくりが進んでいくと、それぞれの出来事を大きく分類できることに気づきます。「販売戦略」「ブランディング」「製造拠点」「技術開発」「業績」など、分類の項目を考えて、それぞれの行に加えていきます。こうしておけば、テーマごとに歴史をまとめる時にも役立ちます。

もうひとつは、オイルショック、バブル経済崩壊、リーマンショックなど社会の出来事も年表に加えてみましょう。記載するのは、会社の事業と密接な関わりのあった史実についてのみでよいと思います。社会背景が分かると、年表に記載された出来事についてもより理解が深まっていきます。

年表づくりは社史編纂が完了するまで続きますので、アップデートして、プロジェクトメンバーと最新版を共有する方法を最初に決めておくとよいと思います。

「お団子マップ」をもとにヒアリング

どれだけ膨大な資料があっても、それぞれの史実が結びつかなければ、物語にはなりません。経営者、社歴の長い社員、そして引退したOBの方にヒアリングをして、会社の歴史、物語の流れについて学んでいきます。

ここで年表が役立ちます。ヒアリングをする方の在籍期間とプロフィールが分かれば、その方が会社でどんな出来事があった時代に働いていたかが分かるのです。

次に、その期間に起きた大きな出来事をピックアップして、お団子のように並べていきます。年表だと細かすぎるし、直接的に関係ないことも書いてあるので、ひと手間かけて「お団子マップ」をつくるのです。

サッポロビール「歴史・沿革」ページより作成 https://www.sapporobeer.jp/company/history/

長きにわたり在籍していた方であれば、10年ぐらいで区切って1枚のシートをつくるとよいでしょう。

これをつくっていくと、聞き手として、会社とその方の関係の大きな流れが整理されていき、自然と質問事項が生まれていきます。

ヒアリングするお相手にこのお団子マップを見せるのも効果的な時があります。マップで列挙されている事実を見て、思い出すこともあるだろうし、こちらが重要と思っていても、実は関係ないことであれば指摘をしてくれます。

詳細な年表を見せてしまうと、読み始めてしまい、話が脱線するおそれがるので、テーマを絞るうえでも、マッピングシートをつくってみてください。

ヒアリングが終わったら、録音した音声から文字起こしもしくは要約をつくっておきます。面倒でもヒアリングの感動が残っているうちに内容を整理すると、聞いたことへの理解が深まり、追加の質問や調べるべきことが分かってきます。

何よりも、ヒアリングから日にちが経ってしまうと、作業が面倒になります。最近はAIの文字起こしサービスも充実していますので作業はずいぶんと楽です。ヒアリングから、新たな事実が判明したら、それも年表に転記していきます。ヒアリングの音声と要約も大切な史料ですので、後世に残す方法も合わせて考えましょう。

紙芝居をつくる

さて、紙芝居です。年表の整理、お団子マッピングシート、ヒアリングを通じて、あなたは会社の歴史でどの出来事が重要であり、残すべきかが分かったはずです。

まず、いくつの場面から構成する紙芝居にするかを考えてみましょう。全部を説明するのは無理です。名場面だけを取り出して、並べてみてください。そして、それぞれの場面をどのようにつなげていくかをイメージしてみてください。

あとは、伝えたい出来事ひとつについて、1枚のスライドをまとめてみましょう。写真やイラスト、史実の箇条書きがあれば十分です。発表の機会をつくって、そのスライドを説明する原稿を書いてみましょう。原稿の長さやスライドの数は発表する時間に合わせて決めてみてください。

サッポロビール「歴史・沿革」ページより作成
https://www.sapporobeer.jp/company/history/1994.html
写真は筆者

これで紙芝居の完成です。

もし、周年事業で歴史を紹介するサイトやパンフレットが必要であれば、年表と紙芝居を加工すれば、すぐにできます。

昔ながらの長い文章による社史を書けと言われたら。。。大丈夫です。それぞれのスライドについての原稿を細かく書いていけばよいだけです。

年表で出典を確認すれば、元の資料とヒアリングの内容にたどり着けますので、そこから引用しながら文章をふくらませていきましょう。

あなたの中に、会社物語のストーリーはすでにあります。アウトプットに応じて、ストーリーを引き出してあげればよいのです。

まとめ

史実を掘り起こし、整理して、会社物語を紡いでいく作業は骨の折れるものです。でも、だからこそ、大きな絵を描く必要があると私は思うのです。

会社の大切な歴史を後世の社員に伝える。
新入社員でも、生き生きと会社の物語をお客様に語れる。
それが社史の目的であれば、ぜひ、紙芝居という大きな絵を描くことから編纂をスタートすることが有効だといます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

今後も、社史編纂、会社物語づくり、そして、インタビューに関する記事を作成していきます。ご興味のある方はフォローをお願いします。

会社物語をつくることで得られる3つ成果について紹介した記事もあります。ご興味のある方はどうぞ(ちょっと長いですが、事例も入っています)。

雑記:本記事を書くにあたり、サッポロビールの歴史を引用させていただきました。学生時代は東横線沿線で過ごしたこともあり、恵比寿ガーデンプレイスはとても親近感があります。年表やお団子マップを整理しながら、気づくとサッポロビールの歴史をつないでいく作業が楽しくなっていました。社史編纂の原動力は歴史という物語を楽しむチカラなのかもしれません。



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