きっとこの子も縁遠い
結婚式に参列するのは好き。初めて出席したのは21歳のとき。短大を卒業し、仲間内で一番最初に社会人になった高校の友人が先陣を切ったのだ。
高校時代のほかの仲良しさんは、みな大学生。結婚はまだ遠い世界の話だとおもっていたのに、そうか、私たちもう結婚かぁとワクワクした。何着ていく?から始まって、ご祝儀っていくら包むの?まで。修学旅行前の女子高生のようにキャッキャキャッキャとはしゃいでいた。
2歳上の兄は大卒のサラリーマンなのだけど、中高とかなり親をハラハラさせる生活をしていたので、地元のお友達はヤンチャ系。親友は中卒の土建屋さんのかっちゃんだ。
かっちゃんはご両親が16歳の時のお子さんだとかで、絵に描いたようなドヤンキーだった。一度、私の高校の最寄駅で「おう、ハナコ」と呼びかけられたとき、一緒にいた友人が凍り付いた。誰?と聞くから、兄の親友と答えたら、学校でハナコの兄ちゃんはヤンキーと有名になってしまった。(※兄はヤンキーではありません)
かっちゃんは高校を1年で中退して土建屋に見習いとして入り、二十代半ばで独立。ヤンチャ仲間を数人雇って、社長として頑張っていた。若くに入籍したのだけど、式を挙げたのは何年も後だった。
「あれ?結婚してなかった?別の奥さん?」と聞いたら、兄曰く「嫁さんが独立したばかりだから結婚式はいいと断ってたけど、結婚式は育ててくれた嫁のご両親のためにするものだとカツが金貯めてて、目処が立ったから挙げた」のだそう。かっちゃんの漢気にしびれた。
受付や友人代表の挨拶、何なら余興で下手なダンスまで披露したこともあるのだけど、私自身は自分のときは結婚式はせず身内だけで食事会だな、と思っていた。
毎回、結婚式に行くと感動して、ウルウルしているというのに。呼ばれると嬉しいのに。
なんでだろう。
こんなワタクシメのために、貴重なお休みやご祝儀だなんて、いやいやそんなと思っていたのだ。ましてやひと様に両親への手紙を聞いていただくなんて畏れ多いと。変なところで妙に自己肯定感が低かったのだ。
まぁそんな心配しなくても、未婚のシングルマザーとして独身街道を驀進してしまったけれど。
先日、買い物にいったら、「こういう服ってどういう人が買うの?」と娘がいうので、チラッと見たらいわゆるパーティー服を扱っているお店だった。
「結婚式用よ」というと「こういうの買ってわざわざ来てくれるってこと? 他では着られないのに、ご迷惑じゃない? 私は結婚式はいいや」
うひゃ〜。アナタもこっち側でしたか。自分のことは棚に上げて、甚だ残念。非常に無念と悶えた。
そういえば、ミニバスの卒部式で、親への感謝の手紙を一人ずつ読む場面があったのだけど、他のお子さんは皆、便箋複数枚の感動的なスピーチをしてママたちを泣かせていたのに、娘は「毎週応援ありがとう。おかげで頑張れたよ。中学でもよろしくね」。以上、3秒だった。
スピーチしたら親子でハグして席に戻るのがお約束なのに、娘が求めてきたのはグータッチ。当時は照れ隠しなのかとおもっていたけど、今更ながら違う気がしてきたぞ。
この子もきっと縁遠い。
予感というより確信めいたものがあるけど、結婚家庭運最強という字画で名前をつけたので、神さまそこのところよろしく。