見出し画像

理想の夫婦

子どものころから新聞の人生相談を読むのが好きなのだけど、いつだったか、朝からいたく感激した。

60代後半のご婦人が夫一筋で生きてきて、自分たちは理想の夫婦だと信じていたのに、夫には10年来の不倫相手がいた。私の人生はなんだったのか、というような相談をしていたのだ。


なんとまぁ。40年以上も一途に夫を信じ続けた妻も素敵だし、信じさせた夫、よそに愛人がいるのに10年も隠し通した夫も偉いではないか、と。不倫の是非はともかく、奥さんのことを大事にしていなければ、態度に出てバレそうなものである。

人はいかにして恋愛観を育むのかしら。日本では漫画の果たす役割がかなり大きそうな気がする。少なくとも私は漫画の世界に夢みる夢子だった。

初漫画のキャンディキャンディから始まって、はいからさんが通る、ヴェルサイユのバラ、ホットロードとその年齢ごとに夢中になった作品は多々あれど、描かれているのはすべて純愛。浮気するヒーローなんて一人も登場しなかった。

男兄弟に囲まれているので、少年漫画も随分読んだけれど、やっぱり女は弱き者、守ってこそ男みたいな主人公ばかりだった。


だけど、現実はどうだ!!


私はクラスに女子が数人しかいない学科を卒業し、就職先も完全な男社会だったので、十代後半には「あれれ、純愛じゃない恋愛も結構ある?」と否が応でも気づかされたし、二十歳そこそこで少年少女漫画は罪深すぎる。青少年よ、読むならリアルな(浮気)男女が登場する女性漫画にしろと思うに至った。

とても上記のご婦人と同じ惑星、同じ時代を生きたとは思えない。まことに不幸であった。生まれ変わったら、60代後半まで夫を信じられる人生を送ってみたい。

ここの人生相談の回答者は毎度毎度、当たり障りのないツマラナイことを答えているのだが、この回も案の定、毒にも薬にもならないようなことを言っていた。

いやいや、そうじゃないでしょうと。

代わりにこのご婦人に「何をおっしゃる。そのお年になるまで一人の男性を信じて生きてこれたなんて、この殺伐とした世の中で、素晴らしいことではありませんか。信じさせた夫からもあなたへの愛が伝わってくる。まさに理想の夫婦です」と回答したくて、ウズウズしたのである。


いいなと思ったら応援しよう!