ちっぽけな死
どうしてもと泣いてせがむので、うっかりゲームセンターに連れて行ってやったのがいけなかった。
レーザー銃のシューティングゲームで、娘が首尾よく撃ち墜とした小型宇宙船から、一匹のハツカネズミが這い出てきたときはさすがに辟易したものだ。
他の宇宙船の窓からは、ネズミ達が操縦桿に苦戦しているのが見える。
冷たいコンクリートへ転がったハツカネズミは、娘の一撃で貫かれた腹から、夥しい量の臓器と血液を垂れ流し、目を見開いたまま、浅い呼吸でじっと動かず痛みに耐えている。
娘はしらけ切って、さもお前の罪だとでも言う様に、私に銃を握らせてさっさと行ってしまった。
この一匹を救うか、娘を追うか。私は立ち尽くしていたが、結局哀れな彼は最期の息を引き取った。そこでやっと、私は彼を両の手に取ることができたのだ。
既に彼の熱量の大部分は、コンクリートに吸収された後だった。
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