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江戸・明治に学ぶ、集まる楽しみ(とにかく集まった人たち)
1.居場所は村だけ、頻繁に集まった人たち
いまは全世代が「居場所探し」をしている時代です。
しかし、江戸・明治時代の人たちの居場所は、はっきりしていました。村だけでした。
村の平均人口は四百人と小規模。そこが日常生活の場であり、職場であり、遊び場でした。
村から出ることが少なかったので(車も電車もなし)、遠方への旅行経験者や他の土地で暮らした人(いわゆる世間師)は一目置かれたぐらいです。
出かけられない彼ら彼女らは、村内で頻繁に集まりました。
当時の日記を読んでいると「そんなに集まりたいのか」と思ってしまいます。
しかし、集まりたかったのです。車だけでなくテレビもネットも無かった時代、一人でいるよりも、楽しかったのです、きっと。
そして、引きこもってもいられなかったのです。ご近所さんが縁側から家をのぞき込みますから。「○○さんの顔を見ないが、元気かい?」って。
煩わしいかもしれませんね。でも、今の松本でも見られる光景です。
2.なぜに集まるの?
まず、村の運営のために集まる必要がありました。
村の公共事業(道の修理や、河川・山林の手入れ)と福祉事業(独居老人や貧困者のお世話)は村人がおこないました。領主に申し出ることはなかったのです。
そのため、相談事が多く、寄合いが多かったのです。
また、彼ら彼女らにとって、集まりが日々の楽しみの出発点でした。
集まったら、しゃべり、食べ、飲み、歌い、踊り、手拍子を始めました。彼ら彼女らは何かにつけて集まる機会を作りました。楽しむためです。
集まるのはとても良いこと、そして大切なことです。
他人が知人になり、友人になります。
社会的なつながりが多いと、幸福感をもって長生きできることや認知症が減ることが科学的に明らかになってきています。
そして、知人・友人がいること、特に、近所にいることは、セーフティーネットとしても重要です。
孤独死対策だけでなく、子どもの安全にも有効です。いわゆる「見守り、声かけ活動」です。端末を持って(持たされて)、遠隔で見守ってもらうよりも安心感がありますよね。
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3.集まりを避ける私たちと、集まりを楽しんだ江戸・明治時代の人たち
昔と比べると集まる機会は減ってしまいました。
私たちは、集まる楽しさよりも、集まる煩わしさを避けた、ともいえます。
近所の人たちと集まることは、お手軽で安上がりな日々の楽しみです。
地元の集まりを存分に楽しんでいた江戸・明治時代の人たちから学べると思うことは次の通りです。
①正月などの年中行事、結婚式などの通過儀礼、田植えの打ち上げなど、事あるごとに集まった。
②祭りをクライマックスとしてエネルギーを注ぎ込み、楽しむだけでなく、地元の人や親戚との絆を強め、さらに地元への愛着も高めた。
③年中行事は休日にして、仕事すると罰金を課し、メリハリをつけた。
④集まるための人間関係、問題解決のための人間関係、特に女性のネットワークがしっかりと作られていた。
「集まる楽しみ」では、彼ら彼女らの集まりについて述べ、それを見た西洋人の感想についても書いていきます。
人間はもともと一人ではなく、家族だけでもなく、集団を作って、強い動物を倒して、食べて、生きてきた動物です。
一人の時間は大切ですが、集まりの輪に入れば、煩わしさを越える楽しさと幸福感を得られる、と私は思っています。
次の記事では、彼ら彼女らが住んでいた村について紹介します(人口、広さ、役割・責任などの基礎知識です)。
それに続いて、最も楽しくて熱い集まりだった祭りについて書いていきます。お祭りは、一人ではできませんからねえ。
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まとめ
江戸・明治時代の人たちにとって、仕事を終わった後の楽しみは集まること。集まったら、しゃべって、食べて、飲んで、歌って、踊って、手拍子を始めました。
煩わしさから集まることは減ってきましたが、今は居場所やセーフティーネットとして集まりの価値が見直されています。
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