晶蔵 SHOZO

京都芸術大学修士課程在学中。研究テーマは現代アートにおける知覚と創造の場についてです。…

晶蔵 SHOZO

京都芸術大学修士課程在学中。研究テーマは現代アートにおける知覚と創造の場についてです。At Kyoto University of Art,research 'the field of perception and creation in contemporary art'.

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炎色曼荼羅 亀山トリエンナーレ2024 Fire colored Mandala       Kameyama triennale2024

 本作品では、亀山の特産品であるろうそくを用いながら、両界曼荼羅(金剛界・胎蔵)を映像で表現することを企図しています。設置場所は舘家の仏間で、実際に使用されていた仏壇をお借りしました。曼荼羅図はプロジェクターによって投影され、仏壇には大日如来を現す梵字のア字を掲出、瞑想を深めていたくための文言をサイネージにより提示しています。  曼荼羅(マンダラ)は、元来、仏教の流派である密教の経典に基づいて、仏を配置した図像により、その世界観を表現したものです。仏の姿を描写するのが一般的

    • 曼荼羅とは? 森敦が示した往還の回路

      1 境界の思想   まずは森敦の言葉を聴いてみよう。 「出羽三山は庄内平野に立ち、左よりはじめて羽黒山、月山、そして月山の右に連瓦する葉山の謂であったのだと。もしそうだとするなら、出羽三山は金胎両部の一大マンダラとしてより完璧な姿を現し、その悠揚たる稜線を庄内平野の空に曳いたであろう 」 『マンダラ紀行』  このように彼は山形県の庄内地方を曼荼羅と捕らえた。修験道の山として知られる出羽三山のうち湯殿山にある大日坊瀧水寺は空海が八百七年に開いた寺であり、あながち奇をてらった発

      • ずらしの美学 テクノロジーの憑依に抗して 今、再考すべき伝統の作法    

        はじめに なんとも言えない居心地の悪さ  安部元総理大臣撃たれる、との一報を聞いて国際的、組織的陰謀の可能性を疑った人も多いだろう。ところが犯人は単独で、宗教団体への恨みとはいえ、犯行自体にイデオロギーや政治的力学が働いた形跡はない。組織的な背景はなしにあくまでも個人的復讐として要人の殺害を実行した。無謀なテロ行為である。その半年ほど前に大阪の心療内科で多数の患者を巻き添えにして焼身自殺をした男やアニメーション・スタジオにガソリンを撒いて放火した青葉慎二被告のことも思い浮か

        • 橋の上で生活することの一つの哲学的考察

          1 空耳 「あ」がつく方は今日、東京に入れません。  とラジオ番組『深夜の灯』のアナウンサーが告げた。奇妙なことを言うものだと思った。しんしんと身体の奥まで染み渡ってくるような深い声である。ふざけているとは思えない。  今、ラジオで変なことを言わなかった?   と尋ねようとして黙々と車を走らせている運転手の表情をうかがったが闇にまぎれてよく見えない。空耳だろうか。もしそうならとんでもなく無様だし、頭のおかしな客だと思われるのが落ちだと考え直しそのまま再びシートに身を沈めた。車

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        炎色曼荼羅 亀山トリエンナーレ2024 Fire colored Mandala       Kameyama triennale2024

          父さんの羽化

          1 通話  あの頃はいつもそうしていた。みんなそうだ。  無駄話に基準などない。あるわけもない。  玄関の下駄箱に置かれた黒電話がちりりん、と鳴る。誰が一番乗りするか。板張りの廊下を走る足音が響く。  耳を澄ませば応答が聞こえるかもしれない。  さつき、かをる、まさみ。  呼び出されたのは誰?  待ちきれずに階段を駆け下りてしまう。ところがチン、と受話器は置かれた。間違い電話だってさ、と。間違いでもいい。誰かと話してみたかった。電話は外界への窓なのである。  もちろん二階の窓

          父さんの羽化

          見えないものを見えるように

           防波堤の向こうで夕陽が日本海に反射してまばゆいばかりの光の道を描いていた。周囲に漂っている雲は綿菓子のように膨らんで淡い桃色の諧調を描いている。初春の北陸にありがちな不安定な空模様だった。山を下りてきた冷気と海から吹き上がる暖気がぶつかり渦を巻いている。  光と影の織り成す寸劇に信之は目を細め、思わず手にしていたカメラを構えてみた。ファインダーの中ですべてがレンズの向こうに遠ざかり、ずっと先の海岸線にバス停の看板とベンチが影絵となって浮かんでいる。脇には乗客らしき人影がぽつ

          見えないものを見えるように

          闇もなほ

           金柑の焼酎煮を作る。  レシピは簡単だ。金柑と焼酎、砂糖にハチミツ。金柑はきれいに洗ってヘタを取り、切り込みを入れる。種が気になる場合は楊枝か竹串で取り除く。鍋に水をはって金柑を茹で、沸騰後三分ほどで一度、ざるにあげる。鍋に金柑が浸るくらいの焼酎を入れ、半分の重量の砂糖と同じくハチミツを入れて弱火で二十分ほど煮こむ。できたら煮沸またはアルコール消毒した瓶にそのまま入れ、冷めたら冷蔵庫で保管する。  そのままつまんでもおいしいしケーキやアイスクリームに添えれば贅沢な雰囲気にな

          自然は芸術を模倣する

           春、庭に咲きほこっていたタンポポがあっという間に綿帽子になり、無数の白い輪に埋め尽くされたことがありました。このときふと思い浮かべたのは、イコンなどで見かける光輪(こうりん)。キリスト教の絵画で聖人を識別するために描かれる輪です。  いささか不謹慎ですが、たんぽぽたちに聖人の頭を、重ね合わせてみるとなんとなくほほえましい。  聖なるものの背後に光が見えるのは西洋だけではありません。仏様にも後光がさし、仏像に光背という装飾が施されることがあります。現代では、あの芸能人、「オ

          自然は芸術を模倣する