ゆずらない練習
わたしは小心者なので過剰に人にゆずってしまいます。
細い道で正面から来るひと、車。
エスカレータに乗ろうと合流する列。
レジの列に同時に入ってきた人。
道いっぱいに広がって歩く中高生。
ひとり分だけ空いている電車のイス。
乗り込んだエレベータが閉まりかけのとき、
乗りたいであろう人を見かけるとずっと「開」を押して待ちます。
このときその人は走るハメになります。
列をゆずろうとして相手も私と似たタイプだったりすると
「どうぞどうぞ」のやりあいが始まります。
謙虚で美しいといえばそうなのかもしれません。
しかしどうにもやり過ぎな感じも否めないのです。
ゆずってもらったら「ありがとう」とスッと入ったほうがスマートかつスムーズではないでしょうか。
自分がゆずるタイプだということは世間の人は私ほど人にゆずっていないということです。
なんてイヤなやつらなんでしょう、という意味ではありません。
私が過剰なのですきっと。
ぶつかりさえしなければトラブルにはなりません。
なのに人とすれ違うときはむやみに緊張してしまう。
舌打ちされるんじゃないかとか。
でも実際にはそんなことないのです。
やっぱり私が過剰なのですきっと。
だから私はお腹に力を入れて自分の進路を確保したり
タッチの差でも自分が先だと思ったらそのまま列に入ったり
道を歩きながらそういうことを練習するのです。
ゆずられるぐらいのコワモテになりたい。