概念がわかりにくい全身性皮膚アレルギー

概念がわかりにくい全身性皮膚アレルギー


1. 接触皮膚炎症候群(Contact Dermatitis Syndrome, CDS)

接触感作が成立した後、同一の抗原が経皮的に接触し、接触部位に限定されず、全身に強いそう痒を伴う皮疹が出現する場合を接触皮膚炎症候群と呼ぶ。

ポイントは経皮的な接触が原因であることであり、経口負荷による症例は本症候群には含まれない

典型例として、感作された個体に同一の感作物質を貼付テストした際、全身に皮疹がflare-upするケースが挙げられる。これは、個体の感作レベルが高い場合に起こると考えられる。また、一部の研究者は、接触部位から抗原が経皮的に吸収され、血行性に散布されることで発症すると推測している。しかし、貼付テストでは誰しも微量の抗原が経皮吸収されているはずであり、この機序だけでは本症候群の説明としては不十分である。

また、感作された個体が知らずに繰り返し接触し、局所の接触皮膚炎を何度も発症した後に全身に皮疹が拡大するケース接触皮膚炎症候群に分類される。この場合、上記の貼付テストによるflare-upとは病態が異なる可能性があり、感作レベルがもともと低い個体で起こるとも考えられる。

【典型例】

クロムなめし革の靴を毎日履いていた患者が、クロムに感作されながらも、気にせずに履き続けた結果、足部以外にも全身にそう痒性皮疹が出現したという症例が、過去にドイツで報告されている。このような慢性的な発症パターンもよく知られている。しかし、この症例では経口的なクロム摂取が完全に否定できていなかった可能性があり、全身性接触皮膚炎との区別が議論されている。特に金属アレルギーに関しては両者を厳密に区別するのは難しい


2. 全身性接触皮膚炎(Systemic Contact Dermatitis, SCD)

接触感作が成立した後、同一抗原が経口・吸入・注射などの 非経皮的ルート で体内に侵入し、全身性の皮膚炎を生じる病態全身性接触皮膚炎と呼ぶ。

【典型例】
局所麻酔薬を含む外用剤で接触皮膚炎を発症した患者が、局所麻酔薬入りの坐薬を使用した際に全身性皮疹を発症したケース。この場合、全身性接触皮膚炎と診断される。

しかし、この疾患概念には異論もあり、**「単なる薬疹ではないか?」**と指摘する専門家もいる。

また、前述と重複した議論となるが、感作された個体が知らずに繰り返し接触し、接触皮膚炎を何度も発症した後に全身に拡大するケース全身性接触皮膚炎と診断されることがある。この病態は、厳密には接触皮膚炎症候群の慢性型と捉えることもできるが、全身型金属アレルギーとの関係で混同されることがあり、実際上、両者の明確な区別は難しい


3. 全身型金属アレルギー(Systemic Metal Allergy)

金属アレルギーを有する個体が、その金属を経口摂取した際に、全身性のそう痒性皮疹が出現・増悪する病態を指す。

全身型金属アレルギーと全身性接触皮膚炎との違い

  • 接触皮膚炎の先行は必須ではない。(→ つまり、皮膚に接触したことがなくても、経口感作された可能性がある)

  • 貼付テストが陰性の症例も存在する。(→ したがって、「全身性金属接触皮膚炎」とは言えない)

  • 接触感作が先か、経口感作が先かは問わない。

特にニッケル・コバルト・クロムなどの金属が関与することが多いが、食事中の微量金属摂取や歯科金属による影響など、発症機序の詳細は依然として議論されている。


まとめ

接触皮膚炎症候群(CDS)は経皮感作後の全身性flare-upであり、経口負荷は含まれない。
全身性接触皮膚炎(SCD)は非経皮的ルート(経口・吸入・注射)で発症し、薬疹との鑑別が難しいことがある。
全身型金属アレルギーは、接触歴がなくても経口負荷で発症することがあり、接触皮膚炎とは異なる機序が関与する。



 


いいなと思ったら応援しよう!