人材の偏在に憂慮
最近のアメリカでは、MITやハーバードといった理系の優秀な人材が卒業後ウォール街で働くケースが増えているそうです。理由は単純で、「儲かる」から。年間何億円も稼ぐことが可能だとか。理系で開発者として成功すれば同じくらい稼げる可能性はあるものの、普通はその10分の1程度にとどまるようです。
一方、日本でも人材の動きが見られます(アメリカとは状況が異なり、ここでの話は大学入学時点でのことになますが)。具体的には、大学入学時点で医学部志望者が増加が持続していることです。東大理一に進む層が地方の国立医学部へ流れ、東大理三や医科歯科大(東京科学大学に名称変更)、千葉大学医学部といった難関校の競争がますます激化しています(関東圏のはなしですみません、慶応大医も超難関です)。さらに、これまで東大文一を目指していたような数学が得意な超優秀な文系人材まで医学部を志望する傾向があります。
医学部、つまり将来医師になる人々が集まる学部がこれだけ難化してしまうのは、社会的な偏在を引き起こしていると感じます。理系の技術者や研究者が減少することは、日本にとって決して良い状況ではありません。少子化も進んでいる現在、この流れはさらに深刻な影響を及ぼすのではないでしょうか。ノーベル物理学賞や化学賞を受賞するような人材も、将来的にはかなり減ってしまう気がします。
もっとも、こうした予想は今の社会がこのまま続く前提での話です。もし何か大きな社会的な革命が起これば、常識が一変し、こうした心配が杞憂に終わるかもしれません。むしろそうあってほしいと願っています。