夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】6
この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。
三時間の乗車時間を経て、ふたりはごもく旅館のある駅に到着した。
さすがに三時間の電車移動となると街並みは姿を変えていく。
本当に旅館に来たのだなと思わせてくれる風景が広がる。
座りっぱなしでもちろん、ふたりのお尻は筋肉痛に襲われ、このときばかりは京子の意識は自身のお尻の鈍い痛みに囚われた。
下車し終えた啓太と京子は、鈍痛を抱えながらボストンバッグを引き、マップを手にごもく旅館へと足を運ばせた。
草木が道路脇を生い茂る。
次第にふたりの筋肉痛がほぐれていく。
京子はまた開放感に溢れ、大声を張り上げて今回の旅行を心から喜んだ。
『これ、京子。よさないか!年甲斐もなくみっともないぞ』
注意をされ少し怪訝にもなったが、それもそうねとあっさりと頷いて本来のおしとやかな京子に戻った。
マップを広げる。
どの道を進めばいいのか確認をする。
しばらく眺めるものの一向に把握できない。
啓太は電話で旅館に聞いた方のが早いと判断した。
予約済みである連絡先番号をプッシュして携帯電話を耳にあてた。
しばらくして『もしもし』という声が聞こえた。
『今日から二日間、宿泊させて頂く高木と申します』
『ようこそ、お越しくださいました。この度は有り難う御座います。もうこちらにはご到着でしょうか?』
『はい、もう随分と近くに来ているとは思いますが、方向が分からなくなりまして御電話させて頂きました』
啓太は話し口調から旅館のご主人らしき人物ではないかと想像した。
『今はどのあたりでしょうか?私は当旅館の二代目館主の五目統吉です』
やはりそうかと頷いて問いかけに答えた。
『右側に海辺が見え、左手にはマクドナルドがあります』
統吉はそれでしたらと声を高らかにあげ、即座に答えた。
『マクドナルドの駐車場の脇に当旅館の看板が大きく掲げてあるかと思います。そこに案内させて頂いてるように中央の道を、ややきついですが登りきって頂きます。そうしますと大理石で固められた階段があります。そこをくだれば正面玄関で御座います。この時間でしたら派手な和服に身を包んだ美しい清潔感溢れる女性が花壇に水を撒いております』
『分かりました。さっそくお伺いさせて頂きます。で、その女性に挨拶をさせてもらえればいいのですね』
『はい、有り難う御座います。本当に申し訳ありません』
啓太は随分と腰の低い館主だなと、かえって自身まで物腰が低くなってしまった。
『いえ、ではそうさせて頂きます』
『ちなまにその美しい女性は私の妻でして女将をしております。小説が好きでして先生の作品をよく読んでおります』
啓太は京子の顔を見て思わず、笑ってしまった。
『どうかなさいましたか?』
『いえ、いい旅館に来たものだなと嬉しくなりました』
『有り難う御座います』