夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】12
この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。
一方、出場者メンバーも何を質問されるかまったく分かってはいなかったが、誰もが目立ちたがり屋のため、この日この時をまだか今かと楽しみに待ち構えていた。
彼らもまたすでに心の準備は万全だった。
次第に控え室前の廊下の往来が慌ただしくなる。
一同が特設スタジオへと向かう。
インタビューを初めてする茂太は緊張感を解すために掌に人という文字を何度か書いて飲み込んだ。
まゆが耳元で『大丈夫よ、茂太くんなら』と囁く。
柴田が茂太の肩をポンと叩き、緊張感を和らげる。
『本当にそうだ。お前なら大丈夫だから自信をもて』
追うようににっこり笑いながら松木も助言した。
『ノープロブレム』
少しずつ緊張感が緩和してゆく。
『ほんと、大丈夫よ。私も居るじゃない』
たっくんがウィンクをしながら呟く姿はおぞましく、お陰で一気に緊張感は解れたのだった。
楽屋を後にしたメンバーは、特設スタジオへ順次、入っていく。
出場者のメンバーが全員揃った頃、弘樹がマイクを手にする茂太を見つけた。
久しぶりの二人の対面に周囲が活気と感動と異様なムードに包まれる。
沸き上がる歓声と沈黙の交差。
異常な雰囲気をよそに二人の様子は周囲に安堵を与えた。
ライブをしのぐもの、それは作られていないもの、絆や出会い、夢への達成。
一同はそれらを感じた。
この感覚をライブに活かそう。
すべては感動からだ。
心だ。
一体感がスタジオを包む。
そんなとき、弘樹が茂太の隣に姿を顕にしたオカマの霊に気づいた。
『たっ、たっくん!!!!!!!!!!!!!!!!』
弘樹は歓喜して我を忘れて跳び跳ねた。
この喜びを分かる者は茂太と柴田の二人だけで、他のメンバーにはオカマの霊は見えないことから、弘樹の様子を見て安易にコンビを復活すればいいじゃないかと眺めているだけだった。
『まもなく本番でぇ~す』
担当の声でその場が引き締まる。
運命のゴングへの扉は開かれた。
その声は反響音となって室内を行き来し、いつまでも響き渡った。
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