夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】8

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

啓太が眠りに就いて夢の第三幕あたりを味わっている頃、温泉では大ハプニングが巻き起こっていた。


京子は大胆にも混浴にはいった。
タオルで身を隠し、温まっていたとき、背後からひとりの男が声を掛けてきた。


『お隣に浸かって温まっても宜しいでしょうか?』
『はぁ、別に構いませんが・・・』
『有り難う御座います』

京子は思わず見とれた。
そこには長身でイケメン、何故か温泉にも関わらず、黒一色の海パンを履き、ワンポイントマークがプリントしてあった。
そのマークは葉巻と大きなチャッカマンだった。

『私はサマンサ・柴田と申します。夢を叶えるサポートを喜んでする男です』
そう言うやいきなり、ジャンプして湯のなかに飛び込んだ。


『失礼!私は学生時代、競泳でインターハイに出場したことがありまして、惜しくも優勝を逃したもののいつも三着か二着でした。だから夢を叶えたくても叶えられない人の気持ちがとても理解できます』

サマンサ・柴田は京子の隣で温泉気分を堪能していた。


『あなたは時折、寂しげな表情をなさる』
『あら、どうしてそう思われるのかしら?』
『なにか、迷いをお抱えのようだ。聞きましょう』


京子は一瞬、この人おかしいのかな?カッコつけかな?と思ったが、知性も確かに見え隠れし、しかもイケメンだったので話してみることにした。

『実は私の夫の職業ですが、プロの作家です』


柴田は思わず『ねぇねぇ、名前おしえて!』と欲しい玩具を欲しがる子供のように連発した。


京子はクスッと笑って『高木啓太ですよ』と即答した。
柴田は困った。非常に困り果てた。

高木啓太の作品はデビュー作しか読んでなかった。


『実は私、小説を趣味で書いておりまして、出版は五冊の経験をしてます。いずれも一冊につき、費用が200万ほどかかりました』
『五冊もお出しになられているなんて凄いですね。主人の小説をお読みになったことは御座いまして』

京子の突っ込みに一瞬、戸惑った柴田ではあったが、読んだのは確かだったのでタイトルを口にした。

【この世界の片隅で】


京子は嬉しくなった。
そして柴田と和気藹々としたムードのなか、小説をメインに語り始めた。


京子は小説を出してみたいと最近は強く思い描いていた。
その心境まで柴田に話し始めた。

『主人の仕事を傍で見ていて小説を書き上げることの難しさは理解しついるつもり。でも私、辛いことも悔しいことも沢山、経験してきたからその体験を一冊の本にして纏めてみたいの』


語る京子の瞳は寂しそうだ。
そんな京子に柴田はひとつ質問をしてみた。
『旦那さんから一度は出版の話しはあったのですか?また今の心境を話したことはありますか?』

首を横に振る。
それを確認した後、柴田は溜め息混じりに話し始めた。

『なんなら私が出版のお手伝いをしましょう』
『ホントですか?でも貴方はプロじゃないわ。それに同じなら主人に話してみるわ』


確かに出版業界で充分に信頼を示している啓太に頼むことのが、出版の現実には理想的だ。
柴田はそれでも話しを進めた。

『だんな様には私からも言って差し上げますよ』


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