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【2025年トルコリラ見通し】地政学的要素から読み解く中長期ファンダメンタルズ【FX】
当記事は為替市場における「トルコリラ単体」の今後の見通しについて、ファンダメンタルズ分析した内容になります。
結論としてはトルコリラは「買い」となります。理由は下記のとおりです。
進行中の「ウクライナ戦争」と「中東情勢の不安定化」のなか、トルコの地政学的優位性が際立ってきており、それが近い将来のトルコ経済を大きく底上げする可能性がある。
現在行われている戦争や紛争が終わったあとを見据えた場合、西欧諸国はじめロシア、中国などの大国はトルコを無視できない状況になっている。
上記のとおり、地政学的要因から現在のトルコにはかなり強い追い風が吹いています。トルコが位置する場所は、欧州とアジアの境界であり、また戦争を繰り広げているロシアとウクライナのすぐ南にあることが、トルコ自身の優位性を高めています。
現在のトルコの置かれた状況を踏まえ、ファンダメンタルズ分析をしていくと、2025年にはさらにその存在感は高まっていくものと思われます。
※当記事は、地政学についてのファンダメンタルズ分析になります。短期ではなく、あくまでも中長期における為替の方向感を探るための材料であり、また必ずこの通りになるものではありません。以上をご理解の上、お読みいただければと思います。
2025年、地政学的優位性が際立つトルコ
この記事を書き始めた2024年末現在、トルコの地政学的優位性が非常に高まっていると感じています。
「地政学なんて為替にあまり関係ないのでは?」
と思われるかもしれませんが、色々調べていくうちに、大きな変化が水面下で起きている可能性があると考えました。
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上記の「トルコリラ円」月足チャートをみれば一目瞭然ですが、2008年頃に1トルコリラ100円だったものが、ずっと売られ続けた結果、現在では1トルコリラ4.5円程度となっています。
しかし、現在トルコで起きている地政学的変化は、トルコリラの長きに亘る下降トレンドの終焉と、大きな上昇トレンドへの転換につながり得る可能性を秘めいていると思っています。
その理由について具体的に見ていきましょう。
戦争当事国の中心に位置するトルコ
現在、世界で起きている大規模な戦争・紛争といえば、まずはウクライナ戦争が挙げられます。そして緊張感が高まったままの中東情勢(イスラエル、パレスチナ、レバノン、イラン)があり、またアサド政権崩壊後のシリアがあります。
ニュースやネットでこれらの情報に接する方も多いかと思いますが、ここで戦争・紛争当事国とトルコの位置関係みておきたいと思います。
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上記地図の中心にトルコがあります。(赤丸)そこから北に目を移すと、黒海を挟んでウクライナがあり、東に隣接しているのがロシア(黄丸)になります。南に目を向けると、アサド政権が崩壊したばかりのシリアが、トルコと長い国境を接しています。そして紛争が泥沼となっている中東のレバノン、イスラエルがあり、東側にはイラクとイランが控えています。
つまり、現在起こっている争いのすべての当事国の中心に位置するのがトルコというわけです。
これだけ周辺国が流動化・不安定化するなかで、トルコが位置する場所は非常に優位性を際立たせています。過去に流れたニュースを丹念に拾っていくと、戦争当事国の敵対する国々に対し、トルコはどちらの側にもつくことなく、非常にしたたかに、外交や経済関係構築をしていることが分かってきました。
ウクライナ戦争/ピボット外交と戦争ビジネス推進
ウクライナ戦争がはじまってもうすぐ3年になろうとしています。そんな中、ロシア、ウクライナ両国に対してトルコは、ピボット(等距離)外交を行っています。どちらへも肩入れしすぎず、ほどよい距離を保ちつつ影響力を維持する動きといえます。
また戦争初期からウクライナに輸出しているドローン型兵器(バイラクタル)の性能の高さが評価される(下記ロイター記事参照)など、戦争ビジネスを拡大させています。
「戦争は兵器ビジネスの見本市」などと言われますが、これを地で行くようにトルコ製兵器の見本市となっています。
なお、ウクライナへのドローン輸出は供与ではありません。つまりウクライナへの支援ではなく、あくまでも民間の行う「ビジネス」であるという建付けで実施しています。そのためウクライナ、ロシアどちらに対しても窓口を開き対話できる状況を維持しています。
このような、どちらにも与しない微妙なポジション取りがこの後も出てきますが、まさにトルコ外交の真骨頂といえます。
イスラエル批判と中東でのプレゼンス向上
トルコのエルドアン大統領は、イスラエルのパレスチナ侵攻に異を唱え、中東におけるプレゼンスを上げています。
この地域でイスラエルに敵対する強国はイランですが、イランほど敵対関係をむき出しにはしていません。イスラム教国でありながら、より世俗的に振る舞い、中東での影響力を維持しながら冷静に対応をしている印象です。ある意味、イスラエルとイランの仲介役にもなり得る動きをしていると言えるでしょう。
アサド政権崩壊後のシリア/復興における影響力行使
2024年12月初旬、独裁政権として悪名高いアサド政権が反体制派に陥落させられました。この反体制派を支援してきたプレイヤーの1つがトルコです。
ロシアとの関係で反体制派への支援を打ち切るなど紆余曲折はありましたが、結果としてアサド政権崩壊と、反体制派勢力による新しいシリア国家の樹立に繋がりつつあります。この状況は、反体制派に影響力を持つトルコにとって、非常に大きな果実になる可能性を秘めています。
下記は、アサド政権崩壊後にBloombergの記事です。シリア復興において、トルコのインフラ企業と関連ビジネスが大きな報酬を得る可能性について報じています。
トルコを無視できなくなった欧米諸国
トルコを取り巻く環境と、その地政学的優位性についてみてきました。
激化する戦争と紛争の真っ只中、この地域で唯一どちらの側にも肩入れせず、この状況から自国利益を巧妙に追求する独自路線を歩んでいるのがトルコといえます。
イスラム教徒が大半を占めるイスラム国家でありながら、欧州のNATOにも加盟している特殊性からも、トルコの対外的なバランス感覚としたたかさが見え隠れします。
そして戦争や紛争が続いている現在、欧州や米国、またロシアや中国といった大国が何を考えているかといえば「戦後処理と復興における影響力」です。これは「権益」と言い換えても良いでしょう。
戦後復興とは、すなわち巨大なインフラビジネスであり、道路や交通網をはじめ、住宅や病院、学校の建設まで人々の生活を再建するための需要は計り知れないものがあります。
そのパイ(権益)をどれくらい取れるか大国は計算するわけですが、特にシリアにおけるトルコの存在は大きなものがあります。
上記Bloombergでは、トランプ次期大統領がトルコを名指しでシリア復興のキープレイヤーであると言及しました。
このニュース1つ読んでみても、トルコの存在感がギアを一段階上げてきているのが実感できると思います。
まとめ
現在起こっている戦争・紛争地域の中心に位置し、利害関係国すべてと国交、外交チャンネルを維持しているトルコは、この地域の安定のためになくてはならない存在になりつつあります。
戦争や紛争後の世界がどうなるのかは誰にも分かりませんが、現在のトルコは明らかに大きなチャンスを得ていると考えられます。長く染み付いた「高インフレからくる通貨安」のイメージで語られるトルコも、いずれ昔の話になるかもしれません。
以上、現在のトルコが置かれた地政学的要因を踏まえ、トルコリラは長期的にみて「買い」と判断しました。
今回は地政学的要素のみを判断材料にしていますが、これだけをみてもトルコリラを買いたくなるのは私だけではないと思っています。
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最後までお読みいただきありがとうございました。