ファッション性と機能性のバランス。特別な魅力を感じるデッコーロウォモのパイロットシャツ
STORY Vol.04 – 島崎徹 氏(振付家/神戸女学院大学音楽学部舞踊専攻教授)
昔はピタッとしたタイツみたいなものばかりでしたが、今は様々な種類のダンスウェアがあります。ただ、どうしてもファッション性と機能性のどちらかに偏っているものばかりで、あまり好ましいものがない。ダンス界で今求められているのは、「ファッション性と機能性を兼ね備えたウェア」なのです。例えば、レッスンでも使用できて、あまり汗をかかなかったからそのままの格好で食事にもいけるような、ON&OFFで対応可能なウェアをずっと探していました。
フォルムを美しく保つことと、フィット感や着心地が良いこと。これらは相反することなのに、decollouomo(デッコーロウォモ)のシャツはそのバランスがとても良くて格好良いですね。僕は職業柄ガンガン動くから、エレガンスなフォルムとソフトな着心地、そのギリギリのバランスを追求し続けてほしいです。いま世の中にたくさん洋服がある中で、decollouomo(デッコーロウォモ)にちゃんとファンがついているのは、こういう特別な魅力があるからですね。このスタイルは神戸にもきっと合っている。個性的な魅力ある方々が多いので肌に合うと思いますよ。
ネイビーのパイロットシャツとスカイブルーのドレスシャツを普段着ていますが、休日も同じdecollouomo(デッコーロウォモ)で遊び心あるカラーを着たいです。品格があるオリーブ・ダークブラウン・ディープブラックなども良いし、イタリア・スペイン系を彷彿させるポップなカラーセクションがあっても嬉しいですね。
小さい頃からとにかく踊ることが好きだった。
姉が3歳からバレエをやっていたので、踊りは生まれた頃から身近な存在でした。バレエの先生から「あなたもやりなさい」ってうるさく言われていたのですが、その時好きだった踊りとバレエというのが結びつかなかったのでまったく興味がなかった。当時はフォーリーブスやフィンガーファイブが流行っていた時代で、そういう踊りを学校の朝礼台の上で踊ったり歌ったりしてましたね。バレエをやらない代わりに、僕は馬に乗ることが好きで馬術をやっていました。そこでは先生に「お前は日本にいたら叩かれるタイプだから外国に行け」って言われていた。馬術っていうのはドイツの国技だから勉強に行くならドイツなんですよ。でも、なんかドイツはいやだなあって子供ながらに思っていた。それで、カナダはどうだろうと。自然もあるから馬くらいいるだろうと思って18歳の時に観光で行ってみたんです。実際に行ってみると、こんな素晴らしい世界があるんだと感動してね。ここに住もう!ってすぐに決めて日本を出ました。
でもね、、、馬術をやらないで、何故かバレエ始めちゃったんですよ。高校の文化際の時、無謀にも自分でミュージカルみたいなものをやったことがあって。それがまたみんなにうけっちゃってね。こういうのもいいのかなあって、どこかで感じてたんでしょうね。しかし、舞踊の世界は上に行けば行くほど完全エリートの世界。みんな小さい時からやっている人たちで、僕みたいに18歳から始める人なんて皆無の世界。だけど、それが運良くうまくいっちゃったんですよ。とくに踊ることよりも振付けをやり始めてから、いろいろな人たちとの出会いもあって、とても物事がうまくいきました。僕は日本のバレエ協会など何処にも属していないから時には冷たい目にもあったりしましたが、海外が僕を認めてくれたんです。
神戸女学院大学の舞踊専攻教授へ
ある日、突然問い合わせがあった。神戸女学院大学が舞踊専攻を設立するために教員を探していて、ジュニア・コンクールの世界最高峰といわれるスイスのローザンヌ国際バレエコンクール事務局へ問い合わせたようです。審査員をやっていて、ヨーロッパで作品も作っていて、世界的に求められていることをわかっている日本人がいる。Toru Shimazaki に会ってみろと勧められたらしい。その時、宝塚大劇場で仕事をしていてタイミング良く神戸に滞在していたので、すぐに担当者が会いにきてくれたのです。
当時の僕は、東京をベースに忙しくやっていたのですが、仕事がつまらなく感じていた時期だった。忙しい時って売れているわけだから、毎日のようにたくさんの作品を産み出さなきゃいけない。1つの作品を作りこむことも大変なのに、そんな機械のように大量に作れるわけないでしょ?そうなった時、アレンジしたりして同じようなことをやることが多くなってくる。それが僕は自分で許せなかった。作品1つ1つまったく違うオリジナルのものじゃないと嫌だった。そんな状況の中でずっとやり続けていたら、きっと舞踊を嫌いになっちゃうなって思った。好きなものを嫌いになる必要ってあるのか?って追い詰められていた時期だったんです。ある日、クタクタに疲れて電車に乗っていたら「田舎に住みませんか?」っていう不動産広告に目が止まった。
これだ!全て投げ捨てて森の中に住もうって思いましたね。全てをシンプルにしたくて、那須高原に移り住んで自給自足の生活をしながらゆっくりやり直そうかと考えていたんです。そういう時だったから、このオファーを真面目に考えて引き受けさせていただきました。
僕がやっているのはコンテンポラリーダンスというジャンルで、大学では毎日ダンスの授業をやって、国内外でパフォーマンスもしています。振付けの仕事は大学が休みの期間に入れていて、オファーをいただいた海外の舞踊団のために作品をつくっています。昨年の夏はシンガポールの舞踊団のために作品をつくって、振り付けを教えに行っていました。今はものすごく面白い。振付けというのは、なんだかんだ言ってインスピレーションだけでは無理なんです。技術がないとひらめきがあっても形にできない。だから、それが蓄積されている喜びっていうものを感じています。自分が思い描くようにできる。そうすると楽しいんです。今までは仕事だからミスはできない。今は大学があるから色々なことにチャレンジできる。そして、僕の感性やテクニックをわかってくれている生徒たちがいるから、覚えるのも早し、伝えたらパッとできる。そういう環境が整っているから、今はずっとこのままでいいと思ってます。
あとは全く別のことを考えることもありますね。料理が好きだから飲食店やりたいとかね。僕にとっては全てクリエーションだから。そういうことが具現化できるか、叶うかどうか、うまくいくかどうか。そんなの全然関係ない。夢は叶えるものじゃなくて見るものだからさ。何歳であろうとも夢の途中で死ぬことができれば、それでいいんです。常にこうしたいという気持ちを持ち続けながら生きていくことが良いんです。うちの学生でいうと、舞踊で食べていきたいと卒業後に海外へいく。日本では踊って給料をもらえるところなんてないからね。現時点、コンテンポラリーダンスの最高峰はオランダのネザーランドダンスシアター。あと、アメリカのハーバードストリート。毎年世界中から沢山の応募がある中で500〜600人に1人しか入れないという超難関なのですが、昨年も教え子達が合格しています。これで生きていこうという夢と覚悟を持っている人は、その強い気持ちで道を切り開いて頑張っていますね。
喜びだけで充分に生きていけるクリエーションを大切に
以前は、動きを考えることがクリエーションだと思っていたけれど、この何年かで変わってきました。こういう世界を作りたいという世界観を考えることがクリエーションです。クリエーションは頭の中だけで考えられるものじゃない。スタジオで音楽を聴いたり踊ったり、色々なことをやって手探りで作り出していく。その時の一番大事なことは精神状態ですね。いかにリラックスして取り組めるか。そこが硬直していたらまったく出来ない。ひらめきが出てきたとしても面白くない。だから、精神状態を常に良い状態に保つために、自分が嫌なこと、ネガティブなことは一切やらなくなりました。ファッションもそうだと思いますが、こういう仕事は楽しいと思えなきゃできないですよね。日本だと各地の伝統技術を活かしたものづくりがどんどん増えてきていますが、その日本の追求する技術力・ものづくりは本当に素晴らしいです。そこが世界に評価されてる。海外の人には絶対真似できない圧倒的な感覚ですから。僕が作品をつくる時もそういう姿勢・考え方でやっています。絶対に手を抜かない。3秒4秒の中の動きまで細かく考えて、海外の舞踊団が嫌になるほど細かく作りこんでます。そういうことが好きなんですよね。
あと、クリエイターだったら、自分がクリエイトする世界での経験や知識が増えていく喜びのみで充分に生きていける。って思えないといけない。金とか名誉とか言いはじめると難しくなってくるから。それは、すごくエネルギーが削がれてしまうこと。例えば、山奥で陶器をつくっている人がいますよね。そこには自分一人しかいないんだけれど、つくったものをじっと見て何処か違っていたらバンっと叩き割ったり、おーよくできた!ってやってる。より良いものを創りたいと言う気持ちだけで生きているんだっていう感じ。この領域までいけたらクリエーションがものすごくパワーを持ち始めると思うんです。自分一人だけの世界。他の人が何か言うんじゃなくて、自分が見て良いのか悪いのか?課題に挙げたことが出来ているのか出来ていないのか?出来ていたら喜ぶ。その喜びだけで生きていけるものをやる。僕はそれが大事だと思う。30代の頃はそういうことが全然わからなかった。いろいろなことを経験して失敗もしてきてやっとわかりました。しっかり自我をもって、ちゃんとしたものを追求していたら、いつか絶対みんな気づくものです。そういう喜びに満ちたクリエーションプロセスを大切にしてほしいと思います。