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小さい頃②

小さい頃、本が好きだった。

幼稚園で一番覚えている部屋は図書室だ。
保育室とは別棟にあった。
色とりどりのタイルが施された円柱状の塔。螺旋階段を登った先に、大量の絵本が内壁を埋め尽くしていた。

小学校に上がると、自転車で図書館に通い詰めた。

父が買い揃えてくれた岩波世界児童文学集は、青と赤の布張りの装丁にうっとりしながら毎日手に取って読み耽った。

一番好きだったのは、「やかまし村の子どもたち」

スウェーデンの片田舎の何気ない日常生活が、子どもの目線で瑞々しく描かれている。

私の子ども時代は、1980年代後半から90年代前半。

伸び伸びと遊び回れる豊かな自然も、好きな事に没頭出来る充分な時間もなかったけれど

この本の中に入れば、朝から晩まで牧場を駆け回って野苺を摘み、林の中に秘密基地を作り、干し草にシーツを敷いて眠り、がらんどうの木に登ってレモネードを飲む事が出来た。

特別な事は何も起こらない。

その世界はただ平和で、愉快で、爽やかで、楽しくて、幸福だった。

#子ども時代
#児童書
#やかまし村の子どもたち
#アストリッド・リンドグレーン

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