人の顔を覚えられないのはASDのせい?相貌失認の4つの対策
ASD当事者のなかには、人の顔がなかなか覚えられない人がいます。たとえば、こんな風に。
・数回会っている人に対して、「初めまして」と挨拶する。
・誰かの顔を見ても、別の人の名前で呼びかけてしまう。
それこそ顔から火が出るような失敗、あなたにも身に覚えがないでしょうか?
人の顔や表情を認識しにくい状態は、「相貌失認」と呼ばれていて、脳の器質によるものです。相貌失認自体は、100人に2人の割合でいると言われています。
なぜASD当事者に相貌失認の傾向がみられるのか、どのような改善方法があるのか、この文章内で触れていきますね。
なぜASDがあると人の顔を覚えにくいのか
ASDの特性を持つ人は、生まれつき顔や表情の認知が弱い傾向にあります。定型発達者は顔に特別な思い入れがあるのに対して、ASDの人はそこまで特別に感じていないのでしょう(個人差はあると思います)
ASDの人は生まれつき顔の認知が弱い?
精神科医の岡田尊司さんの著書『アスペルガー症候群』には、以下の文章があります。
私はこの文章を読んだとき、大学の発達心理学の講義において、赤ちゃんの顔に対する認知力について学んだことを思い出しました。
赤ちゃんはわりと早い時期から、人の顔を認知できるようになります。大体、生後2〜4か月くらいで、「人の顔」と「人の顔でないもの」の違いが分かるようになります。赤ちゃんがお母さんの顔を認識できるようになるのは、生後4〜6か月くらいです。
「へー、赤ちゃんって、そんなに早くに人の顔がわかるんだ!」
私は大学教授からこの話を聞いたとき、目から鱗が落ちました!人の顔、特に世話をしてくれる人の顔を認知するのは、これから生きていく上で必要なこと。だから真っ先に認識できるようになるのでしょう。
でも、ちょっとここで立ち止まって考えてみてください。ASDの子どもは、生後4〜6か月どころか3~4歳になっても、母親の顔がわかりにくいのだとしたら……成長する上でかなりハンディキャップがありますよね。
ASDの人は顔を特別なものとみなしていない?
定型発達者が顔に対する記憶力が優れているのに対して、ASDの人は風景に対する記憶力が優れているという、実験結果も出ています。
先ほど紹介した著書『アスペルガー症候群』を再び引用しますね。
相貌失認の4つの対応策
では、相貌失認にはどのような対処方法があるのでしょう?4つの方法を紹介します。
顔以外の特徴を覚える
人を識別するポイントは、なにも顔だけではありません。声や話し方、全身の特徴や動作、持ちものなどにも、個性はあります。
「声が明るくて、いつも笑っている」
「体は大柄で、熊さんみたい。仕草はゆったりめ」
「あの人の眼鏡フレーム、よく見るとピンクだ!」
じっくり観察してみると、その人らしい個性が滲み出ているはずです。その特徴を覚えておきましょう。
人の特徴をメモに書いて覚える
人の特徴を、メモに残しておくこともお勧めです。体の特徴に限らず、出会った日時や場所、会話の内容なども書き添えておくといいでしょう。
ただし、コロっと変化しそうな特徴をメモに残すときは、注意が必要です。いつもワンピースを着ているAさんが、いざ話しかけたい時に限って、ジャージを着ていた!……なんて、とんでもないオチが付くことも有り得ます。メモはあくまで参考程度にして、振り回されない方が無難です。
周りの人にこっそり聴く
職場などで、何度も顔を見ているのに名前が覚えられない人がいたら、すでに顔見知りの人にこっそり聞くのも一手です。「あの人の名前、何でしたっけ……」という風に。
何度も会っている人に「名前を教えてください!」とズバリ聞くよりも、トラブルは防げるはずです。
カミングアウトする
人の顔がなかなか覚えられないことを、あらかじめ周りの人に打ち明けておくこともおすすめです。カミングアウトすることで、周りの人の理解も得られますし、自分の心も軽くなります。
ASDそのものを告白するよりも、「人の顔を覚えるのが苦手なんです…」と吐露する方が、ハードルも飛び越えやすいかもしれませんね。
まとめ
ASD当事者になぜ、人の顔を覚えられない傾向があるのか、どのような対処方法があるのか紹介しました。
顔以外の特徴を覚える
特徴をメモに書いて覚える
周りの人にこっそり聴く
カミングアウトする
2022年の今は、ずっとマスク生活が続いているので、特に顔を覚えづらいですよね……。私も昨年、転職したばかりのころは苦労しました。
もしよかったら、この4つのポイントを参考にしてくださいね。