子猫のはじめての冒険【エッセイ】
DAZNでJリーグの試合を見ていると、彼女から電話がかかってきた。子猫を預かって欲しいとのこと。法事で3日間ほど実家に帰省するそうだ。彼女が5匹飼っている猫のうちの一番小さい子、ちびすけと呼ばれている子を預かって欲しいようだ。
ちびすけは4ヶ月前に生まれた元気いっぱいの、ラグドールとスコティッシュフォールドのミックスだ。家では毎日おもちゃで遊んでいるが、いつまで経っても体力が尽きない。遊び盛りのやんちゃな子だ。
僕はちびすけ。この世界は知らないことばかり。
生まれた時から、家族と花ちゃんの家で暮らしているよ。花ちゃんちには僕も含めて5匹の猫がいるんだ。
花ちゃんが誰かと電話してる、いつもの彼氏って人かな?
「叔母さんが今朝亡くなっちゃって。お葬式で実家に帰省する間、ちびすけを預かってくれない?」
花ちゃんは電話とお化粧を終えると、僕をキャリーバッグに入れてタクシーに飛び乗った。
実は花ちゃんの家から出るのはこれが初めて。何をしてもどこに行っても新しいことばかりでワクワクするよ。少し不慣れなところもあると思うけど、大目に見て欲しいな。
10分くらいかな、車が止まったから、どうやら目的地に着いたみたい。
キャリーバッグから出たら見たことのない世界が広がっていて、僕は驚いて、ミャアミャア鳴いちゃった。
花ちゃんは僕を置いたらすぐにいなくなっちゃった。叔母さんのお葬式?というものに行くらしい。寂しいな。
彼氏のケータ君のおうちには大人の猫が住んでいる。6歳のアメリカンショートヘアのメスだ。
僕の近くに来て匂いを嗅いだかと思うとすぐどこかに行っちゃった。
ケータ君が僕に近づいてきた。優しそうな人だな。部屋の中を案内してくれて、トイレの場所や食事の場所を教えてくれた。でも、僕はまだ緊張していて、隅っこに隠れてしまった。
しばらくすると、さっきの大人の猫が戻ってきた。ミーコっていう名前らしい。ミーコは僕をじっと見つめている。怖いな…でも、少しずつ近づいてきて、鼻を寄せてきた。
「ようこそ、ちびすけ。」ミーコが話しかけてきた。「ここでの生活に慣れるまで時間がかかるかもしれないけど、心配しないで。私がいろいろ教えてあげるわ。」
ミーコの優しい言葉に、少し安心した僕。でも、まだ花ちゃんのことが気になって仕方ない。窓際に行って外を見てみるけど、花ちゃんの姿は見えない。
「花ちゃん、早く帰ってきてね…」
そう思いながら、僕は新しい環境での生活を始めることになった。ケータ君とミーコと一緒に、きっと楽しい3日間になるはず。でも、やっぱり花ちゃんのことが恋しいな。早く会いたいよ。
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