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企画・開発とコンサルティングを行き来したからこそ見える、web3での勝ち筋

「全てのモノをブロックチェーン上でやりとりできる世界をつくる」というミッションを掲げる株式会社Decentier。中学校での原体験からITの道に進み、システムエンジニアやコンサルタント、事業開発などを経て、Decentierを共同創業するに至った市薗が大事にしている生き方の軸と、その先に見据える未来像について語ります。

ーーDecentierの共同創業者の1人である市薗さんは、学生時代からモノづくりに長く関わってきたと聞いていますが、どのようなことを経験されてきたのでしょうか。

自分がIT業界に入る原体験は、中学校時代に父親がパソコンを買ったところから始まったと思います。当時、Windows 3.1がリリースされた直後で、OSがDOSベースからGUIベースに切り替わりつつある時期でした。自分で実際に触ってみて、非常に胸が高鳴ったことを今でも覚えています。中学校でもパソコンを使った授業があり、3.5インチのフロッピーディスクにゲームを入れて学校に持っていき、授業の合間に友達とゲームをプレイするなどして楽しんでいたことは良き思い出です。

丁度その頃、中学校から工業高等専門学校 (高専) に進学した先輩と話す機会があり、「高専に行けば、もっとITやロボットに関われる」という話を聞いて、高専への進学を決めました。機械や電気、情報などを幅広く学び、時には旋盤で油まみれになりながら…といったことを経験させてもらいながら、もっと専門性を高めたいという思いが強まり、高専から大学院に進み、物理学やプラズマ工学などを学びました。大学院では「核融合プラズマ」の基礎研究を行っていましたが、当時、この分野の研究状況で言えば、核融合による実用炉の実現はまだまだ遠い未来の話かなとも感じていました。今は核融合の実用化を目指すスタートアップなども出てきていて、強い敬意と好奇心を持って取り組みを拝見しています。

ーー高専や大学院などで専攻した領域とは少し異なるITの世界に足を踏み入れたきっかけは何だったのでしょうか。

私が就職活動を始めた時期はいわゆる「就職氷河期」とされる時期でした。
軒並み企業が採用規模を縮小させている中、IT業界の採用は活発な印象があり、業界としての伸びしろを強く感じました。当時の自分が航空機を好きだったこともあり、そうした業界に就職できればと考えていたところ、航空管制システムやエアポートシステムに関わる仕事があり、新卒から約5年間、航空業界向けのシステムエンジニアとして働きました。デスクワークだけでなく、空港ターミナルの建設現場でゼネコンと一緒に仕事をしたり、円借款でフィリピンに建てられることになった空港開発プロジェクトで現地へ出張したりと、面白い経験も積ませてもらいました。当時、狂犬病が流行っていた時期で現地に野良犬がうろうろしていたり、街中で発砲事件があったりと、なかなかスリリングな経験もできましたね(笑)。

ーーそこからコンサルティングファームを経て、bitFlyerで暗号資産やブロックチェーン、そしてweb3の領域に関わっていくことになるのですね。

そうですね。2010年にSIerからベイカレント・コンサルティングに転職し、コンサルティングからサービス企画・開発に至るまで、色々と経験させてもらいました。「ブロックチェーン」という言葉を初めて知ったのは、2015年に書店で経済誌を立ち読みしていた時です。その後、クライアントと会話する中で「ブロックチェーン」というキーワードに度々触れる機会があり、そこからクライアントとブロックチェーンに関するディスカッションやPoC、事業企画などもいくつか経験しました。当時、ブロックチェーン技術に関する書籍なども少なく、WebやSNSなどをサーベイして情報収集したり、自分でEthereumを使ってPoC向けの簡易システムを実装してみたりとする中で、「これはもうブロックチェーンを専業としている企業の中に入らないと効率的かつ深く学べない」と考えるようになり、2018年にbitFlyerに転職しました。

Decentierを一緒に創業した小畑や岡嵜とはここで知り合い、暗号資産やブロックチェーンに関する新規事業企画やプロダクト開発、またそのベースとなる組織づくりなど、様々なプロジェクトを一緒に手掛けていくことになります。システムエンジニアやコンサルタントといった立場からは見えなかった経営や組織のリアルを知ることができたのは、今振り返ってみると貴重な学びになりましたし、Decentierを創業する1つの自信にも繋がったかもしれません。

ーーお話を聞いていると、次に本気でやりたい事を見つけたタイミングで、転職という形で環境を変えてきたように思えます。

自分でも振り返ってみて、本当にその通りだなと思いますし、所属した企業それぞれで得難い経験をさせていただいたと感じています。SIerという事業会社で自社事業を成長させる「中の人」の立場でキャリアを始め、次に「外の人」の立場でクライアントの事業成長を支援するコンサルタントを経験し、再度、bitFlyerで「中の人」の立場として自分たちの手で事業やサービスを作り上げることに挑戦してきました。NOT A HOTELでも「中の人」の立場としてNFT事業のProduct Managerを担当させていただきました。現在、Decentierではクライアントに対するコンサルティングサービスと自社プロダクトの企画・開発といった2つの事業展開をしています。これまでのキャリアを俯瞰してみて、「中」と「外」の立場を行き来しながら事業やサービスにフォーカスしてきた経験が、この両軸の事業展開に活きているなと痛感する今日この頃です。

また、これはbitFlyerでも、NOT A HOTELでも感じたことですが、web3の黎明期的なフェーズにおいて、ブロックチェーン・暗号資産・NFTを活用し、どのようにして新たなマーケットを創出するか、プロダクトアウトの発想になりがちな中で、いかにマーケットインのスタンスに立てるか、法規制の整備動向などもどのように織り込んでいくかなどなど、さまざまな論点がある中で、世の中に新しいものを当たり前なものとして浸透させていくための努力や研鑽が求められるフェーズに関われたことは非常に大きな財産です。

現職のDecentierに至るまで、仕事における自分の主要単位は「会社」というよりは「プロジェクト」だったとも思います。事業・サービス・プロダクトを前提として、「中の人」「外の人」それぞれの立場で常にプロジェクトに向き合ってきましたし、ブロックチェーンに出会ってそろそろ10年近くなりますが、社会人後半では「プロジェクト x ブロックチェーン」としてのキャリアを積んできた自分だからこそ、見える景色があること・できることがあることも強みになっていると実感しています。

ーー市薗さんから見て、web3の特徴や魅力を挙げるとすると何だと思いますか。

これは共同創業者の二人にもなかなか納得してもらえていないのですが、「web3」は「大喜利」に近い部分もあるな、いやもはや「大喜利」なのではないかと個人的には感じています(笑)。

どういうことかと言うと、NMB48の渋谷凪咲さんが「大喜利はリアルとフェイクの狭間みたいなんが笑える」と言われていて、それを聞いた時に「web3はリアルとデジタルの狭間みたいなんが笑える」気がするから、この概念はなんか似てるなと思った次第です。あくまでも個人的な感覚ですが、大喜利ではフェイクに寄せすぎた回答をすると嘘っぽくてウケない感があり、web3ではデジタルに寄せすぎると (リアル世界とリンクしていない、手触り感がない、無から有が生み出されているなどで) 現実味や安心感がなくてマスウケしなくなる、みたいなところはあるかなと思ったりしています。

最近、web3界隈では、RWA (Real World Asset:現実資産のトークン化) について耳にすることが多くなりました。BCGのレポートでも「2030年時点で流動性資産のトークン化市場は$16tn (約2,240兆円) のサイズになる」と予測を出しています。これは「既存の金融商品や金融商品以外のものがToken化される形でブロックチェーンに乗る」、言い換えると「リアルのモノとデジタルのトークンがリンクした状態で流通する」市場がこれから大きくなるよと言われているわけですが、このRWAはユーザーに「リアルとデジタルの狭間」にある新しい体験や価値を提供することも可能にするテーマだと捉えています。

例えば、NOT A HOTELの「MEMBERSHIP NFT」はそのことを体現したプロダクトだと思います。他に類を見ない建築物・サービスの宿泊権をNFT化する。ユーザーはリアル世界でその入手を渇望し、宿泊の時を待ち望む、そして宿泊により、これまでに感じたことがないような満足感を得る。一方、デジタル世界では、その権利を誰かと交換する、家族や友人にその権利の一部をプレゼントする、特別なイベントに参加できる権利を保有するなど、権利の保有や移転、流動性といった機能を体験に変換して提供する。リアル世界の体験とデジタル世界の体験をストーリーやコンセプト、コミュニケーションで繋ぎ合わせる。その1つ1つがうまく結びつき、モノシリックな体験になったことで、暗号資産やNFTなどに興味がなかった人も含め、世の中の多くの人の心を打ったのだと自分なりに解釈しています。

web3の特徴や魅力、市場動向、これまでのプロダクトに関する知見・経験なども踏まえて、今後は、Bitcoinのような革新的な発明や究極的なDAOを目指すといったフロントランナーの方々とも協力していきつつも、「そうきたか!」と思ってもらえるようなマス(暗号資産やNFTに明るくない人)にも届くプロダクトを作り出していきたいです。そのためにはユーザーストーリーやプロダクトコンセプトにこだわるのはもちろん、UI/UXやブランディングも徹底的に突き詰めていく必要がありますし、これらを具現化し得るベースがあることがDecentierの強みだと自負しています。

ーー今後、市薗さんがDecentierで成し遂げたいことを教えていただけますか。

前提として、Decentierは大人らしい戦い方をしていきたいと考えています。投資家から出資を募り、全力疾走するスタートアップも魅力的で、そういう選択肢もあると思います。一方で、web3は市場成長の時間軸やビジネスとしての本質に向き合うという意味で、特に長く走れることも重要だと考えています。Decentierのメンバーは過去に荒々しさを含んだスタートアップでの経験やブロックチェーンにそれなりに長い時間向き合ってきた経験があるからこそ、守りに徹しない戦い方をベースとしつつも、時には堅実的な視点で企業経営をする選択をしていきたいと考えています。その答えの1つが、自社プロダクト事業を展開しつつ、自分たちが持つ経験や知見をクライアントの事業やweb3市場の成長に貢献させていただくコンサルティング事業も展開する、という道です。変化と進化が絶えないweb3市場だからこそ、その流れを見極め、戦略的に、堅実に戦っていこうとしています。

その上で目指す未来としてあるのは、やはりマスに届くようなweb3プロダクトを作り出すこと。情報感度が高い一部のギークの方々にだけ広まるものではなく、多くのユーザーがweb3に関連していると意識せずとも手に取りたくなるものを生み出していきたいと考えています。企画は水面下で進んでおり、現在のDecentierを取り巻くメンバーやステークホルダーの方々を鑑みても、世の中にはまだない面白いものが作れそうという手応えを感じていて、世の中をざわざわさせるような1つの答えを出せたら良いなと考えています。

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