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だから私はトクベツ

私には特別な能力がある。

幼い頃から自分は人と違う能力が備わっていると感じてきた。感じているのだから説明は難しい。

この世のものではないものを感じたり、文字や数字に色がついて見えたり、絶対音感があったり。

私が生まれて1年経たずにこの世を去った曽祖母の霊を見ては「おばあちゃんがいる」と指差し、手を振っていたそうだ。2〜3歳頃まで続いたそれを見た祖母は「大きくなってからも霊が見えたらこの子がかわいそうだからもう出てこないで」とお仏壇の前でお願いしたそうだ。

そんなエピソードを聞いたのは確か高校生くらいだっただろうか。私は「つまんない」と思っていた。あの時祖母が仏壇の前でナムナムとしていなかったら、もっと特別な力が備わっていたかもしれない。

[予知(夢)]

震災で私の人生は二分されている。起きる前と後だ。なんとなくやりたいことがわからなくて進学する。大学生のうちに将来が描ければいいやなんて大半の同世代が思っていたに違いない。高校の卒業式の10日後、アレは全てを変えた。

・生きる意味

・自分の存在価値

・後悔と無力さ

18の私に遠慮なく介入してきたよくわからない感情の波をコントロールできず、かき消すように目の前のことをこなした日々。大切な人を亡くした人が私に向けた優しい言葉。

「特別だったんじゃなかったの?私」

いつまで厨二病発言をしているのだ。

もともと地震の多い宮城県に住んでいる私は震災をきっかけに「地鳴り」に敏感になった。揺れが起きる前に地面を伝って響く重低音のようなもので、動物なんかは大きな地震の数日前から感じ取っているものもいるらしい。寝ていても揺れが来る数秒前に地鳴りを感じるようになり目を覚ますことが増えた。同時に、日中強烈な胸騒ぎがしたり、夢で大きな地震が起きたりということが起き始めた。

このような感じた数日以内に地震が起きた。自分の住んでいない地域の地震を夢に見ることもある。あまり騒ぎ立てることでもないし、なんせ日本人は地震に慣れている。誰にいうでもないが近しい人には伝えるようになった。

昔の私が今の私を見たら「すげー特別じゃん」と言っていそうだが、実は今私はなんとも思っていない。それは他の人とは違っている自分、特別輝く才能ある人に近づきたいという願望から来ていたと知ったからだ。

おそらくその時から私は「自分軸」で生きるようになった。自分軸を持ちながら他人と関わっていく。これが人間的な関係ではないだろうか。そこに家族やコミュニティが形成されていく。誰かと生きる喜びを分かち合える。全てを洗い流した黒い波や放射能という負の遺産は消えないが、私は自分で選択し行動し、修正し、作っていくことができる特別な存在だ。

みんなトクベツだから私はこの世界が好きなのだ。

#創作大賞2022

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