ラブラブエイリアン【漫画】
「めんどくせえよ だせえよ逆に アボカドのサラダとか 一回もおいしいと思った事ねえよ」
(「好きな食べ物は?と聞かれた時にモテる答え」を考えた結果)
「爽やかな関係よね 合コン相手に中出しされて出来婚する私とは違うワ」
(ランニングイベントで知り合った二人の馴れ初めを聞いて)
「穴と袋ってオシャレなフレーズね」「ヘブライ語に直してTシャツのロゴにしたいね」
(女性蔑視を端的に表現した言葉を評して)
「圧倒的に絵が上手い」とか、「続きが読みたくて仕方無くなる構成だ」とか、そういうことを売りにする漫画ではない。
台詞の臨場感がズバ抜けている。
これがこの漫画の一番のストロングポイントだと思う。
女性専用アパートに住む友人四人組。
その元に突如現れた小型エイリアン二人組。
ほとんど六人の会話劇で進む物語。
地球サイド登場人物の価値観は独特で、「あなた方は我々の事より自身や身の回りの事にしか興味がない」と、宇宙人に言わせてしまうような人達。
もの凄く好意的に捉えれば、「宇宙人が来たからっていちいち騒いだりしない」程、自分の人生に懸命に向き合って生きている、とも言える。
が、UFOでやってきた宇宙人を尻目に、彼氏との破局の話を始めたり、NASAにチクらない代わりに、しょうもない事に宇宙人の科学力を使わせてもらったり、テレビゲーム感覚で惑星対抗宇宙船レースに参加したりする彼女らはやはり一本ネジが飛んでいる。そこがつまり、時折作中に登場する「宇宙人⁉︎大変、NASAに連絡しなきゃ‼︎」とパニックに陥る人達とのギャップになるわけで、イコール本作品の笑いどころとなっている。
はじめに「台詞の臨場感」と書いたけれども。
彼女達の独特な感性から放たれる言葉の数々は、とにかく、生き生きしている。LIVE感に溢れている、と言ってもいい。
頭の回転の早い、ユーモアのある人間が、今、隣で喋ってくれているかのような、耳触りの心地良さを与えてくれる。
吹き出しの中の言葉を、実際に口にしてみても、不自然さや淀みが生じない(品の有無はどうあれ)。
漫画には「吹き出しの中だから成立する台詞」、言い換えれば「現実にはこんなこと言わねーよ」な言葉が存在する。これは良い悪いではなく、だからこそ効果的に響く事も多々有る訳だが、本作の、と言うか、作者、岡村星さんの台詞回しはその対局に有る。
単語のチョイス、言葉の過不足の無さ、リズム感。
これはもう、センスだと思う。
耳触り、と書いたが、漫画をそのままドラマの台本にしても成立する筈だ(本作はドラマ化されているが、僕は未視聴。お金が無いので)。
僕的には超意外だったのだが、同氏が現在連載しているのは幕末を舞台にした時代劇。しかしそこでも、上記の力は存分に発揮されておられる。
今後の展開にも期待しているし、もし、今後、作者様がエッセイでも書かれるような事が有ったら、僕は迷わず予約したいと思う。
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