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再録「あのときアレは高かった」〜ホンダ「LEAD(リード)」の巻
「あれ、欲しい!」
そう思うが月々のお小遣いでは到底手が出ない。恐る恐るおかんに相談してみたら、「そんなのおとうさんに言いなさい!」とピシャリ。
そりゃ、直接言えるのなら、おかんに相談しませんわな……。
と、そんなわけで、クラスの中の金持ちのボンだけが持っているのを横目に見ながら、泣く泣くあきらめたあの日の思い出。
そう、あの時あれは高かったのだ。
昭和の、子どもには「ちょっと手の出しにくい」ベストセラー商品。
当時の価格や時代背景を探りながら、その魅力を語る。
◇
仮面ライダーはさんざんバイクを乗り回していた。いくら(ロケの都合上)交通量の少ない田舎道とはいえ、けっこうなスピードで気持ちよさそうに疾走し、あろうことか「変身」の時には手放し運転をしたりしていた。そして、そんな(テレビの向こうの)光景をさんざん目にしていた私たちは思った。俺だってバイクに乗りたい。
だが少年にとって、バイクに乗るまでのハードルはものすごく高い。
バイクは何かと「危険視」され、「とんでもない!」と多くの親たちに片付けられてしまう。バイクは不良、バイクは暴走族、バイクは死ぬ、などの「固定観念」の間隙を縫うように出現してきたのが1976年の「ラッタッタ」(ホンダ・ロードパル)であった。
「ほら、これなら、おばちゃんでも乗れる」(当時のCMキャラクターは40代前半のソフィア・ローレン)。安全でスタイリッシュで、少なくとも暴走族のイメージではない。スクーターブームがあっという間に訪れた。
私もなんとか1台のバイクをゲットした。78年発売のスズキの「ユーディーミニ」というバイクだった。
オレンジのファンシーなマシンだった。そして、そのバイクを乗りつぶしたころ、燦然と現れたのがこれだった。
ホンダ「LEAD(リード)」。ヨーロピアンテイストのステップと50キロ超のスピード感。「ラッタッタ」あたりの牧歌的なイメージがぐんと格好良くなり、スクーター界のちょっとしたヒーローになった。
発売は82年。価格は14万〜17万円(店頭価格)。今の価格に直すと約17万〜21万円である。まあ、高校生が乗り回すには高い。私は浪人生時代に勉強をほっぽらかしたアルバイトでこのバイクをゲット、調子に乗り、さんざんな目にあった。
でも、「俺だってバイクに乗った!」。今となっては、良き思い出である。