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再録「あのときアレは高かった」〜リーガルのスニーカーの巻
「あれ、欲しい!」
そう思うが月々のお小遣いでは到底手が出ない。恐る恐るおかんに相談してみたら、「そんなのおとうさんに言いなさい!」とピシャリ。
そりゃ、直接言えるのなら、おかんに相談しませんわな……。
と、そんなわけで、クラスの中の金持ちのボンだけが持っているのを横目に見ながら、泣く泣くあきらめたあの日の思い出。
そう、あの時あれは高かったのだ。
昭和の、子どもには「ちょっと手の出しにくい」ベストセラー商品。
当時の価格や時代背景を探りながら、その魅力を語る。
◇
最近、白いスニーカーが流行のようだ。
たしかにファッション雑誌などで見かけるスナップでは、「足元の白が新鮮!」とばかり、それなりにカッコよく紹介されている。だが、わたしはどうもこの白スニーカーの流行には疑問を感じてしまう。なかなかかっこよくなりにくいのだ。
その原因は、たぶんあれだ。白い木綿のトレパンに白ズック靴。横分けの髪にちょこんと乗っかった白い帽子。妙にキビキビ動く身体とでかい号令。そう、それは、当時、どこの小学校でも見られた体育の先生の姿である。
体育の先生と言っても、担任の先生が体操用の格好に着替えただけ。あの姿はけっしてかっこいいものの象徴ではなく、どちらかというとげんこつ食らいそうなおっかないものであったりおっさんくさいものの象徴であったのだと思う。
私が中学に入る頃、そんな「白ズック」イメージに新たな革命が起こった。
リーガルのスニーカーである。
オフホワイトのキャンバス地に「R」という文字が刺繍されていた。まだ剥けてない、当時の少年たちがはじめて目にした幻の「スニーカー」であった。
発売は1976年。当時厳しかった中学校の校則のなかで許されていた数少ないオシャレアイテムとして、爆発的に流行った。
この「リーガル」ブランドだけではなく、近所のスーパーの靴売り場には、「W」や「L」などの刺繍を施されたバッタ物が溢れかえり、校内にもその流れ弾が飛び交った。
発売当時の値段は3600円。現在の価格に直すと約6000円である。
履きすぎて最後には茶色または灰色のスニーカーになった。
「あの白いスニーカーはもう捨てたかい?」と歌ったのはチューリップだが、当時の青少年に胸にさまざまな思い出を残した。