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再録「あのときアレは高かった」〜学習机の巻

「あれ、欲しい!」

そう思うが月々のお小遣いでは到底手が出ない。恐る恐るおかんに相談してみたら、「そんなのおとうさんに言いなさい!」とピシャリ。
そりゃ、直接言えるのなら、おかんに相談しませんわな……。
と、そんなわけで、クラスの中の金持ちのボンだけが持っているのを横目に見ながら、泣く泣くあきらめたあの日の思い出。
そう、あの時あれは高かったのだ。

昭和の、子どもには「ちょっと手の出しにくい」ベストセラー商品。
当時の価格や時代背景を探りながら、その魅力を語る。

     ◇

こどもが親に買ってもらうもので学習机ほど尊くありがたいものはないと思う。

私はバカなティーンエイジャーのころ、その学習机が部屋に置いてあるのが何となく鬱陶しくなり、夜中に2階の部屋の窓から隣の空き地(ちょうどうまい具合に空いていた)に向って投げ捨てたことがあった。

深夜のバカでかい音に親が飛び起きてきて、「何やってんだ、おまえ」と呆れられたが、思えばそんな罰当たりなことをやっているから、今の自分があるのだとひとしきり反省してみる。

元来、こどもは神童である。七五三とは神の童子(わらし)からパンピー(一般人)へと成り下がっていく儀式だ。

神の童子が鎮座する学習机はいわば神棚みたいなもんだ、

なんて、親がそう考えたのかどうかはわからぬが、結局、勉強なんていうものはその気になりゃみかん箱の上でだってできるのに、そこは親心、うちの神童にふさわしい立派な学習机をと、世の親たちは奮発した。

そして、その思いに乗じるように(たかだかこどもの)学習机は、ライトがピカピカと光ったり、時計や小物入れなどが付いていたりして、豪華さを競うようになっていったのである。

私は「神童具合」が足りなかったからか、買ってもらったのはわりとシンプルなモデルだったが、当時、友だちの家に行って、鉛筆削りや温度計が埋め込まれてたりする何だかものすごい机があるのに驚いた覚えがある。

1970年代当時の学習机の値段は、たとえば、この広告の商品は2万4800円(71年製、イスは別売り)。現在の価格に直すと約7万3000円である。

このありがたい机でどれだけのことを学んだのかはもはや計測負可能だが、本当に親とはありがたいものである。


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