再録「あのときアレは高かった」〜バンダイ「ホームダービー」の巻
「あれ、欲しい!」
そう思うが月々のお小遣いでは到底手が出ない。恐る恐るおかんに相談してみたら、「そんなのおとうさんに言いなさい!」とピシャリ。
そりゃ、直接言えるのなら、おかんに相談しませんわな……。
と、そんなわけで、クラスの中の金持ちのボンだけが持っているのを横目に見ながら、泣く泣くあきらめたあの日の思い出。
そう、あの時あれは高かったのだ。
昭和の、子どもには「ちょっと手の出しにくい」ベストセラー商品。
当時の価格や時代背景を探りながら、その魅力を語る。
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今、家の隣で下水道の工事をしていて、朝から晩まで、この原稿を書いている時にも「ガガガガ」という絶え間ない爆音に悩まされているのだが、この爆音に負けるとも劣らない音を発するおもちゃがあった。バンダイの「ホームダービー」である。
「ガガガガ」という爆音とともに前後にスライドするプラスティック製のレールの上を鉄製のミニュチュア競走馬が「なんとなく」滑り走り「たまたま」ついた順位を競うゲームなのであった。
出走馬は、シンザン、タケシバオー、スピードシンボリ、トサミドリ、トキノミチルなどの全8頭。なんせ偶然任せなので、どの馬が強かったまでは覚えていないが、1960年代に活躍し、当時から「伝説の名馬」となっていたシンザンや、名前のかっこいい(と思った)スピードシンボリあたりを勝手に応援していたような気がする。
発売当時(1971年)の価格は4800円。現在の価格に直すと約1万4000円である。意外に高い。
偶然の動力を生かすという構造なのだが、紙相撲のように「トントントン」という地味な人力ではなく、でっかい乾電池駆動の機械仕掛けにした分がこの値段。
私が8歳の時に買い与えられたおもちゃなのだが、当時にしても先鋭だったのか「無駄」だったのか。たしかに、けっこう熱中はしたけれど、大げさなおもちゃのわりには、すぐに飽きたような気もしている。
それにしても、今でも思い出せるあの爆音。子供の遊び声までが「騒音」とされる今の世の中で再び脚光を浴びることはないだろう。そういう意味でも懐かしい商品だ。