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iOSのVoiceOverで『俺の従業員サーベイ』を実施した話し

こんにちは。アクセシビリティエンジニアの辻勝利です。
1月からより多くの皆さんにSmartHRを利用していただくべく、プログレッシブデザイングループで活動しています。 遅ればせながら、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

スクリーン・リーダーを使ってSmartHRの機能が利用できるかを確認するイベント『俺の』シリーズ、今回は従業員サーベイで届いたアンケートにスクリーン・リーダーを使って回答できるかをデモで紹介しました。

そもそも「俺の」って?

「俺の」シリーズは、視覚障害の当事者(全盲)であり、光学ディスプレイを通した視覚情報に頼らずに普段の業務を行っている僕が、スクリーン・リーダーを使ってSmartHRの機能を利用する様子を見てもらうマンスリーイベントです。
視覚障害者が自分たちの製品を使っている様子を見てみたいと考えている社内の方に向けて、アクセシビリティ向上がどのように利用者にとって有益なのかを知っていただくきっかけにしたいと思って始めました。
「視覚情報を使わずにウェブを操作するってどういうこと?」といった疑問はもちろん、今後のインクルーシブな製品開発のヒントについてもお答えできるようなカジュアルなイベントを目指しており、少しずつでもSmartHR全社のアクセシビリティへの配慮・理解を深め、多くの人を助ける製品提供ができるような会社作りを目指しています。

イベントではZoomを使って僕のPCの画面とスクリーン・リーダーの読み上げ音声を共有してデモを行っています。 スクリーン・リーダーが読み上げた内容は画面に表示させたテキストをみてもらっているので、僕も気兼ねなく普段通りの読み上げ速度でデモを行っています。

参加者が気になった点や質問はSlackのスレッドに書き込んでもらい、同僚のおうじさん、ますぴーさんに気になるものをピックアップしてもらってお答えしながら約1時間のイベントを進めています。
製品開発に関わっている人だけでなく、社内の様々な職種の方が参加してくれていて、SmartHRをより多くの人に届けたいという皆さんの熱量を感じることができるイベントです。

今回の検証環境

今回はZoomを使ってiPhoneの画面を共有し、VoiceOverでデモを行いました。

  • iOS Version 15.2.1

  • Safari 15

みつかった問題点

最初のタスクは、ログイン後の画面で届いている通知を確認することでした。 おうじさんに送ってもらったサーベイの正体が通知として届いていたからです。

SmartHRにログインして通知を探すには、数字だけがリンクとして読み上げられるところに移動してリンクを開きます。 例えば通知が2件あれば「2」とだけ読み上げられるリンクがあるのです。

会場から「なぜこれが通知を開くためのリンクだと言うことがわかるのか」と質問が出たのですが、いろんなWebアプリケーションを使った経験で、なんとなく数字だけが読み上げられるリンクは何らかの通知を表しているのだろうと推測して開いていることをお話ししました。
もしかしたら、少し冗長だったとしても「2件の通知」のような読み上げにすれば、初めてSmartHRを使用する人にとってもよりわかりやすくなるかもしれませんね。

サーベイのフォームには、スクリーン・リーダー利用者が回答できなくて困るような大きな問題はありませんでした。
今回届いたサーベイが回答しやすかったのは、以下のような構成で作成されていたからです。

  • 各設問は見出しで表現されている

  • 1つの回答を選択するラジオボタンには選択肢を表すラベルが付いている

  • 複数の項目が選択できるチェックボックスのそれぞれの選択肢にラベルが付いている

  • 回答を記述するテキストボックスにも何を入力する場所なのかのラベルが付いている


フォームコントロールを操作している様子


しかし、ラジオボタンの選択項目が2度重複して読み上げられるところがあったり、入力が任意のテキストボックスのところで「必須」と読み上げられる部分があったりと、改善することでより使いやすくなりそうなところもありました。


回答は提出できたのか

iOSでSmartHRを操作するのは初めてでしたが、大きな問題もなく回答を提出することができたのでほっとしました。

ソフトキーボードで文字を入力している様子

デモの中で改善ポイントがいくつかみつかったのも良かったです。
イベント終了後に確認したSlackのスレッドには、問題のありそうな箇所のソースコードや改善案などが投稿されていて、今後のアクセシビリティの改善が期待できました。

実は、デモ環境の準備不足で冒頭に僕が右往左往してしまったせいで、従業員サーベイにも大きなアクセシビリティ改善が行われていたことをお話しするのをすっかり忘れておりました。

従業員サーベイはラジオボタンやチェックボックスを操作したり、テキストフィールドに文字を入力したりすると自動的にその結果が保存されます。
昨年僕が始めて使ったとき、フォームコントロールを操作するたびに「保存しました」というメッセージが読み上げられていました。 サーベイの最初に回答結果は自動的に保存されることを明記しておけば、フォームコントロールを操作するたびにこの読み上げをしなくてもよくなり、スクリーン・リーダーの利用者は毎回読み上げられるメッセージを聞かなくても良くなるので回答がしやすくなると思うとお伝えしたところ、早速開発チームの皆さんが直してくれました。
今回スムーズに回答が進められたのも、実はこの改善のおかげなんです。 本当にありがとうございました。

今年も、この『俺の』シリーズを継続して、より多くの方々にSmartHRを使っていただけるように様々な機能のアクセシビリティを向上させていきたいと思い桝。 お忙しい中ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。

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