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「絵の上達に必要なサイクル」について実例も交えながら丁寧に解説
皆さんは絵の上達に必要なものって何だと思いますか?
才能や根気、練習の質・量などなど、世の中には色んな理論や解決策が飛び交っています。しかしそれ故に「結局のところ何やれば上達するのよ」と悩む方も少なくないと思います。
正直なところ、その人にとって最適な上達法は人それぞれです。人によって力量に幅がありますし、練習法もその人の実力に合うものを選ばないといけません。
レベル1なのにレベル100向けの練習法を始めても辛いだけ。
今回自分が解説するのは、初心者に限らず誰でも早めに身につけておきたい「絵の上達に必要なサイクル」です。
お手軽な上達法やすぐに役立つテクニックではないので、目に見える効果は出づらいと思います。ただ、このサイクルを身につけておくことで自己解決能力・自己分析能力を鍛えることができます。
数年単位で継続することでようやく実感してくるタイプの解説になります。今回はそのサイクルについて説明していきます。
後半では自分の絵を用いて実際にサイクルを実践してみるので、よければご覧ください。
●サイクルの説明
仕事で働く上での理論として「PDCAサイクル」というものがあります。働いている方はおそらくどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。
内訳は以下の通りです。
① Plan…計画を作成する
② Do…計画を実行する
③ Check…行動を評価・分析する
④ Action…改善し、次回に繋ぐ
計画を作る→実行する→結果を評価する→それに基づいて改善する、といった感じです。
正直言うと、自分が今回解説するサイクルもこのPDCAサイクルに近いものがあります。PDCAサイクルを基にしたものというべきでしょうか。
その上で、自分が考案する「絵の上達に必要なサイクル」は
絵を描く→改善点をリストアップする→改善に適した練習法を選ぶ→練習する
以上の4つです。
PDCAサイクルとは違い、「実行」を最初に持ってきています。
Draw→List up→Choice→Practiceなので「DLCPサイクル」とでも言いましょうか。語呂が悪い?まあ呼び名はなんでもいいんです!
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それぞれ順に解説していきます。
① 絵を描く(Draw)
文字通り、絵を描きます。
もっと深掘りするとテーマやコンセプトを設定したり、構図やキャラクターデザインをしたりと「計画を立てる(Plan)」必要がありますが、ここでは割愛します。まずは何でもいいので絵を描くこと。
モチーフも好きなものを描きましょう。二次創作でもいいですし、風景や物体のスケッチでも構いません。あまりかしこまらず、ラフスケッチやドローイングでも大丈夫です。
ここではとにかく絵を描くことが大事です。難しいことは考えず、思いのままに描きましょう。
※これまで絵を描いたことのない人の中には、「自分は何でも描ける!」みたいな全能感を持っている人もいると思います(実際自分もそうだった)。ただ、上達するには自分の実力を紙に描き出すところからがスタート地点です。
最初は怖いかもしれませんが、無限に広がる可能性を捨てて自分の実力を規定しましょう。その勇気が上達への第一歩です。
② 改善点をリストアップする(List up)
絵が完成したら、一旦時間を置いてから見直します。翌日でも構いませんし、一服してからでも大丈夫です。
この振り返りを行わないとどこを直せばいいのかわからず、次回も同じような絵しか描けません。描きっぱなしにしておくと改善点がわからず上達しない。描きっぱなしはよくないと言われる所以です。
必ず…と言うと少し堅苦しくなるので、さらっとでもいいので振り返る習慣を身につけましょう。
コツとしては必ずメモしておくこと。絵の空白部分でもいいですし、紙やスマホのメモ帳でも構いません。
頭で思ったことは少し経つとすぐ忘れてしまうので、言語化し、記録しておくことが重要です。最初は適当にメモしておいて、あとで整理するのもいいですね。
ちなみに自分はスケッチなら余白に改善点を書き、ちゃんとした絵なら紙のメモ帳に書いています。
③ 改善に適した練習法を選ぶ(Choice)
改善点が判明したら、それに適した練習法を選びます。
ポーズが硬ければドローイングを、モチーフの特徴を掴めていないのであればスケッチやデッサンを、人体や顔のパーツなどの比率がわからないのであれば比率の勉強を~といった具合です。配色にまとまりが無いのであれば他の方の絵から色をスポイトするのもアリ。
オリジナルの練習法を考案してもいいでしょう。
ここで大切なのは、改善点の解決に適した練習法を選択することです。
普段からやみくもに同じ練習法ばかりしていては、特定の能力しか上がりません。ひたすらドローイングをしていても色の使い方は上手くならないですし、模写ばかりしていても模写が上手くなるだけです。
一言に画力といっても、その内訳は細かく膨大なステータスに分かれています。
絵の上達で大事なのはステータスを細分化し、自分に足りないものを調べる観察力を磨くことです。
例えば「きれいな線を引く」といっても、線の形状・ストロークの長さ・線の向き・線を引く方向・線の強弱・反復練習など、突き詰めれば非常に細かく分かれています。これら一つ一つを細分化することが大切です。
最初のうちは難しいかもしれませんが、年単位で観察を続けると段々と上手くなっていくでしょう。服の糸を一本ずつほどいていくような作業ですが、この地道な積み重ねが大切です。
④ 練習する(Practice)
練習法が決まったらあとは練習するだけです。
1回だけでなく、短時間でもいいので毎日こつこつ続けることをおすすめします。一度に修得できることには限度がありますし、習慣化してしまえばより身に付きやすいからです。
ある程度練習したら、再び絵を描きましょう。これを1サイクルとします。
●このサイクルのメリット
一つは練習の目的を明確にできる点です。定期的に目的意識を持っておくことで、より効率的に上達が見込めます。
そしてもう一つが練習の目的化を防げる点です。練習をしていくうちにいつしか練習することが目的になってしまい、全然絵を描いていなかった…なんてことがよくあります。
DLCPサイクルでは絵を描くことがまず最初にあるので、練習を目的にしてしまうことが防げます。一連の流れをルーチン化してしまうことで、絵を描かない事象を防止できるのがこのサイクルの特徴です。
※最初から練習することが目的であれば問題ありません。意図しないルートミスでなければ大丈夫です。
●実践
ここでは実際に自分が描いた絵を基にしてサイクルの解説をしてみます。拙い絵ですがご容赦ください🙇
① 絵を描く
当時は艦これの長月が描きたいと思っていたので、直感のままに描いてみました。
参考にしている絵描きさんの画風を踏襲しつつ描いた感じです。
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② 改善点のリストアップ
絵を描いたので、これを基に改善点を整理します。
・4頭身になっているが、これは意図したものではなかった→頭身に対する意識が足りない
・髪が塊のように束になっている。また、後頭部の毛量が多い→髪の理解不足
・膝とつま先の向きが一致していない。膝まわりの理解度が低いほか、脚が開き過ぎていて不自然→解剖学の理解不足
・ジャケットは厚手を想定したが、シワの付き方が薄手のシャツと似ている→布に対する理解不足
細かいところを上げたらキリがないですが、大まかな改善点としてはこんな感じです。総じて勉強不足が目立ちました。
③ 改善に適した練習法・④練習
改善点が見つかったら、練習法を整理します。
・頭身に対する意識が足りない→頭身に注意しながら人物をスケッチ
・髪の理解不足→髪の描き方を勉強する
・解剖学の理解不足→脚の筋肉を勉強・同じポーズを実際にとってみる
・布に対する理解不足→様々な種類の布をスケッチし、シワの違いを観察する
これに基づいて練習してからしばらくした後、もう一度長月を描いてみました。
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今回の絵は大体5頭身で描こうと前もって決めました。また、先に挙げた改善点を踏まえて描いた次第です。前回よりは大分良くなりました。
なお、この絵を描いた後に雲がいまいち雲っぽくないな~と感じたので、雲を練習したあと次の絵で再チャレンジ。
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モチーフのキャラは違いますが、大分マシになったと思います。
そしてこの絵を描いたあとに色の選び方や塗り方が良くないと感じたので、現在は色んなイラストの配色をスポイトしてまわってます。
こんな感じで絵を描いては改善点を見つけ、ある程度練習したらまた絵を描いて…を繰り返していきます。
上手い人はもっと早く上達すると思います。自分は飲み込むスピードが遅いので成長が遅いです。。。
●まとめ
色々話しましたが、要は「とにかくまずは絵を描いてもっとよくできる部分を見つけたら適切な練習をして改善する」サイクルを繰り返すってだけの話です。
今回は自分のための振り返りも兼ねて記事を書いてみました。
上達とは、足りないステータスをしらみつぶしに上げていく地道な努力の積み重ねだと思っています。故に近道なんて無い。
サイクルを毎回実施するのは大変ですが、習慣化できると大きな力になると思います。
また、このサイクルと並行して定期的なインプットを行うのも大切です。上達のサイクルとインプットの習慣化ができると、素早い上達が見込めるかもしれません。
始めのうちは大変ですが、もしお役に立てていれば幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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