「教えないスキル」を磨く (2022/6/23)
記事の長さはおよそ1,700文字。2〜3分程度で読めます。
記事のポイント
「もっと分かりやすい授業をしてください。肝心なところの説明をしてくれないことが多いです」
私は数学の授業で、説明をせず「この部分は自分で考えてごらん」と生徒に投げかけることがしばしばある。
最上位の生徒には受けが良いが、中位の生徒の中にはこうした「不親切」な授業を嫌う人が結構いる。彼らは授業内容の理解にできるだけ労力を使いたくない。授業項目のすべてをわかりやすく説明してほしいのだ。
以前、問題の解答をわざと間違えて、そこから立て直すにはどうすればよいかという授業をした。どの教科・科目でも、正しい考え方を学ぶだけでなく、間違った考え方がなぜ誤りなのかを理解することが重要だ。それがないと自分の答案のミスを発見できない。
授業後、ある生徒の保護者から強いクレームが来た。「先生が問題を間違えるなんて論外。きちんと予習をして、正しい方法のみをわかりやすく教えて欲しい」。
多くの生徒は自分で考える部分が少ない授業を非常に好む。塾・予備校の生徒アンケートでは大抵「授業がわかりやすいか」という項目があり、ここの評価が高いと査定でプラスになる。そのような先生が人気講師にもなる。
考えさせる部分の多い授業は「わかりにくい」と評価され、時にマイナス査定になる。
生徒の成績より生徒数の確保を重視する塾の宣伝では、人気講師の授業が前面に出がちだ。しかし、そうした授業で力が伸びるとは限らない。
私が投げかける「問い」も決して難しいものばかりではない。学力レベルによらず、きちんと頭を使う経験を積んでほしいと思っているからだ。考えることから逃げてはいけない。
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記事を読んで、特に保護者からのクレームにはとても残念な気持ちになりました。
この保護者の方の頭の中には”人生の正解”があって、その”正解”から外れたことを教えられたのが許せなかったんでしょう。
保護者の”正解”
授業で正解をたくさん覚えれば、良い大学に合格できる。
良い大学に入れば、一流企業に就職できる。
一流企業に就職できれば、幸せな人生が送れる。
そして、我が子がこのルートを通れば、立派な親だと尊敬される。
私はいまは「万人にとっての正解がない時代」だと認識していますので、答えを覚えることに加えて、「問いを立てて考える」こともとても大事だと思っています。
自分でも「答えを教える」のではなく、できるだけ「問いかける」ように意識しています。
「問いかけ」は、最初のころはどうしても「答えを教える」よりも時間がかかるのが難点です。
しかし、頭も筋肉と同じで鍛えれば強くなっていくので、そのうちすべてを教えなくても済むようになる分、教えるよりも時間がかからなくなります。
さらに答えを教えると、教える側の「1」が「1」のまま受け手に伝わるだけですが、良い「問い」ができれば、受け手にとって「1」が「2」以上になる可能性もあります。
一方、教える側にとって「問いかける」のは、「答えを教える」よりもはるかに難易度が高いです。
答えは1つですが、問いかけは1つではありません。
問いかける人のセンスや考え方によって、いくつもの「問い」が考えられます。
そして問いかけの仕方によっては、 ー 問いかける側にまったくそんな意図はなくても ー 受け手が「詰問」と捉えたり、「非難されている」と感じてしまうこともあります。
この記事にあった「最上位の生徒には受けが良いが、中位の生徒の中には・・・」という文章に、「自分の問いは良いので、理解できない方に問題がある」という意識を若干感じました。
私がコーチング関連の本でオススメしている中の1冊、佐伯夕利子著『教えないスキル』によると、スペインのプロサッカーチーム「ビジャレアル」の育成組織では、3歳児にさえ「答え」を教えるのではなく「問い」を投げかけるのだそうです。
書籍紹介リンク:
中位以下の生徒にも「不親切」と思われないような問いかけができるか、問いかける側の腕の見せ所です。
教える者として、「教えないスキル」を磨いていきたいですね。
本投稿は日経新聞に記載された記事を読んで、
私が感じたこと、考えたことについて記載しています。
みなさんの考えるヒントになれば嬉しいです。
「マガジン」にも保存しています。
「学びをよろこびに、人生にリーダシップを」
ディアログ 小川