「客観的」に評価できる? (2022/6/16)
記事の長さはおよそ1,700文字。2~3分程度で読めます。
記事のポイント
コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)改定を受け、プライム上場企業の招集通知で取締役の能力を一覧にする「スキルマトリックス」を開示する企業は前年の3倍になり、英文方式の提供は5割増えた。
三井住友信託銀行によると、5月末までに招集通知を公表した、プライム市場上場の企業644社のうち、92%にあたる591社がスキルマトリックスを掲載した。このうち21年も掲載していた企業は196社で、1年で3倍に増えた。
スキルマトリックスは「経営」や「財務」など取締役の知識や経験を一覧にしたもの。株主が取締役の適正や取締役会のバランスを把握し、評価しやすくなる。裏を返せば、不明瞭な人選は反発を受けるきっかけにもなる。
監督機能を強化するため取締役会に占める独立取締役の比率を高める動きも広がる。女性や外国人取締役の登用も相次ぐ。
企業の背中を押しているのは企業統治指針の厳格化。21年6月に改定され、実際に3月期決算企業が対応を求められるのは今回の総会シーズンが初めて。
今回の総会シーズンで改定指針への対応は急速に進むが、実際に投資家の判断や企業統治の改善にどれだけ貢献するかは未知数な面もある。
例えばスキルマトリックスは企業により開示内容の差が大きい。取締役会全体のスキルを集計して図示した企業は2%、記載するスキルの具体的な概要を説明した企業は9%。定義もまちまちだった。
企業統治指針は開示項目や社外取締役比率という形式面では欧米に近づいてきた。ただ企業統治そのもののレベルでは欧米の背中は遠い。開示内容や取締役会の運営という質の向上が課題になる。
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企業統治指針の厳格化を受けて、取締役の能力開示や人選の多様化が進んでいるようですね。
スキルマトリックスの開示状況について、組織コンサルティングファーム大手のコーン・フェリー・ジャパン社が作成した『スキル・マトリックスの開示状況(2021年6月)』という資料を見つけたので、読んでみました。
この資料では、2021年4月時点で日本の株式時価総額トップ100企業のうち、スキルマトリックスを開示していたすべての企業分が掲載されていました。
ソフトバンクやソニー、NTTやMUFGなどのものがありましたが、昨年時点では時価総額トップのトヨタや4位のキーエンス、6位のファーストリテイリングは非開示だったようですね。
資料リンク
※リンク先に飛べない方は「コーンフェリー スキルマトリックス」で検索してみてください。
開示自体は良いことだとは思うのですが、どう評価したら良いか難しいなあというのが正直な感想です。
日本の大手企業の取締役の方は、社外取締役を除いて、新入社員のときからひとつの会社でしか働いたことがない、あるいはグループ企業でしか働いたことがないという方が多いのではないでしょうか。
何十年も「同じ釜の飯を食って」勝手知った人たちばかりの場所で通用したスキルが、人間的な繋がりもない完全にアウェイな社外でも通用するスキルレベルだとは必ずしもいえません。
そうすると、特定のスキルに「◯(マル)」が付いていたとしても、
・本当にその分野のスキルが高いのか
・ある特定の会社内だから通用したのか
同じ「財務」の項目だとしても、A社での「◯」とB社での「◯」が同じレベルなのかを客観的に評価することができないんですよね。
特定の業務分野に「スキルがある」のと「担当している」のは違います。
スキルの客観性をどのように評価していくのか、次のステップでのチャレンジになりそうですね。
追伸
日本ではひとつの企業でしか働いていない取締役がほとんどということからいえば、あえて女性や外国人でなくても、「社外から登用」するだけで多様性を確保できますね(泣)
本投稿は日経新聞に記載された記事を読んで、
私が感じたこと、考えたことについて記載しています。
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ディアログ 小川