もっとも成功した「社会主義国」 (2022/7/29)
記事の長さはおよそ1,600文字。2〜3分程度で読めます。
記事のポイント
本稿では、人手不足でも賃金が上がらないことを取り上げ、その理由として経済学的研究が示す要因を確認する。
そこから見えてくるのは新自由主義の問題ではなく、市場の需給で賃金が決まる古典的な労働市場とは大きく違う日本の労働市場の姿である。
近藤・東大教授は、政府による価格規制がある産業で賃金が停滞するなど、政府規制や社会慣行により労働市場が十分に働いていないことを指摘する。
日本の労働市場が二重構造になっていることも賃金を停滞させる要因。
失業率が低下するとき、パートタイムの賃金は上昇するが、フルタイムの賃金はそれほど上昇しない。
賃金が停滞したのは、市場競争にさらされたパートタイム労働者ではなく、市場からある程度隔離されたフルタイム労働者。
低所得の配偶者を助けようとする政策が、労働市場の機能をゆがめ、女性そして非正規労働者の賃金が低く抑えられる結果を招いている。
厚生年金:夫に扶養される女性は、第3号被保険者として社会保険料を納付する義務がない。
所得税法:妻の年収が一定額を超えない限り、夫は配偶者控除を利用できる。
日本で賃金が停滞しているのは、新自由主義のもとで株主に行きすぎた分配がなされているからではない。資本主義が十分に浸透していないからである。
資本主義の不徹底が問題なのは労働市場に限らない。
イノベーション不足も、既存大企業が不十分な生産性向上でも生き残ることができ(低い退出率)、イノベーションの源泉であるスタートアップが参入しにくい(低い参入率)ことに原因がある。
まず必要なのは現状以上に厳しい市場環境ですべての企業が付加価値の増進を目指すこと。
この意味で、日本に必要なのは新しい資本主義ではなく、普通の資本主義だろう。
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こんなふうに考えた
昨日の投稿で最低賃金を上げる方法として、
「正社員の流動性を高める」ことをお話ししましたが、
ちょうど良いタイミングで、その内容についてより詳しく
解説されている記事が出ていました。
昨日の投稿へのリンク:
筆者の星・東大教授によれば、
日本で人手不足でも賃金が上がらない理由は下記4点です。
政府の規制や社会の慣行により労働市場がゆがんでいる
労働市場が正規、非正規の二重構造になっている
低所得の配偶者に有利な税制がある
貢献に応じた賃金を要求しにくい文化がある
さらに資本主義の不徹底は、
イノベーションなどの分野にも悪影響を及ぼしている。
日本に必要なのは新しい資本主義ではなく、
現状以上に厳しい市場環境ですべての企業が付加価値の増進を目指す、
普通の資本主義だと主張されています。
私もまったく同意見です。
かつて日本は「世界でもっとも成功した社会主義国」
と呼ばれていたことがありました。
資本主義と社会主義のどちらが「好き」か「嫌い」とか、
どちらが「正しい」か「間違っている」かということではありません。
どちらを選ぶのか、「選択」の問題です。
もし「新しい」か「普通」かはともかくとして
「資本主義」を選択するのであれば、「名ばかり資本主義」ではなく、
「ほんとうの資本主義」の制度やルールに基づいて活動する
必要があります。
もちろん「ほんとうの資本主義」にすれば、
いまより「良いこと」も「不都合なこと」も出てくるでしょう。
すべてのことには、必ず「メリット」と「デメリット」があります。
どれを選ぶのか、これも「選択」の問題です。
本投稿は日経新聞に記載された記事を読んで、
私が感じたこと、考えたことについて記載しています。
みなさんの考えるヒントになれば嬉しいです。
「マガジン」にも保存しています。
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ディアログ 小川