あっという間に「未来」は「過去」へと変わっていく ー 日経新聞を読んで感じたこと・考えたこと(2022/4/8~)
本投稿でお伝えしたいこと
本投稿は4月8日以降に日経新聞に記載された記事を読んで、私が感じたこと、考えたことをまとめています。
今週も面白い記事がたくさんありました。
改めて振り返ると、時代の大きなうねりを感じさせてくれる記事が多かったように感じます。
これまでの非常識の中から常識が生まれ、これまでの反対を見ることことで新たな気づきが生まれる。
そして、本質はまったく違っているのに、表面的には同じようにみえる変化もある。
一方で、イヤなことはしたくないという人間の本質(本能)が垣間見える記事もありました。
イヤなことを避けながら、時代のうねりに対応できるように本質を見極める力を養っていきたいですね。
全体で約7600文字、12〜13分で読めます。
大見出しごとに異なる記事について書いています。上から順番ではなくても、興味のあるタイトルからお読みいただけます。
みなさんの考えるヒントになれば嬉しいです。
よろしければ、お付き合いください。
芦屋みちお
知らなかった!
記事のポイント
「忍者ハットリくん」や「怪物くん」などで知られる漫画家の藤子不二雄Aさんが川崎市内の自宅で死去していたことが7日、わかった。88歳だった。
藤子・F・不二雄さんとのコンビ「藤子不二雄」として戦後の児童・少年漫画を代表する作品を手がけた。
「天使の玉ちゃん」でデビュー。1964年に「少年サンデー」で連載を始めた「オバケのQ太郎」がヒットした。コンビを解消後、単独で活動していた。
他の代表作は「プロゴルファー猿」など。ブラックユーモアを効かせた「笑ゥせぇるすまん」や、自伝的な要素の強い「まんが道」、小説が原作の「少年時代」など、児童漫画以外も高く評価された。
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まんがにほとんど縁のない私でも、お名前を知っているほど有名な漫画家の藤子不二雄Aさんがお亡くなりになったという記事です。
代表作として「忍者ハットリくん」、「怪物くん」、「オバケのQ太郎」、「プロゴルファー猿」そして「笑ゥせぇるすまん」と、数々の作品の名前が書かれており、ほとんどはテレビなどで見たことのあるものばかりでした。
この記事を読んでいて、個人的にすごく気になったことがひとつありました。みなさんはどうですか?
私の中では、「藤子不二雄」=「ドラえもん」だったんですが、代表作の中に「ドラえもん」がないんですよね。
気になって調べてみたところ、ドラえもんの作者は「藤子不二雄」さんではなく、「藤子・F・不二雄」さんなんですね!
FさんとAさんふたりで「藤子不二雄」のペンネームを使ってドラえもんを描いているものだと、ずーっと思い違いをしていました。
みなさんは知ってました?
「花の山」を探しに
記事のポイント
メルカリが数日遅い配達を選べば送料を安くする「ゆっくり宅配」に乗り出す。
日本の宅配便の取扱数は年間50億個に迫り、運び手が足りない「宅配クライシス」が深刻化している。
日本の宅配便取扱数の約1割、コンビニ発送の約8割がメルカリの出品物。メルカリが日本の宅配網に与える負荷が膨らんでいる。
ある物流大手の幹部は「このままでは運びきれなくなる」と吐露する。生命線の配送が揺らげば、メルカリの成長にもブレーキがかかる。
これまでのECの主流は「安く早く」だったが、海外ECでは、購入者が通常の配送か、到着が遅い代わりに送料が安くなるゆっくり宅配かを選べる形式が多い。
アマゾン・ドット・コムは米国など5カ国で、5〜6日後の配送を選べば割引等の特典を受けられる有料会員向けサービスを導入している。米ナイキにも到着が遅くなる代わりに配送料を1ドル安くするサービスがある。
配送時期を遅らせられれば、業務を平準化でき、環境負荷も引き下げられる。
メルカリが目指す「やさしい物流」が軌道に乗れば、課題解決のモデルケースになる。
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株式投資の世界に、「人の行く裏に道あり花の山」という格言があるそうです。
群集心理で動くのではなく、他人と反対のことをやったほうがうまくいくことを説いています。
株式投資の世界に限らず、メルカリのようなビジネスの世界でも、さらには私たちそれぞれの考え方でも、「あえて反対のことを考えてみる・やってみる」のは、思わぬ発見や新たな気づきを得るためにとても大切なことだと思っています。
今回の記事にある「宅急便」にしても「コンビニ」にしても、まさに当時のビジネス常識の反対を考えたからこそ生まれました。
当時の常識:大口荷物を一度に運ぶ方が合理的で得。
参考:宅急便のあゆみ(ヤマト運輸)
当時の常識:大量仕入れ・大量販売を推し進める大型店舗。
参考:コンビニエンスストア誕生(セブン-イレブン・ジャパン)
どちらも始めたときには、「うまくいくわけがない!」とまわりから強い反対があったそうです。
それが今では、私たちの生活になくてはならないものですよね。
非難覚悟であえて反対の道に進んでみると、「花の山」に巡り会えるかもしれませんね。
「イヤな」ことはしたくない
記事のポイント
人口動態で男女の違いが鮮明になっている。東京都は2021年、男性だけ見れば25年ぶりに流出する人が多くなった。女性はなお流入が勝る。
女性が大都市に集まりがちな傾向は、性別による暮らしやすさの差が地方社会に根強く残っていることを映す。
男女を問わず希望や能力に応じて多様なキャリアを実現できる環境を整えなければ地域経済の活性化はおぼつかない。
20年の国政調査をみると、特に大都市で人口に占める女性の割合が10年前に比べ高まっている。上昇幅が大きいのは大都市圏周辺の自治体。
もともと日本は都市への集住度が高い。人口に占める都市住民の比率は1950年の53%から2020年には92%に上昇した。(参考:米国83%、ドイツ78%。主要先進国で唯一90%台)
地方回帰の流れが強まったコロナ下で、女性がなお都会に集まり続けるのは、地方の一部に残る古い性別役割意識も影響している。
危機感にかられ、兵庫県豊岡市や宮崎県日南市などで女性の就労環境改善に取り組む動きも始まっている。
女性に選ばれる環境作りが企業や地域の将来を左右する。コロナ下の人口動態は地方の意識改革を迫っている。
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人間は「したいことをしよう」とする気持ちもありますが、それよりさらに「イヤなことをしたくない」気持ちの方が強いと、私は考えています。
この記事は、地方回帰の流れのなかで、女性が働きやすさで都会を選んでいるというトーンで書かれていますが、実際には、男性は都会での仕事が「イヤ」、女性は田舎での生活が「イヤ」な人が多いことが根本にあるように感じます。
これまでは仕事のために「イヤイヤ」都会にいたり、親や周りに言われて「イヤイヤ」田舎で生活していた人が多かったんじゃないでしょうか。
都会でリモートなど多様な働き方が認められるようになってくれば、男性の大都市圏への流入も戻ってくるような気がします。
一部の町で女性の就労環境改善に取り組む動きもあるようですが、全体としてどうなんでしょう。
同日の記事に「百貨店、ようやく慣行修正」のタイトルで、百貨店の独自慣行の見直しが紹介されていました。帳票の共通化や専用値札の撤廃などを2025年ごろまでに進めるのだそうです。
百貨店市場は、1991年の7兆7130億円をピークに、21年には4兆4182億円へと半分以下に縮小しています。このタイミングになってやっと対策を取り始めたわけですね。
百貨店市場の魅力が減る中で、取引先に「イヤな」ことを強いていれば、取引を見合わせるところが増えるのは当然ですよね。
何かを変えるのは誰にとっても「イヤな」ことです。
いかに「イヤな」ことを「イヤじゃない」ことに変えて、手遅れになる前に取り組めるかがポイントになりますね。
似てるけどまったく違う
記事のポイント
日立製作所は給与を減らさずに週休3日にできる新しい勤務制度を導入する。働き方を柔軟に選択できるようにして多様な人材を取り込み、従業員の意欲などを高めて生産性を引き上げる。
パナソニックホールディングスやNECも週休3日を検討する。
成果さえ上がれば働く日数や時間にこだわらない経営が日本で広がる可能性がある。
産業のサービス化や知識集約化が進み、労働時間と成果は必ずしも比例しなくなっている。時間の使い方について従業員に幅広い裁量を認め、成果で評価するような仕組みの整備が企業に求められている。
米フューチャー・フォーラムが21年11月に日米英などの約1万人を対象に実施した調査では、95%が勤務時間を柔軟に変えられる働き方を希望すると答えた。
日本の労働基準法は働いた時間に応じて賃金が決まる「時間給」を原則としている。在宅勤務など新しい働き方も増えており、労働法制の見直しなども必要になりそうだ。
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記事のタイトルから日立が週休3日制を導入するのかと思って読み始めたのですが、そうではありませんでした。
2022年度中に導入する新制度では、1日3.75時間としていた勤務時間の下限をなくし、働く日を従業員が選びやすくすることによって、「結果的に週休3日」にもできるようになるのだそうです。
一方NECやパナソニックで2022年度中に一部採用を検討しているのは、1週間に決まった休みが3日ある、いわゆる「週休3日制」のようです。
この記事では日立の制度も、NEC、パナソニックの制度も一括りに「週休3日」として語られていますが、個人的にはまったく別ものだと思います。
前者は従業員が「主体的に」働く時間を調整できるようになるのに対して、後者は「決められた」日に休むということでいえば、これまでの週休2日と同じです。ただ休みの日数が増えるだけです。
同日の日経朝刊「社員のやる気、数字で見せる」とのタイトルの記事のなかで、日本の「社員エンゲージメント(やる気、熱意)」の低さが取り上げられていました。
みなさんは、仕事に対してやる気がわかず、イヤイヤやっているときに休みが1日増えると「やる気」になりますか? 私はますます働く気がなくなってしまいますね。
それに対して、自分で仕事をする(休む)日や時間を決めていいよ、と言われたらどうですか。やる気がでませんか?
表面的には同じに見えても、本質はまったく違うということがよくあります。
そのため同じようなことをやっているはずなのに、結果がまったく違ってしまうんですね。
今回取り上げられた企業が、新制度導入後にどのように変わっていくのか注目したいですね。
あっという間に「未来」は「過去」へと変わっていく
2021年に世界の電気自動車(EV)の新車販売台数が約460万台と20年の2.2倍に増え、初めてハイブリッド車(HV)を上回った。
ソニーグループが人気オンラインゲーム「フォートナイト」で知られる米エピックゲームズへの3度目の出資を決めた。
日本のドローン(小型無人機)ビジネスが新たな飛躍期を迎える。2022年中にも住宅地などの上空でドローンの自動飛行を解禁する見通しで、制度整備で欧米に先行する。
ニューヨーク市スタテン島にあるアマゾン・ドット・コムの物流施設に「アマゾン労働組合」が新たに設立された。
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今日は紙面の至るところで、時代の大きなうねり、業界の地殻変動を感じさせられる記事が目につきました。
自動車の世界では、現在主流のガソリン車の次の世代と思っていたハイブリッド車の生産台数を、早くもさらに次世代の電気自動車が超えました。
エンジンに強みのあった日本のホンダも、4輪車の電動化シフトを急いでいます。
ITの世界では、インターネットの次の主戦場と考えられているインターネット上の仮想空間「メタバース」の基盤とするため、IT大手が利用者の多いゲーム会社へのM&Aを加速しています。
空を見上げれば、住宅地をドローンが飛び回るための法整備も始まっています。
さらに人に目を向ければ、アマゾンを初めスターバックスの店舗、ハイテク企業などアメリカのさまざまな企業で、米国でずっと加入が減少傾向だった労働組合設立の動きが活発化しているそうです。
気付かないうちに、想像を超えるスピードで「未来」は「過去」へと変わっていますね。
同日の日経朝刊スポーツ欄のコラム「スポーツの力」で、4月10日にプロ野球28年ぶりの完全試合を達成したロッテの佐々木朗希選手が取り上げられていました。その中の一節です。
スポーツの世界に限らない気がしますね。
自分は大丈夫かな?
たかが昼食、されど昼食。
記事のポイント
オフィスワーカーの昼食代が上昇している。新型コロナウイルス禍を機に「おひとりさまランチ」が定着し、好きな店でプチぜいたくを楽しむ人が増えていることなどが背景にある。
自分の使いたいところにお金を使おうという消費志向が昼の憩いにも広がってきた。
新生銀行の2021年の調査によると、男性会社員の昼食代は前年比64円増の649円。直近10年で最高値となった。女性会社員も590円と前年比7円増えた。
女性向け情報サイト「オズモール」によると、平日ランチのおひとりさま予約数はコロナ禍前の2019年から21年は3.7倍になった。
一方で、ランチはなるべく節約したい人もいる。
その日の志向で奮発する時もあれば安く済ませる時もある。柔軟な消費者が増えているようだ。
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この記事のもとになっている新生銀行の「2021年サラリーマンのお小遣い調査」の調査内容を細かくみてみると、オフィスワーカーの中でも特に20代男性の増加が顕著なようですね。
コロナ禍前までは、昼食もある意味で業務の一環だったのではないでしょうか。一緒に働く上司や先輩と連れ立って、年下なので好みも言えないまま、それほど好きではないお店に行って食べていた。
ところが、コロナ禍で在宅勤務が増え会社にいく回数が減ったこと、会社に行ったときも「ひとりランチ」が推奨されたこと、さらには夜の付き合いが減り小遣いに少し余裕ができたことなどで、少し贅沢をしても自分の好きなところに行こうと考えた方が多いのではないかと思います。
参照:新生銀行調査
https://www.shinseibank.com/corporate/news/pdf/pdf2021/210629_OkozukaiSurvey_j.pdf
人の意欲や能力を伸ばす力として、課題に自発的にとりくむ「内発的動機づけ」と、自分が自分の行動の主人公となる「自律性」が重要だと言われています。
E.Lデシ、R.フラスト著 『人を伸ばす力 内発と自律のすすめ』
たかが昼食とはいえ、自分の行動の主人公となって自分で行きたい店を決めて食事をするのと、あまり気の進まないお店で食事をするのとでは、午後の仕事に取り組む意欲にも違いが出てくると思いませんか?
加えて自分で選んだものを食べれば、より美味しく感じることもできますし、自ずと食事内容への興味も高まってきます。
ひいては食への意識が強まり、結果として自分の体への意識も高まってくるという好循環に繋がっていくような気がします。
たかが昼食、されど昼食。
手ごわい「上司」
記事のポイント
大塚商会が人工知能(AI)を活用した営業で成果を出している。
5000万件に及ぶ商談データをAIに学習させて受注確度の高い訪問先を特定、営業担当者に推奨する。
20年には過去の営業日報に記載された上司から部下への助言をAIに学習させ、上司の代わりにAIが助言するようにした。
今後は、上司が部下に直接助言する際、上手なやり方やタイミングをAIが支援する機能を設ける。
この結果、全社の商談件数は2.3倍に増え、受注の成功率も上がった。
経営の数値だけではなく、営業スタイルや営業組織の文化まで変わり始めた。勘と経験に頼る「昭和の営業スタイル」から、データに基づく営業へ変わりつつある。
こうした営業改革の成果を、新たな稼ぐ力に変えるため、20年にAIによる営業支援システムの外板組織を設立し、21年にはデータ分析サービスを開始した。
スマートな営業の追求が新たな事業の芽に育ち、会社の形をさらに変えようとしている。
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人工知能(AI)の活用が営業分野にも広がっている事例です。
AIが過去5000万件分の商談データを基に、受注確度の高い顧客と商材を特定し、担当者の予定が空いている日時に予定まで入れてくれるのだそうです。
さらにびっくりしたのが、最適な営業提案をしてくれるだけでなく、上司に代わって助言やアドバイスもしてくれるのだとか。
そうなると、上司が人間ではなくAIになる日もそんなに遠くないのかもしれませんね。
もしAIが上司になれば、飲みに誘われることもなければ、おべんちゃらを使う必要もありません。
一方でAI上司は24時間365日休みなく働いていますから、毎日毎日、成長し続けています。
いままで都合の悪いことを取り繕ったり、サボっていたのを誤魔化せたりできていたのが、AI上司にはすぐに見破られてしまいそうですね。
ムダな気遣いをする必要がなくなる代わりに、仕事にシビアで手ごわい上司になりそうです。
そんな時代に備えて、どんな準備をしますか?