恩田陸『夜のピクニック』の台詞から感じた、「終焉を想像し、今を生きる」ということ
こんにちは。Dear Hope 副塾長の伊藤です。
今日は、好きな小説家の作品から、人生について考えさせられた言葉をご紹介したいと思います。
最近30日チャレンジ(詳細は、末尾をご覧ください!)の応援メッセージを作成するにあたって、久しぶりに恩田陸の小説「夜のピクニック」を引っ張り出して再読しました。
この小説に登場する「北高」という高校は、茨城県に実在する高校がモデルになっているそうで、歩行祭というイベントも実際に行われています。(とそのモデルになっている高校を卒業した大学の先輩が教えてくれました。筆者の恩田陸も参加したらしいよ、とも。)
登場人物たちの語りと心情描写を中心に、物語は淡々と進んでいきます。特に大きなイベントがあるわけでも、どこか素晴らしい景色の場所に行くわけでもないのですが、さすがは恩田陸、ページを繰る手が止まりません。
恩田作品を読んでいていつも思うのは、彼女の物語(文章)はいつも世界の輪郭がはっきりしていて、心地よくその中に没入できるということです。リアリティーがあるというのでしょうか。読み手に、まるで登場人物の一人としてその場にいるかのように感じさせる筆力はさすがの一言で、440ページ以上ある長編小説ですが、気が付くと「あれ、もうこんなに読んだっけ?」と、不思議な感覚に陥ります。そういうわけで、私の中では、旅をするような感じで恩田作品を楽しんでいます。
(別世界に旅するという意味では、『ネクロポリス』もすごい!)
さて、この小説には、個人的に印象に残った描写が数多く出てきます。
例えば、物語の中盤には次のような記述があります。
また、主人公の融(とおる)が足をくじいてしまい、友人の忍(しのぶ)と路肩に座り込んでいるとき、
さらに、終盤には、主人公である貴子の「賭け」が決着したところで(このことは、主人公にとっては劇的な出来事でした)、次のような会話があります。
これらについて、本当にそうだよなぁと思うのです。(きっと、みなさんも多かれ少なかれ感じているのではないでしょうか?)意識の底で感じていることを、明るみに引っ張り出して、目の前に突き付けられた感じがします。
いろんなものは必ず終わります。受験も、弁理士試験もそう、会社(事務所)勤めもそう。そしていま振り返ると、大変だった時の方が多かったはずなのに、楽しかった思い出とか、良い経験だったなという前向きな思い出だけが濾過されて残っています。
いま、しんどいなと思ったり、やめたいなと思ったりすることもあるかもしれません。そう思っても思わなくても、必ず物事はいつか終わります。高校時代は必ず終わり、大学時代も終わり、仕事をしている時期も、そして人生もいずれ終わります。
どんな「いま」だったとしても、「いい思い出だったな」と振り返る時がきっと来るのでしょう。
そうであるならば、今日も一日、一分一秒の連続を丁寧に受け止めて、感謝の気持ちで仕事に取り組みたいですね。今日という日は、一生に一度しかないのですから。
・・・と、この記事を書いていたら、他の恩田作品も読みたくなってきました(笑)。『六番目の小夜子』(筆者のデビュー作。その昔、NHKの子供向けドラマシリーズの「ドラマ愛の詩」で鈴木杏&山田孝之&栗山千明主演で、松本まりか 、山崎育三郎、 勝地涼(敬称略)など、今見ると豪華な役者さんたちが出演。小さいころリアルタイムで見て毎週ワクワクしていたのを覚えています)とか『ネクロポリス』も大学生の時に何度読んだか分かりません。
そういえば、初めて読んだ恩田作品は『麦の海に沈む果実』でした。読了後、しばらくしたら、またあの世界に入りたくなって読み直し、次第に他の作品に手を出すようになりました。エッセイ集の『小説以外』(雑誌や他の作者の文庫本のに寄せた解説などをまとめた一冊)も味わい深いです。そうそう、『メガロマニア』(マヤ文明の遺跡を巡った紀行文)も印象的で、作家がどんな思考(妄想?)をしているのかを垣間見れて面白い!『きのうの世界』(岐阜が舞台)も旅気分に浸れます、ちょっと怖いけど。『蛇行する川のほとり』は、恩田作品にしては世界の輪郭がふわっとしているのですが、これはあえてでしょう。あとは、(この辺で自重)
それでは、今回はこの辺で。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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