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【弁理士試験】合格体験記

こんにちは、Dear Hope 理数担当の伊藤です。
最近、PC内のフォルダを整理していたところ、弁理士試験に合格したときに書いた「合格体験記」を見つけました。もしかすると、どなたかの役に立つかもしれませんので、記録としてnoteに残しておこうと思います。


私が弁理士試験に合格したのは今から10年ほど前なので、現在の予備校のカリキュラムや弁理士試験の制度と異なる部分があるかもしれません。また、この合格体験記は当時お世話になったTAC(資格試験の予備校)の合格体験記に掲載されたものです。そのような背景をご理解いただいた上でお読みいただければと思います。

TACの弁理士講座のパンフレット巻頭に、インタビュー記事も掲載されました

弁理士を目指した理由

2010年の秋から特許調査に従事することになり、知的財産の世界に足を踏み入れました。そして、調査業務を行う中で、仕事の幅を広げたいと思い、弁理士を目指すことにしました。

合格までの道のり

弁理士試験を受験するに当たり、2011年の秋に、TAC弁理士講座の1.5年本科コース(DVD通信)に申し込み、ゼロから勉強を始めました。
しかし、2012年の短答試験までは特許法と意匠法の一部のDVDしか視聴せず、ほとんど勉強しませんでした。それでもDVDは次々と届きますので、ある日、久しぶりに、「論文基礎講義」を視聴してみました。すると、何回目かの講義の終わりに、担当の小松先生が「DVDやWebをご覧のみなさんも、ぜひ渋谷校のライブ講義に来てください」とおっしゃっているのが耳に入りました。
それでは行ってみよう、ということで、2012年9月の論文基礎講義「意匠法」の初回の講義から渋谷校へ通い始め、そこから本格的な勉強が始まりました。
そして、2013年の弁理士試験において、短答、論文、そして口述と、3度の試験を無事にクリアし、最終合格を果たすことができました。

TACでの受講コースと良かった点

口述試験対策でTAC以外の予備校の模試や過去問集を併用しましたが、短答試験と論文試験に合格するまでは、TACの講座のみを受講し、他の受験機関の講座や教材は利用しませんでした。

(1)1.5年本科コース(DVD通信)

まず、論文合格までは、本科コースを受講しました。このコースは、入門から実践まで、合格に必要な講座すべてが組み込まれ、かつ、段階的にカリキュラムが設定されていましたので、初学者にも取り組みやすい点が良かったと思います。

(2)口述ゼミ・口述重要論点整理

口述ゼミは、毎週、斎藤先生による問答をたくさん積むことができ、また、口述重要論点整理は、法域ごとに講義が進行したので、学習のペースメーカーとしてとても役立ちました。

モチベーション維持の方法

その1

毎回、必ず講師の小松先生に質問をしました。せっかく弁理士の先生にお会いできる機会なので、講義の後そのまま帰宅してはもったいないと思います。
この質問の機会を週に一度の楽しみにしていましたので、モチべーションを維持しながら勉強を継続できました。同時に、この質疑応答により、一気に実力を引き上げて頂き、短期間で合格できたと思います。

その2

自宅の寝室などに「『祝』2013年 弁理士試験合格」と書いた紙を貼り、毎日眺めました。当初は、 「2013年弁理士試験合格」と書いてありましたが、あえて赤ペンで大きく『祝』を入れて、既に合格したことにしました。この方がパワーがあるように思います。

その3

GWや夏期休暇に、TAC渋谷校隣のホテルに3日間ほどこもり、計3回、勉強合宿を行いました。TACの講義が終わって数分で部屋に到着でき、とても集中して勉強できました。
私は、もともとアウトドア派のため、受験勉強をしていた期間中、パーっと出かけられないことをストレスに感じることもありました。このため、旅行のような非日常の高揚感を味わいつつ、たっぷり勉強できる妙案としてホテル合宿を企画し、モチベーションの維持に役立てました。

オリジナル学習法

(1)短答試験

①短答逐条講義(条文の解説講義)の音声をダウンロードし、往復約1時間の通勤時間に繰り返し聴きました。これは、本試験の日まで継続しました。

②過去問を繰り返し解きました。
201210月~12
一通り試験範囲の学習を終えた後は、TACから頂いた過去問題集を解きました。条文やテキストをじっくり読むのが苦手なタイプなので、まず問題を解き、その後に解説書や条文を読み込みました。週1回の論文対策の講義を受ける以外は、短答試験対策のみを行い、10年分の過去問を2周しました(最初の1周は、入門講義において毎回指定された問題を解いたものです)。
この頃は、一日5問(25枝)程度が精一杯でした。

20131月~3
短答過去問の3周目を終えました。解けない枝も多くありましたが、一日10問(50枝)程度はできるようになりました。
この時期は、勉強時間の半分は論文試験対策を行いました。短答試験の勉強と並行して論文対策を行うのは大変に思われるかもしれません。しかし、実際はその逆で、論文試験対策として立法趣旨や判例を学習したことの相乗効果で、短答の実力が飛躍的に向上し、短答模試や答練で安定して合格点(45~50点前後/60点満点)を取れるようになりました。

20134
再び短答試験対策に力を入れ、過去問4周目を終えました。一日当たり、約20問(100枝)以上は解きました。

20135月(直前期)
過去問を更に2周し、特・実、意、商の四法は計6周しました。1日当たり40問(200枝)以上、休日は100問(500枝)ほど解きましたので、2週間程度で10年分の過去問を解き切ることができました。また、条約及び不正競争防止法、著作権法は更に1周して、合計7周しました。この結果、過去問で解けない問題はほぼなくなりました。
このように書くと、計画的かつ機械的に毎日勉強をこなしていったと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。過去問を何周できるかをゲームにして数字と勝負していた結果、6、7周できたというのが実情です。また、私はもともと楽天的な性格なので、分からない個所にはこだわらず、△印だけ付けてさっさと次の問題へ取りかかりました(もちろん、解説を読んでも理解できない箇所は質問しました)。

③過去問演習4周目からは、各枝の正誤判断に加え、すべての枝について、その理由や根拠条文をメモしながら解き進めました。この作業は、条文のインプットに絶大な効果がありましたので、おススメです。不正競争防止法と著作権法も、根拠条文を付しながら解くことにより、マスターしました。

④読替え条文をまとめたオリジナルのノートを作成しました。勉強を進めていくと、読替え条文の壁に当たると思います。たとえば、特184条の15や商56条です。これを、正月休みを利用して、読み替え後の条文の全文を一つ一つ書き起こし、オリジナルの教材を作成しました。

⑤その他、パリ条約の音読を自分で録音し、毎日の通勤時に繰り返し聴いたり、PCTの手続フロー(かなり複雑になります)を作成したり、TRiPS協定の条文に、強行規定(~しなければならない)と、裁量規定(~することができる)とを区別するマークを付したりするなど、過去問で頻出の事項は、条約関連であっても捨て問は作らないように努力しました。

合格体験記に掲載した「1日のスケジュール例」

(2)論文試験(必須科目)

既に述べましたが、論文試験の対策は、短答試験の対策と並行して行いました。普段は、週1回の講義や答練を受け、本格的な対策は、 1月~3月と、短答試験が終わった後の約1か月半の期間で行いました。

・1月~3月
まずは、基本的な書き方を練習し、答練の復習に加え過去問10年分をひととおり解きました。その際、TACの答練に使用する解答用紙を購入し、何度も全文書きを行いました。論文本試験までに、約70~80枚ほど使用しました。この論文対策は、仕事帰りに1~2時間ほどカフェで行い、帰宅後は、短答試験の対策を行いました。短答対策をしっかり行ったことによる効果が大きく、2月頃には答練で安定して合格点を取れるようになりました。

・短答試験終了後
短答試験は、「正しいものはいくつあるか」という出題が大幅に増加していて、前年度よりずっと難しく感じ、生きた心地がしませんでした。しかし、自己採点の結果は55点でした。合格ラインを十分に超えていましたので、落ち着いて論文試験の対策を進めることができました。この時期は、主に、趣旨や判例など論述系の論点を中心にインプット&アウトプットを行いました。
主要な論点は、小松先生が厳選して紹介して下さったので、それらを自分でまとめて印刷し、常に持ち歩きました。使用したテキストは、この自作のノートと条文、そして、TACの論文要点集のみです。論文対策はこれで十分でした。

短答式試験の合格通知

(3)口述試験

TACの口述ゼミと、重要論点整理の講座を受講し、ぺースメーカーとして活用しました。

・論文試験終了後、合格発表前
口述試験では、論文試験ではあまり見かけないような趣旨(外国語書面出願制度の導入理由など)も問われることを知り、衝撃を受けました。ここまで青本(工業所有権法逐条解説)をほとんど読まずに来ましたが、やはり避けては通れないと覚悟を決め、青本や改正本を精読しつつ、テキスト(口述バイブル)と過去問を解き進める日々が続きました。
まず法域ごとに青本を分解して製本し直し、過去に問われた個所に黄マーカーを引きました。次にもう一度問題を解き、できない場合は黄マーカーに重ねてオレンジマーカーを引きます。それでも解けない場合は、重ねてピンクのマーカーを引きます。そして、オレンジ以上のマーカーが引かれた箇所には、その記載を答えるべき質問を余白に記入し、青本だけでアウトプットの練習ができるようにしました。
さらに、口述ゼミに参加した際は、毎週、斎藤先生に質問をしました。斎藤先生には、どんな質問にも丁寧に対応して頂いたおかげで、論文試験の合格発表の頃には、口述試験の合格レベルまで到達できました。

・論文試験の合格発表後

口述模試を5回受けました。中でもTACの模試は、1部屋に講師2人が割り当てられ、最も本番に近い状況で練習することができました。
この時期は、インプットはほぼ完成していましたので、アウトプットの訓練を積みました。

直前期の学習方法

短答試験

試験当日の朝まで、過去問を解き進めました。ただし、当日にピークを持ってくる必要があるため、直前の2,3日は、各法域の総チェックを行いました。具体的には、△印(解けなかったという印)のある問題の解説を読みました。

論文試験

直前の3日は、趣旨をまとめた自作のノートと、ファイナルチェックの際に頂いたテキストの巻末に記載の判例を熟読しました。

口述試験

口述バイブルと、模試で頂いた予想問題集をひととおりおさらいしました。

これから受験される方へのアドバイス

講師のアドバイスを素直に実践することをお勧めします。講義では、「あとで青本を見ておいてください」、「この趣旨は各自で覚えてください」と言われることがあります。これを必ず実行しましよう。大切なことは、講義に出席することではなく、講義で教わった内容を自分のモノとするために行動することだと思います。

条文の学習から離れないことも重要だと思います。出題可能性の低い判例や、 PCT規則の細部にこだわるよりも、重要な条文や基礎的な論点を繰り返し、しっかりマスターした方が効果的です。

最後に、ぜひ講師や仲間を巻き込んで、楽しく勉強を継続して下さい。どう勉強するか、何時問勉強するか、といったことよりも、勉強を楽しんでいるか、ということの方がずっと重要だと思います。そして、これこそが、私の合格の秘訣です。

終わりに

弁理士試験に合格できたのは、毎回の細かい質問に最後まで付き合ってくださった小松先生、斎藤先生、上西先生、学習の場を提供して下さったTACのスタッフの皆様、そして、私が勉強しやすいように気遣いサポートしてくれた家族のおかげです。とても幸運に恵まれたと感じています。合格までに関わったすべての方に感謝いたします。ありがとうございました。


今振り返ると、充実したとても楽しい日々でした!

本文中にあるように、講義が終わってからいつも先生に質問をしていたせいか、先生から、論文の講義のときに答案を回収する係に任命していただいたり(答案回収の後ゆっくり質問できました)、合格後に、ゼミに入っていないのにゼミの卒業生の食事会に誘っていただいたりしたのはいい思い出です。

長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回はこの辺で!



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