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サ終5年半後にぶっ生き返ったアプリゲームの話

余命宣告は2018年11月8日に下された。

会社から帰る電車の中でこのツイートを見た時の、全身の血の気が抜ける感覚は今も記憶にある。
なんで、信じられない、と思うと同時に、やっぱりか、来るべき時が来たとも思っていた。

夢色キャストとは2015年9月に配信開始されたスマートフォン向けアプリゲームだ。
キャッチコピー『恋するミュージカルリズムゲーム』が示すよう、ミュージカル劇団を舞台にした男性キャラクター達との恋愛ストーリーと音楽リズムアクションの両軸を持ったゲームで、
自分は2016年初頭からこの作品に大変夢中になっていた。

スマホアプリゲームとしては珍しいパネルタッチ方式のリズムゲームは、とっつきやすくも飽きがこず、最高難易度のパーフェクトクリアを求めて毎日のようにプレイした。

メインキャラクターはミュージカル劇団に所属する俳優(各々スタッフ業も兼任している)7人+サービス開始1年半後に追加されたライバル劇団5人。
基本無料のアプリで主たる課金先はキャラクターカードが排出されるガチャという、所謂キャラゲーにしてはかなりの少人数だが、全員人間味に溢れてとても魅力的だった。

自分の推しは橘蒼星(CV.豊永利行)。
この男の見た目と声と歌唱力と劇団の事務担当という立ち回りと演技力にぶちのめされ、
どれだけのiTunesカードを捧げ、ランダムノベルティのためにコラボカフェのメニューを飲み食いしたことか。

夢色キャストは何より曲が最高に良かった。
ミュージカルをテーマにしているだけに、1曲1曲に明確な世界観や物語性があった。
歌唱だけでオーディションが複数審査あったことが公言されている通り、メインキャラの声優陣は全員とても歌唱力が高く、複数人で歌う曲のハーモニーも素晴らしい。

派手さ奇抜さはないけれど、構成要素の全てに洗練された美しさがあって、2次元らしくキラキラしながら現実感もあるという夢色キャストの世界が、自分は大好きだった。


しかしこのアプリがリリースされた2015年は、現在まで圧倒的な人気を誇るタイトルを含む多くのアプリゲームが毎日のようにリリースされていた時期で、声優陣やスタッフ陣の豪華さの割に、自分の周りでも殆どプレイしているオタクがいなかった。
ゲーム楽曲のCDのリリースやコミカライズもあったものの、女性向けアプリ界隈だけでももっと派手な展開をしているゲームは多く、正直夢色キャストは頭角を示しきれていなかった。

2018年頃からは長らく新規ボーカル曲が実装されない時期があったり、過去の人気ガチャの復刻が相次いだりした。さらに運営会社の移管などもあり、自分を含むコアユーザーは、いつサービス終了を迎えてもおかしくないと日々怯えながらログインしていた。

そしてリリース3周年を過ぎて間もなく、冒頭の余命宣告がくだった頃には、既に諦念を抱えるまでになっていたのだった。

サービス終了が決まってからは、無課金で引けるクライマックスガチャで未入手のカードやイベントを集めながら、ゲーム内のあらゆる全てのスクリーンショットや画面録画に収めていく終活に勤しんだ。
最後の新規イベントとして開催された期間限定イベントには、夢色キャストらしい美しい希望の輝きが満ちていて、そのストーリーや楽曲は涙無しには享受できなかった。

2019年1月15日、予定通り夢色キャストはサービス終了した。
この日の午前中は仕事を休んで、午後の始業ギリギリまでリズムゲームを叩きに叩いて別れを惜しんだ。最後にプレイしたのは推しのソロ曲、リザルトはパフェコンことパーフェクトコンプリートだった。

サービス終了したのは14:00だったが、夜に仕事を終えてからも、Twitterのトレンド上位に『夢色キャスト』の文字が並んでいた。たくさんの人に別れを惜しまれているように見える一方で、本当にこれだけの人が熱心にアプリをプレイしていたらまた違う未来があったかも……なんて、少し邪に苦々しくも感じた。

それから数ヶ月後、それまで音源化されていなかった楽曲のCDや、ゲーム内のスチルや設定資料をおさめたメモリアルブックが発売された。
ゲームの一部を形として残し、いよいよこれで夢色キャストというコンテンツ自体が「死」を迎えることとなる。

と、思いきや。
何故か2019年春以降、その呼吸は止まらなかった。

コロナ禍を挟みながらも、1年に1度以上のペースで複数企業のコラボカフェやポップアップストアが開催されていた。
SDキャラの描き下ろしやロゴをモチーフにした日常使いもできるグッズの新発売などはありつつも、新規イラストが見られることはなく、等身イラストはゲームに実装されていたスチルが何度となく使い回された。
しかし夢色キャストのことはどうやったって嫌いになれず、コンテンツとして生きているならば、とコラボカフェに足を運び、グッズを買い揃えるなどしていた。

2023年開催のコラボカフェ
夢色キャストのオタクはほぼ全てのコラボ案件で
オムライスを食べている

グッズだけになって延命をさせられ続ける夢色キャストはまるでゾンビのようで、それに縋り続けている自分もまたゾンビだと自嘲したことは、一度や二度ではない。
コラボカフェは予約満了の回が多く、グッズも売り切れが多発していたので、あちこちに夢キャスゾンビは蔓延っていたのだろう。
気が付くと、アプリのサービス開始から終了までの3年5ヶ月よりもずっと長い月日が、サービス終了の日からは経過している。
一体いつまで我々の仮死状態は続くのだろうか。


そう思っていた、2024年5月。

サービス終了時はTwitter、5年経ってXと名を変えたSNSの公式アカウントが突然の宣告をした。

なんと5年半越しに買い切りアーカイブアプリで復活することが発表され、
オリジナルアプリリリースから丸9年経った2024年9月29日、『夢色キャスト TAKE A CURTAIN CALL』として発売されたのだった。

【Apple Store】

【Google play】


率直に、歓喜で咽び泣いた。
収益やユーザー数の低迷で終了したアプリが、5年半後ユーザーからの声援に応えて復活するだなんて、前例があるのだろうか。

先述したサービス終了前最後のイベントで実装されたのが、藤村伊織(CV.花江夏樹)が歌う『星よ奇跡を』という曲だった。

夢の中は 夢だなんて思わずに 輝きを感じてる
終わらないときめき演じたい
永遠には届かないとわかってる だからこそ目指すよ
奇跡の星よ照らしてくれ

『星よ奇跡を』

終わりを目前に控えながらも美しくそれを綴った歌詞と、煌めきの詰まったメロディに、実装当時は大泣きしながら聞いていた。

5年越しに起こった今回の復活はまさしく奇跡だ。
この感動を噛み締めて、また大泣きしながら聞いた。

今回の買い切りアプリは2025年9月28日までの期間限定販売ということは既に告知されている。
そしてスマホアプリゲームという性質上、OSの提供期間が終わればいつかはプレイできなくなる。
復活したと言えども、やはり永遠には届かない。

けれどこのゲームをプレイする時間は十分にあるうえに、新曲の制作も発表されている。
そのうえ来年迎えるサービス開始からの「10周年」というワードは、公式からリリースされる文章の折々に登場する。

5年半越しの復活以上の奇跡は起きない可能性は十分にある。
しかしカラオケチェーンとのコラボ等も発表され、楽しみなことがまだしばらく続くことは間違いないので、わたしの大好きな夢色キャストの世界を今一度たっぷりと味わい尽くしたい。

『夢色キャストTAKE A CURTAIN CALL』は、
かつてガチャで当てなければ見ることのできなかったカードが全て最初から実装されていて、言わば初めから廃課金仕様でプレイできる。
リズムゲームのプレイ楽曲もほぼ全て実装されている。
とはいえ買い切り価格の4800円は、ご新規さんにはなかなか手の出しづらい価格であることは間違いない。

そこで、とにかく楽曲を聞いてほしい。
長らくダウンロード販売すらされていなかったボーカル曲が、アーカイブアプリのリリースと合わせてサブスク配信されるようになった。
同じ2次元作品の楽曲でも、アイドルをモチーフした作品たちの曲とは一線を画すミュージカルならではの曲たちを是非聞いてみていただきたい。


今からでも遅くない。
夢色キャストは、いいぞ!!!!!!!!!!!!

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