赤ひげ先生14
二階への内階段を上がった目の前にあるナースステーションには製氷機がある。
発熱の氷嚢などの治療に使うのだが、患者さんの中には頻繁に氷をもらいに来る人がいた。
お皿からまるでお煎餅を食べるようにボリボリ氷を食べる患者さんは決まって貧血の人が多い。
看護師さんに聞いても因果関係は不明だが、確かに病気によって嗜好が偏ることがあるらしい。
世の中に初めて未病という名前を広めた漢方医に聞いた話しでは、嗜好が病気の原因では無く、病気がその嗜好を好むのだとか。
糖尿病が甘いものや高カロリーを好ませたり、急に夜中にアイスクリームを食べたくなるのが続くようだと癌を疑った方がいいとか、
確かに氷は貧血の原因にはならないからそれは言えているのかもしれない。
ただ、喫煙だけは違う。
タバコにはヒソのような劇薬が数百種類も含まれていて、影響は生活習慣病、癌、認知症など全ての病気に及ぶとわかっていてもやめられない
それはタバコ自体が中毒症を起こすからだが、
本人だけで無く周りにも副流煙を通して害を及ぼすことは長い間無視されてきた。
以前はがんセンターでも喫煙室があったし、どうせ治らないんだからと肺癌患者さんでも吸っていたのを見た。
赤ひげ病院でも昔は廊下奥の長椅子のそばには灰皿があったので、朝一番にいつもタバコを吸う患者さんがいた。
一度吸う前と後に2回血圧を測ってみたら、案の定タバコを吸うと血管が収縮するのか一気に30は血圧が上がる。
その頃は赤ひげ先生もタバコを吸っていたのだから患者さんにも強くは言えなかった。
今では考えられないが、職場でも電車の中でもタバコを吸う男性が溢れていて、私達は長年副流煙にさらされてきたのだ。
最近はどんどん喫煙所は少なくなり、病院や公共施設でも敷地内での喫煙はできなくなった。高額納税者とも言える喫煙者も肩身が狭くなるばかり。今のご時世ではちょっと気の毒と言えなくも無い、かもしれない…
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