楢 乃梨子

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最近の記事

金毘羅さん詣

小学生の頃、四国の家族旅行で金毘羅さんに来たことがあった。 参道の途中にあった旅館に泊まり、朝ごはんを食べる前に786段の階段を登って本殿にやっと辿りついたら父は奥社まで行くと言い出した。 大戦中に中国大陸を行軍した挙句にシベリアに抑留されても運良く帰って来れた父なら朝メシ前の行だったかもしれないが、腹ペコでの山登りは苦行以外の何ものでも無かったのを覚えている。 今回妹と思い出話に盛り上がって金毘羅さんに詣でた。 記憶以上の苦行は息が上がり、途中何度も止まって呼吸を落ち着か

    • 淡路島SAの朝日

      淡路島SAで朝日を見ている。 NHKの72時間ドキュメン番組で見た時から来たいと思っていた。 神戸から紀伊半島まで見渡せる広い視界の中にゆっくり登っていく太陽を見ていると、地球全体がゆっくり自転していることが実感できる。 というのも、ガリレオがそのことを発見しだとことを知っているからで、そうでなければ太陽が動いていると思うだろう。 真実を知っているかで物の見方は変わる。 今日も太陽が登る有難さを噛みしめて、一日が始まる。

      • 秋と春が短くなってる。

        10月に夏日がもどってくるなんて今年はいつ秋になるのかと思っていたら、今日はハロウィン。 さすがに11月を前にしてやっと秋が来た、 いやいや普通は冬に向かう時期なのに〜💦 やがてこの異常気象が普通になって、北海道でみかん、本州でマンゴー、九州ではコーヒー豆の栽培なんてことになるかも。 この期に及んで食べ物の話かとお笑いめさるな 北海道でブリが獲れているのだから、そんなことが現実になってもおかしくないのだ。 長期ベースで考えれば何十万年周期で氷河期と温暖化を繰り返してきたのだ

        • 光る君へ

          一年半にわたる撮影が終わって、いよいよ大河ドラマも終わりに近づいてきた。 今年は源氏物語の世界に紫式部と藤原道長の幼馴染みの恋という二重のフィクションが交差して、それに一条天皇と定子が政権争いに巻き込まれていく史実にあった恋物語も織り込まれるという 大石静さんの脚本が素晴らしかったと思う。 いつもは男性の歴史的出世ストーリーが中心の大河ドラマなのに、この一年は平安絵巻さながらの恋愛ドラマに毎週ときめいてしまった。 それにしても衣装から小道具、舞台背景に至るまで、毎回NHKの凝

          投票日当日

          昨夜テレビをつけたらニュースの投票終了まであと5分のテロップに気づいた。 忘れていた‼️ 夕方までうちで友達と三人、お好み焼きやケーキを食べながら話込んでいたので、すっかり忘れていた。 慌てて投票用紙を探しても見当たらない💦 身分証を持ってギリギリ会場に飛び込むと、最後の一人でなんとか投票を済ませることができた。 投票所の皆様にご迷惑をかけてごめんなさい💦 自慢では無いが、アンチ体制派捻くれ者の私が今まで投票した候補者も政党も当選や第一党になったことは一度も無かったのに、今

          縄文人

          最近メディアで縄文時代を取り上げることが多くなったような気がする。  というのも私が気になっているから目にする機会が増えただけなのかもしれないが、最近元気が無い日本人のアイデンティティを呼び覚ますには 確かに有効だと言える。 なぜなら世界四大文明より遥か昔16000年も前から一万年以上続いていたとされているのだ。 それが文明と認められればの話だが、出土される土器や集落跡を見ても、確かに統制された社会性が観てとれる。 狩猟採集民族だった彼らは日本全土に渡って豊かで争いの少ない

          通勤電車

          何十年振りかで通勤時間の電車に乗った。 9時に麻布十番に集合だったので永田町などの官僚街も通ったが、みんな我慢強く窮屈な空間と時間を共有している。 ずいぶん昔になるが、娘時分の私は奈良から大阪まで2年ほど通勤していたことがある。 ある時、ドアが開くなり男性がホームに転がり落ちると同時に「いい加減にしてください‼︎ 」女性の声が車内に響き渡った。 どうやら痴漢をつき飛ばしたようだった。 「お前みたいなブス、誰が触るか‼︎ 」捨て台詞の男を残してドアが閉まると車内には平安が戻り

          サウンドオブフリーダム

          友達と3人で映画を観た。 そのまた知り合いから、絶対観ておいた方がいい と勧められて、恐る恐る映画館に行ったのだ。 今世界で奴隷のような生活をして強いられている人は、昔黒人が奴隷にされた時より多いそうだ。 そのうち数百万人が子供なのだ。 ある日突然親元から誘拐され高音で外国に売られていく。 その世界一の消費国はアメリカ。 この映画はその不条理に立ち向かったアメリカの警察官の実話で、彼は5人の子供の父親だった。 俳優が演じていることとはいえ、人間の闇の深さに暗澹たる思い

          サウンドオブフリーダム

          赤ひげ先生20

          月初めの夜勤ではレセプトチェックもやった。 夜中にシンと静まり返った事務室で、二階に寝ている患者さんの物音に聞き耳をたてながらカチャカチャとパソコンに向かう。  事務専門に勤めている人からすれば信じられないと言われるだろうが、医師法に抵触しない範囲であれば赤ひげ病院は私がやりたいと思えば色々なことをやらせてもらえた。 今思えば若かったあのころが懐かしい。 今までレセプトでしか知らなかった医療の現場に立ち会うことができたあの8年間は、私の人生の財産だ。 だからこそ、今でも鮮明

          赤ひげ先生20

          赤ひげ先生19

          赤ひげがかつて勤めていた大きな総合病院は蕎麦で有名な地方にあった。 年に一度、新蕎麦が出る秋にわざわざ挽き立ての蕎麦粉を持って蕎麦を打ちに来てくれる人がいた。 以前の病院からの顔馴染みの男性で、時々診察を受けに来ることもあった。 いつもは味気ない病院食の厨房にこの日ばかりは新蕎麦とだし汁の香りが漂う。 年に一度の慰労会なので、シフトが休みのスタッフもご相伴にあずかろうとやってくる。 年末にはお歳暮として、毎年数の子がたっぷり入った松前漬けを一人づつ手渡してもらって、お正月のお

          赤ひげ先生19

          赤ひげ先生18

          外来の手術を見ていても、人間の体は精密機械よりも素晴らしく精巧にできているとわかる。 ある時バネ指の手術に立ち合った。 バネ指のは指を曲げ伸ばしする腱が筋膜に癒着してカクカクとしたり動きにくくなってしまうので、くっついている箇所を剥がす。 まだ麻酔が効いているので赤ひげ先生に言われて患者さんが指を曲げ伸ばしすると、傷口からカラクリ人形のように白い2本の腱がたがい違いに動くのが見えた。 毎日何気なく動かしている指はこんなふうに動いていたんだと感動した。 中学の理科の時間にフナ

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          赤ひげ先生17

          大きな病院や施設の院内感染が新聞沙汰になることがある。 目に見えない細菌やウイルスをシャットアウトするのは簡単では無い。 その頃O157が流行って、赤ひげ病院でも防ぎ用が無いのではと心配していたら現実になった。  病院の厨房のおばちゃんが熱があるという。 委託会社に連絡しても代わりの人がいないと、 とりあえず昼ご飯を作って帰って行った。 それを食べた患者さんと看護婦さんの数名が翌日から発熱、どうやらO157のようだった。 というのもその検査をしなかったのだ。 「え⁉︎ やらな

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          赤ひげ先生16

          血圧と便秘でずっと通っていた上品な老婦人がおられた。 いつも身綺麗にされて穏やかな方だったが、ある時注腸検査で大腸癌が見つかった。 高齢でもまだしゃんとされているので手術の意向を尋ねると治療を拒まれた。 「せめて人口肛門だけでもつけたらどうだ、大腸癌が出口を塞いでしまうと口から便が出てくるんだぞ」赤ひげ先生が言っても、何もしないでくれの一点ばりだった。 しばらくして入院して来られたが、食事も進まずに黙って横になっておられる。 周りには少し排泄物の匂いがしたが、最後まできちんと

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          赤ひげ先生15

          創傷処置の中に真皮縫合というのがある。 保険が適用されるのは顔か手の甲といった目立つ場所だけだが、木曜日に来てくれる若いドクターは形成外科が専門なのでその縫合は素晴らしかった。 まず体内で溶ける糸を使って傷口の少し内側同士を縫い合わせてから2回目に表皮をつれないように縫合するので、抜糸した跡が糸一本くらいしか残らない。 たまに顔の傷でこられた女の患者さんには木曜日をすすめてあげたくらいだ。 しかし一時が万事丁寧な診察は時間がかかる。 私が夜勤に入っていた時の夜間診療に腹痛の

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          赤ひげ先生14

          二階への内階段を上がった目の前にあるナースステーションには製氷機がある。 発熱の氷嚢などの治療に使うのだが、患者さんの中には頻繁に氷をもらいに来る人がいた。 お皿からまるでお煎餅を食べるようにボリボリ氷を食べる患者さんは決まって貧血の人が多い。 看護師さんに聞いても因果関係は不明だが、確かに病気によって嗜好が偏ることがあるらしい。 世の中に初めて未病という名前を広めた漢方医に聞いた話しでは、嗜好が病気の原因では無く、病気がその嗜好を好むのだとか。 糖尿病が甘いものや高カロリー

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          人の皮膚は呼吸や発汗などの生理機能を果たしながら外界のばい菌から体を守ってくれるという素晴らしいバリアらしい。 ところが免疫力が落ちると怪我がなくても菌が侵入して炎症を起こすのが蜂窩織炎だ。 時を前後するが、足の脛にひどい炎症を起こした若い患者さんが二人入院してきたことがあった。 これはなかなか侮れない疾患で、手遅れで菌が体にまわると敗血症を起こして死んでしまうので、そうなると足を切断するしか無くなることもあるらしかった。 赤ひげ先生は膝から下の赤黒く腫れ上がった脛を縦20

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