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通勤電車

何十年振りかで通勤時間の電車に乗った。
9時に麻布十番に集合だったので永田町などの官僚街も通ったが、みんな我慢強く窮屈な空間と時間を共有している。

ずいぶん昔になるが、娘時分の私は奈良から大阪まで2年ほど通勤していたことがある。
ある時、ドアが開くなり男性がホームに転がり落ちると同時に「いい加減にしてください‼︎ 」女性の声が車内に響き渡った。
どうやら痴漢をつき飛ばしたようだった。
「お前みたいなブス、誰が触るか‼︎ 」捨て台詞の男を残してドアが閉まると車内には平安が戻り、居合わせた女性達は皆心の中で拍手喝采だった。

ある時はおじさんに絡まれていた若い乗客の周りに人だかりができていた。 野次馬はてんでにおじさんを非難し始めて、「覚えてろよ!」最後に悪態ついて隣の車両に逃げ出したこともあった。
座席に座っていたら隣のおばさんから話しかけられて飴をもらったこともある。
阪神電車では競馬新聞片手のおじさんから今日の穴馬情報を教えてもらったことも。
大阪から兵庫に向かって海側から山側に阪神、JR、阪急の3路線が並行して走っているが、山側に向かうほど富裕層が多いことがその頃は男性乗客の服装ではっきりわかった。
今は大阪も変わったと思うが、昔の大阪はそんなふうにハプニングに出食わす町だった。

東京の車内では定年退職後の年配男性でも服装がきちんとしている。 
ハプニングもない代わり穏やかな車内も私は好きだが、時々あの頃の関西の通勤時間が懐かしい。


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