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マリア様はご機嫌ナナメ 14 恋人宣言
マリアが溺れかけたその日の夕方、僕たち三人はヒナコの家で、ヒナコのママの作ったおいしい夕飯を食べた。その後、おいしいコーヒーを飲んでいたと時だった。マリアが突然言った。
「私、カイの彼女になるわ」
突然の恋人宣言だった。しかも、僕は一切聞かされていなかったし、恋人同士になるというのは、もっと時間をかけて熟成されるものだと考えていた。
「だって、カイは私の胸を揉んだし、ファースト・キスも奪った」
ヒナコとヒナコのママは唖然とその宣言を聞いていた。僕は「そんな~」と心で呟いたが、正直、ちょっと嬉しかった。
その一方的な恋人宣言を境にして、マリアは人前でも堂々と僕の腕に彼女の腕を絡ませてきた。ちょっと狂暴な女だけど、僕も悪い気はしなかった。
そうは言っても、夏休みはすぐ終わり、二学期が始まると、学校、ヒナコとの勉強、そして本屋のバイトの生活に戻った。
マリアはピアノのレッスンに明け暮れて、恋人宣言にも拘わらず僕たちは二人で会う時間が無かった。
ヒナコとの勉強の時、ヒナコはさかんに「どお、どお、お二人さん! デートとかちゃんとしちゃってるの」
「そんな時間は無いよ。見ての通りの生活でそんな時間は無いよ」
「放っておくと、マリア逃げちゃうぞ」
「どうぞ、逃げても未練なんてありません、だって強引にアイツが恋人宣言したのだから、勝手に去られても文句は言えへんやんか」
「マリアもマリアよ。ピアノ終わったら家に寄れば良いのに。そしたら三人でママのご飯食べれるのに」
「きっと、レッスンがきつくて疲れ果ててるんやろ」
「あらあら、お優しいこと」
勉強が終わってヒナコのママの作ったおいしい料理をいただいてると、ヒナコが同じ話をママにした。すると、
「大丈夫よ、マリアちゃんはああ見えて結構しっかりしてるから、掴んだ幸は離さないわよ」