新橋「味覚」麻婆刀削麺と戦う朝
懐かしの味に再会する
いつかまた行きたいと思っていた店がありました。
いつかが1年過ぎ、3年過ぎ、5年も過ぎると
すっかり店名も忘れてしまいました。
ふと思い出して店名を調べようとすると、
料理の写真はそれらしくても、
店内の雰囲気がまったく違っていて、しっくり来ません。
そうやってまただらだらと月日が流れていたのですが
三度、検索。今度はちょっと真剣に。
すると、どうやら私が行った「2号店」は閉店していて、
「本店」と「3号店」は営業していることがわかりました。
だから、店の雰囲気が違っていたのか!
そんなわけで、今朝は思い出の味を食べに行くことに。
西新橋にある「味覚 本店」です。
新橋駅から早足で歩くこと10分ちょい。
ほとんどまっすぐの道なので、迷わず到着しました。
お店は、どえらい古い雑居ビルの地下1階にあります。
調べたら1974年竣工。私と同い年です。
一度足を踏み入れたら二度と戻って来られない、
そんな不気味な階段を降りて、店内に入ります。
店内は狭くテーブル席が7組ほど。
どれも3~4人席なので、ひとり客は相席になります。
開店直後とあって、まだ客は2組。
「すきなせきにどっぞ(中国語訛り)」
ということで、
今回、私はツレがいたので、2人で4人席を確保します。
この店にやってきた理由。
それが「味覚石焼 麻婆刀削麺」(¥1100)です。
数年前、テレビの激辛企画(たぶん有吉ゼミ)で見て、
「これは食べなければいけない」と当時すぐに出かけて行きました。
あれ以来の再会です。
ごはんと食べる「味覚石焼 麻婆豆腐」もありますが
まったく視界に入りません。
刀削麺一択です。
辛さは「薄辛」「普通」「中辛」「激辛」が選べます。
初心者は「薄辛」がおすすめとありますが
こちらは二度目、堂々と「中辛」を注文します。
ちなみに、これは食べログなどでも、あまり出回っていない情報ですが
「激辛」は同一価格ではなく、¥2000です。ご注意を!
注文を聞いて、さっさと厨房に引っ込みたがる
せわしない店員さんを呼び止め、壁の貼り紙を指さします。
「大盛で!」
激辛は追加料金がかかりますが「大盛」も「特盛」も無料です。
注文後、ほどなくしてスープが到着。
メニューのどこにも書いてなかったので、
こんなシンプルな中華スープでも、うれしいサプライズです。
気づけば、続々と客が入店。
まだ空席があるにもかかわらず、ひとり客を相席にしている差配、
これからどんどん混んで来るという経験からなのでしょう。
10分ほどで運ばれてきた刀削麺。
写真じゃあまり伝わりませんが「大盛」の大盛り具合に、
ど肝を抜かれます。
調子に乗って「特盛」にしなくてよかった!
遅れて「麻婆豆腐」もやって来ました。
まだぐつぐつと煮えたぎっていて、
飛散防止に、クッキングシートが被せられています。
マグマのような灼熱の粘体。
これは、紙エプロンが必須です。
シートをとると……
湯気が立ち上り、カメラが一瞬で曇ります。
あつあつのラーメンを撮影しても、こんなに曇ったりしません。
いかにこの麻婆豆腐が滾っているのか。
おわかりいただけただろうか。
すべてがテーブルに揃い、ここからは「戦い」です。
いつまでも冷めることのない麻婆豆腐に、
真っ白な刀削麺を浸すと、地獄のような赤に染まります。
モチモチの麺はほどよい長さで、麻婆によく絡む!
石焼鍋からそのまますすり上げると、大火傷。
一旦、器の麺の上に戻して、食すのがオススメです。
激辛好きにはたまらない至高の逸品。
同時に“残すわけにはいかない”という
強い使命感と義務感、強迫観念にかられます。
大盛りを選んだことを後悔しますが、
食事のあと「もう少し食べられたな」と思うのが嫌なのです。
「ぜんぜん冷めない」
「麺まったく減らない」
「歯ごたえがあるから、顎がつかれてきた」
ツレと互いに励ましあいながら、
この絶対に負けられない戦いに、挑み続けます。
これは、激辛真剣勝負でありながら、
大食いチャレンジでもあるのです。
鼻水はだらだら。
じんわり湿っていた汗が、やがて雨垂れのように滴り落ちます。
顔は、鼻水と汗でびしょびしょです。
なんとか刀削麺を完食。
最後に石鍋に残った、激辛の麻婆豆腐を胃に流し込み、
無事この戦いを制しました。
あまりの激闘にしばし放心状態。
次に訪れるのはまた数年後か。
そのときは「大盛」を食べられるのか。
その日まで、健康であり続けたいものです。