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「タイパ」を誤解するとクリニックの働き方改革は進まない_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード13全文書き起こし

DOC WEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

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オープニングトーク

(高山)おはようございます。パーソナリティのドックウェブ編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ、第13回が始まりました。大西さん、よろしくお願いします。

(大西)よろしくお願いします。

今日のテーマ:働き方改革の背景

(高山)今日のテーマは何でしょうか?

(大西)今日のテーマは「クリニックの働き方改革の実際」です。

(高山)2019年頃から働き方改革が日本全国で始まりましたね。

(大西)当時、大きな問題となっていたのは、広告代理店での過労死の問題です。これがきっかけで、「日本人は働き過ぎではないか?」という世論が高まり、働き方改革関連法案が次々と成立していきました。

(高山)その影響は、2024年現在の医療現場にも色濃く出ていますね。今日はそのあたりを詳しくお話しできたらと思います。

(高山)病院で働く医師が過労死してしまったという問題もありました。

(大西)2024年からは医師も働き方改革の対象に含まれています。

(高山)そうした問題がクリニックの働き方にどのような影響を与えるのか、今日はその点について語っていきたいと思います。

クリニックにおける働き方改革の対象

(高山)クリニックの働き方改革というと、医師、看護師、事務スタッフ、コメディカルなど、様々な方がいらっしゃいますが、この改革はクリニック全体に関わるお話でしょうか?それとも医師だけに限定されるのでしょうか?

(大西)医師とスタッフ、両方に関わるものですが、雇用者と非雇用者、つまり院長とスタッフという立場によって、捉え方が大きく異なるように感じます。

働き方改革と院長の責任

(高山)社長と社員、雇用主と被雇用者という立場の違いは大きいですね。

(大西)働き方改革関連法は、雇われる側にのみ適用され、雇用主である院長には適用されていません。この点を押さえておかないと、働き方改革の本質を理解することは難しいでしょう。院長自身でコントロールするしかない、ということですね。

(高山)医師の働き方改革という言葉がニュースなどでよく取り上げられるので、クリニックでも医師側から、あるいは院長主導で改革が進むと思われがちですが、実際は違うのですね。

指示の難しさ

(大西)最近よく耳にするのが、「院長が指示をしにくくなった」という話です。「この仕事をお願いしたいけれど、残業になってしまう」「休日出勤になってしまう」など、以前であれば当然のようにお願いできていたことが、難しくなっているようです。

(高山)「残業や休日出勤は悪」という風潮が広がっていますからね。

残業に対する意識の変化

(大西)院長としては、「お金は払うのだから当然だろう」と思うかもしれませんが、スタッフからは露骨に嫌な顔をされることもあります。「お金はもらえるのか?」「給料は出るのか?」といった確認をされること自体が、院長にとっては辛いことでしょう。「お金のために働いているのか」と思われてしまうのは、なかなか辛いものです。もちろん、残業代や休日出勤手当を支払うのは当然のことですが、それ以上にスタッフの業務意識やモチベーションをどう維持していくかも重要なポイントです。

(高山)お金を払うことだけが前提で、それ以上の業務を依頼しにくくなっているということですね。

(大西)以前はサービス残業が当たり前で、残業代が出るのが当然という時代もありましたが、今は全く通用しません。今の若い世代は、「残業はしない」と決めている人が多いので、定時になったらきっぱりと仕事を終えて帰ります。だらだらと残業をしないのは良いことですが、一方で、時間内に仕事を終わらせるためには、業務の効率化や時間管理がより重要になってきます。

時間管理と成果

(高山)限られた時間内で成果を上げるためには、無駄な残業をせずに効率的に働くことが求められますね。経営的な視点からも、無駄な残業代を削減することは重要です。

(大西)その一方で、時間内に終わらなかった仕事は誰かが処理しなければならず、結局院長がその負担を負ってしまうケースも少なくありません。人を雇っているのに院長が忙しいというのは本末転倒です。時間外労働をさせる場合は、「残業してください」ではなく、「時間外手当を支給するので、1時間延長してください」と伝えるなど、言葉選びにも気を付ける必要がありますね。

業務依頼のポイント

(大西)依頼する際は、何時に何を終わらせるかというゴールを明確に設定し、指示を出すことが大切です。「終わらなかったら私がやります」などと言ってしまうと、スタッフの責任感が育たず、結局院長が負担を負うことになってしまいます。決められた時間内に仕事を終わらせる責任はスタッフにあるということを、明確に伝える必要があるということですね。できなかった場合は、なぜできなかったのかを確認し、次回に活かすための指導を行うことが重要です。院長が全てを吸収するのではなく、スタッフの成長を促すためにも、適切な指導が必要です。

レセプト点検の効率化

(大西)レセプト点検を例に挙げると、以前は残業や休日出勤の温床になっていましたが、今はコンピューターシステムを導入し、スタッフが協力して点検を行うことで、時間内に完了できるようになっています。未だに残業や休日出勤をしてレセプト点検を行っているクリニックがあるとすれば、それは明らかにやり方が悪いと言えるでしょう。

タイムパフォーマンスの誤解

(高山)業務プロセスを見直し、効率化を図る必要があるということですね。

(大西)最近よく使われる「タイムパフォーマンス(タイパ)」という言葉ですが、この言葉には誤解が多いです。タイパとは、時間当たりどれだけの成果を上げるかという意味ですが、実際には「いかに短く終わらせるか」という時間短縮ばかりに注目が集まっているように感じます。時間を短縮することに意識が集中しすぎると、「やらない」という選択肢に繋がりかねません。

(高山)「本当にこのタスクは必要なのか?」「削ぎ落としても問題ないのではないか?」と考えるようになり、重要な業務まで削減してしまう可能性があります。

掃除チェックリストの例

(大西)掃除チェックリストが良い例ですね。チェックリストを適当に処理すれば時間は短縮されますが、本来の目的である清掃の質の確認がおろそかになってしまいます。

時間を短縮することではなく、時間内に成果を上げるという本来の目的に立ち返る必要があります。掃除チェックリストの例で言えば、掃除がきちんと行われているかを確認し、問題があれば改善を促すことが重要です。チェックリストを作成したことがないスタッフには、その目的と使い方を丁寧に説明する必要があります。時間を短縮することばかりに意識が集中すると、質が低下し、パフォーマンスも下がってしまう悪循環に陥ります。

勤務形態と時間管理

(大西)勤務形態によって、時間に対する意識も異なります。パートタイマーは時間が来たら帰ることができますが、正社員はそうはいきません。しかし、働き方改革によって正社員にも時間管理の意識が浸透し、パートタイマーと同じように定時で帰る人が増えてきています。

(高山)パートタイマーと同じように時間管理を徹底する人が増えているということですね。

(大西)これは必ずしも悪いことではありませんが、「仕事を終わらせてから帰る」という意識が薄れてしまう可能性も懸念されます。「時間だから帰る」ではなく、「今日やるべきことは終わっているか」を確認することが大切です。「終わっていなければ、残業代を支給するので、終わらせてください」と伝えるべきです。

タスク管理の重要性

(高山)確かに、日々の業務の中で、スタッフのタスク完了状況を確認する機会は少ないかもしれません。

(大西)私がサラリーマン時代にマネージャーをしていた時は、スタッフに「今日のタスクは何ですか?」「いつまでに終わりますか?」「時間外労働が必要な場合は、事前に申告してください。申告がない場合は認めません」と伝えていました。そうすることで、スタッフは時間管理の意識を高め、業務を効率的に進めることができるようになります。時間内に終わらないタスクがある場合は、スタッフ間で協力して作業を分担したり、業務プロセスを改善するなど、工夫をしていました。

朝礼の活用法

(高山)朝礼で今日のタスクを共有し、時間内に終わらせることを前提として仕事を進めていくことで、マネジメントもしやすくなりますね。

(大西)朝の朝礼で、「今日は何を行いますか?」「何時に帰りますか?」といった確認を行うクリニックもありますが、多くのクリニックでは、院長が前日の業務の反省点や今後の予定などを話すだけで終わってしまうことが多いようです。朝礼は1日の区切りとなる場なので、「今日何をするか」「どのように頑張るか」を共有する時間として活用するべきです。前日の反省は別の時間に行うようにしましょう。

タイパ時代の働き方

(高山)タイパ時代において、スタッフにどのように働いてもらうか、スタッフの責任範囲と院長の責任範囲は大きく異なるという前提で、どのように考えていくべきでしょうか?

(大西)責任範囲は役職によって決まるものではなく、一人ひとりのスタッフが持つべきものです。院長は最終責任を負う立場ですが、各部門の責任は部門長が、患者に対する責任は担当のスタッフが負うべきです。それぞれの責任範囲を明確にすることで、責任感と主体性を高めることができます。

プロ意識の重要性

(高山)一人ひとりがプロ意識を持って仕事に取り組むことが重要ですね。

(大西)「パートだから」「新米だから」といった言葉で責任を放棄するのではなく、それぞれの立場でできる限りの責任を果たすことが求められます。ディズニーランドのスタッフはアルバイトですが、誰一人として手を抜いている人はいません。パートタイムだからといって責任がないわけではありません。「本業は主婦、副業はクリニックスタッフ」というように、仕事に対する意識が低い人もいるかもしれませんが、どんな仕事であっても、手を抜いて良い仕事はありません。

働き方改革の本質

(高山)クリニックの働き方改革は、どのように進めていくべきでしょうか?

(大西)働き方改革とは、短い時間で成果を出すための改革です。責任を放棄したり、やらないことを増やすための改革ではありません。時間から成果へのコミット、つまり意識改革が必要です。そのために、予定を立てて実行し、そのサイクルを繰り返すことが重要です。

ゴール設定の重要性

(高山)これまでの「昨日の続きで今日がある」という考え方から脱却し、「今日中にこれを完遂する」という意識を持つことが大切ですね。

(大西)ゴールがない予定は、期限がないのと同じで、いつまで経っても終わりません。常にゴールを設定し、そのゴールに到達するための時間を短縮していくことで、生産性を高めることができます。「この仕事は1日で終わらせる」「半日で終わらせる」「3時間で終わらせる」「1時間で終わらせる」というように、具体的な目標を設定することで、働き方改革を進めていくことができるでしょう。

(高山)働き方改革は、単に労働時間を短縮することではなく、限られた時間の中でいかに成果を最大化するかという視点が重要なのですね。

(高山)本日は、クリニックの働き方改革の実際についてお話しいただきました。大西さん、ありがとうございました。

(大西)ありがとうございました。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。この番組への感想は「#院長が悩んだら聴くラジオ」でXなどに投稿いただけると嬉しいです。番組のフォローもぜひお願いします。この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたPODCASTでお会いしましょう。さよなら。

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