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自院の強みを探る(1)―立地・医療機器・性格―_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード44全文書き起こし

DOC WEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

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(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第44回始まりました。大西さんよろしくお願いします。

(大西)よろしくお願いします。今日のテーマは何ですか?

今日のテーマ:人気のクリニックになるにはどうすればいいのか~ポジショニングとUSP~

(高山)今日のテーマは、前回に引き続き「人気のクリニックになるにはどうすればいいのか」です。
今回は特に「ポジショニング」と「USP」についてお話ししたいと思います。

(大西)重要な回になりそうですね。頑張りましょう。

(高山)人気クリニックになるための第一歩として、前回は「セグメント」「ターゲット」「ポジショニング」の重要性について触れ、ペルソナ設定についてお話ししました。

今回は「USP」、戦略論でいうところの「強み」について考えます。クリニックならではの強みとは何かを定義し、そのために「ポジショニング」、つまり競合の中で自院がどのような立ち位置にあるのかを明確にしていきます。

これがUSPの戦略論です。この戦略論は、クリニック経営にも当てはまるのでしょうか?

クリニック経営における4PとSWOT分析

(大西)「4P」や「4C」といったマーケティング用語は、クリニックの先生方も意識されていると思います。医療マーケティングでも、「プロダクト」「プライス」「プロモーション」「プレイス」の4Pはよく議論されます。

(高山)4Pを決めるための土台として、「STP」や「USP」といった考え方があります。

(大西)先生方との最初のミーティングでは、SWOT分析を作成することから始めます。

(高山)SWOT分析、聞き慣れない方もいるかもしれませんね。

(大西)医療業界ではあまり馴染みがないかもしれません。「強み」「弱み」「脅威」「チャンス」を分析するフレームワークです。

現在の外部環境を考えると、開業はチャンスと言えるでしょうか?

(高山)チャンスしかないように思います。

(大西)私も追い風を感じています。病院に比べてクリニックは自由度が高い。

クリニック開業はチャンス?

(高山)病院と比べてクリニックの自由度が高まっている、ということですか?

(大西)そうです。様々な取り組みができるようになってきています。

(高山)クリニック開業のチャンスが広がっていると言えるでしょう。

(大西)以前は「開業は大変ですね」と同情されましたが、今は「いいですね」と羨ましがられます。病院に残る方が大変な時代です。

(高山)「いいな」と思われるポイントは、どんなところでしょうか?

(大西)例えば、ある病院の小児科で、最初は3人の医師で診療していたとします。1人が開業すれば2人になります。

少子高齢化の影響で医師の補充が難しいため、1人、また1人と抜けていくうちに、小児科自体が閉鎖される可能性もあります。

先に開業した方が、負担が少ないうちに独立できます。疲弊しきってからでは、開業は大変です。

(高山)病院に残る医師の気持ちとしては、辛いですね。

(大西)だからこそ、開業できるということは、良い立地が見つかった、スポンサーが見つかった、資金が貯まったなど、様々な好条件が揃ったということです。

タイミングが重要です。今はクリニック開業に適したタイミングと言えるでしょう。

クリニック開業を後押しする要因

(高山)クリニック開業がしやすい環境になっているのは、なぜでしょうか?

(大西)まず、長らく低金利が続いていたため、資金調達が容易だったことが挙げられます。

また、地域によっては開業に適した場所が存在します。

(高山)そのような場所があるんですね。

(大西)医師の高齢化が進んでいる地域です。

例えば、ある耳鼻科のあるエリアに3人の医師がいますが、全員80代です。これはチャンスです。

(高山)開業医の高齢化が、なぜチャンスになるのでしょうか?

高齢化と世代交代のタイミング

(大西)後継者がいないからです。世代交代のタイミングです。

以前は医師の引退は60代でしたが、今は70代、80代まで診療を続ける先生もいます。

そこに真新しいクリニックが開業すれば、高齢の先生は引退しやすくなります。

(高山)なるほど。M&Aの会社が増えているのも、クリニックの商圏拡大や後継者不足が背景にあるのでしょう。

後継者がいなくても、近くに新しいクリニックができれば、安心して引退できますね。

クリニック開業ブーム再来?

(大西)その通りです。クリニックは戦後、次々に開業しました。1945年から60年代、70年代、そしてバブル期まで開業ブームが続きました。

その世代の医師が、今まさにリタイア期を迎えています。クリニックの大量リタイアは、これまで経験したことがない事態です。

令和に入り、団塊の世代が75歳を超え、大量リタイア時代が到来しています。これがチャンスです。

診療圏調査の落とし穴と人口動態の重要性

(高山)興味深い視点ですね。初めて聞きました。

(大西)医療は人口動態と密接に関係しています。開業したものの、全く患者が集まらないケースもあります。

診療圏調査は、必ずしも正確ではありません。

診療圏調査は、5年前のデータに基づいていることも問題ですね。

5年の間に街は大きく変わります。青森の先生がこんな話をしていました。近くにイオンモールができて、商店街の客足が減り、シャッター街になってしまったそうです。

人々の行動パターンが変わってしまったのです。買い物は近くのスーパーから、週に一度のイオンモール通いになりました。

地方ではよくある話です。百貨店が次々と閉店しています。医療もこれと似た状況です。

(高山)医療は公共サービスであり、街づくりでもあります。大型商業施設ができれば人流が変わり、クリニックも対応しなければなりません。

(大西)街づくりという視点は重要ですね。街と共に医療機関も成長します。ある地域に歯科医院が1件開業したとします。

当時は小さな町でしたが、20年後には歯科医院が6件に増え、街も大きくなりました。医療機関は、街の成長と共に発展していくのです。

開業にあたっては、その地域の成長性を見極める必要があります。

立地と長期的な視点

(大西)立地が重要です。

(高山)立地選びのポイントですね。

(大西)開業後30年間をどう過ごすか。街が成長するのか、衰退するのか。長期的な視点が重要です。

開業後の移転という選択肢

(高山)一度開業したら、そこで骨を埋める覚悟が必要でしょうか?

(大西)難しい問題です。移転して成功するケースも多いので、状況によっては立地を変えるのも良いかもしれません。

(高山)診療圏調査の結果を過信して開業したものの、実際には人通りが少なく、移転を余儀なくされるケースもあります。

調査結果と現実が異なる場合もあるのですね。

診療圏調査を鵜呑みにしない

(大西)新患が想定の半分以下の場合もあります。診療圏調査はエリアを指定して行うため、川や一方通行などの細かい情報は考慮されていません。

車社会では、一方通行は大きな影響を与えます。開業前に自分で歩いて調査するなど、自分の目で確かめることが重要です。

立地だけでなく、どんな患者をターゲットにするかも重要です。前回のペルソナ設定の話にも繋がるのですが、地域の医療機関との関係性も考慮すべきです。

他のクリニックとの差別化:専門性

(高山)他のクリニックとの競合関係ですね。

(大西)同じ診療科目でも、専門分野が異なる場合があります。「内科だけど、あの内科とは違う」といった具合です。

診療科目は細かく分類されます。例えば内科であれば、循環器、消化器、呼吸器、生活習慣病などがあります。

地域に循環器内科がなければ、チャンスと言えるでしょう。

高山)標榜科目に加えて、専門分野を深掘りしていく、他にどんな強みがありますか?

(大西)先生たちが、自分の専門分野だけでなく、他の医師が苦手とする分野を把握しておくと、地域医療への貢献に繋がり、感謝されることもあります。「この分野は苦手なので、助かります」といった具合です。

これは、医師同士の紹介にも繋がります。クリニック間の紹介はしやすいのですが、紹介状が出ないケースもあります。

気軽に「〇〇の症状なら、あのクリニックが良いですよ」と紹介してもらえる関係性を築くことが重要です。どんな患者を診たいか、自分の専門分野は何で、その地域にその専門分野に詳しい医師がいるか、などを把握しておきましょう。

開業する際は、必ず同じ診療科の先生方に「私の専門は〇〇なので、ぜひ紹介してください」と伝えておくべきです。

(高山)そうすると「助かる」と言ってくれる先生もいれば、「そこは私も得意分野だ」と反発されることもあるかもしれませんね。

(大西)そうした場合、事前の情報収集が甘かったということになります。

開業前の挨拶は必要?医師会との関係性

(高山)開業前に、地域医師会などに挨拶に行くべきでしょうか?

(大西)本来はそうすべきですが、開業は秘密主義という風習があるようです。卸業者も口外しませんし、建築が始まってから情報が流れることが多いです。

「〇〇クリニック建設予定地」と書かれていても、何科のクリニックかは分かりません。

後で「耳鼻科ができるらしい」「皮膚科ができるらしい」と噂になるのです。先に挨拶に行けば良いのに、と思います。

(高山)なぜ行かないのでしょうか? 医師会から圧力がある、などの懸念があるのでしょうか?

(大西)もしかしたら、医学会が新規開業を妨害するケースもあるのかもしれません。

(高山)実際はどうなのでしょうか? 医師会の方に聞いてみたいですね。

(大西)医師会が新規開業を認めないという話を聞いたことがあります。

(高山)本当にあるんですね。医師会にも力関係があるのでしょうか?

(大西)あるようです。

(高山)この前、ある先生から「この地域は古い体質の医師会が残っているので、気をつけた方が良い」と聞きました。

どのような医師会なのか、何に気をつければ良いのかは分かりませんでした。

(大西)面白いことに、医師会も変わりつつあります。団塊の世代の医師が引退し、団塊ジュニア世代が理事になる時代です。

変化する医師会とIT化の波

(大西)50代、私と同世代の医師が理事になるケースが増えています。以前の医師はITが苦手でしたが、最近の医師は若いのでITに抵抗がありません。

「大西さん、仕事がたくさんありますよ」と依頼されることも増えました。50代の医師から、70代の医師にITを教えてほしい、という依頼もあります。

(高山)医師会の理事が、IT担当者から依頼を受けるということですか。

(大西)国から「オンライン資格確認を普及させるように」という通達が医師会に届きます。理事は理解しているものの、70代の医師に「オンライン資格確認を導入しましょう」と伝えるのは難しいようです。

「やりたくない」と拒否されるケースが多いです。

(高山)確かに、今更新しいシステムを導入するのは大変ですよね。

(大西)「あと5、6年で引退するから」という理由で断られることもあります。外部の講師を招いて講演会を開いたり、YouTubeで解説動画を探したりする医師もいます。

医学会からの依頼は、以前はほとんどありませんでしたが、最近は年間10件以上あります。

(高山)医学会も変化の時期なのですね。クリニックの強みは他にありますか?

クリニックの強み:設備、医療機器

(大西)設備や建物も強みになります。医療機器も重要です。目玉となる医療機器を導入するのも良いでしょう。

(大西)脳神経外科であればCTやMRIなどです。高額な医療機器を導入することが強みになるのか、近隣の病院に紹介状を書く方が良いのか。

状況によって判断が必要です。「欲しいから買う」というのは、経営的には問題です。

(高山)先生としては、欲しい医療機器があれば導入したいと思うのが普通ではないでしょうか。

導入前に考えるべき、医療機器の採算性

(大西)しかし、採算が取れなければ意味がありません。例えば、高額な医療機器を導入したものの、1日に10枚しか撮影できなければ、赤字になってしまいます。

近隣の病院から「うちを使えばいい」と言われれば、断るしかありません。最近は、医療機器のレンタルを行うクリニックも登場しています。

(高山)レンタルですか?

(大西)放射線クリニックなどが、画像診断装置のみを提供するサービスを行っています。

地域の医療機関に「うちで撮影しませんか」と営業をかけています。他に、健診に特化した健診センターなども強みと言えるでしょう。

医療機器にこだわりすぎる先生もいます。先日も、内視鏡は持っているが、内視鏡超音波が欲しいという先生がいらっしゃいました。

強みとなる医療機器の具体例

(高山)内視鏡超音波とは?

(大西)内視鏡と超音波を組み合わせた医療機器です。膵臓がんの早期発見に役立ちます。

内視鏡だけでは膵臓がんを発見できません。MRIなどで検査する必要がありますが、内視鏡超音波であれば、早期発見が可能です。

(高山)それは強みになりますね。

(大西)高額ですが、効果は絶大です。内視鏡に超音波機能が搭載された一体型もあります。

他の診療科目の強みとなる医療機器

(高山)なるほど。他に事例はありますか?

(大西)精神科では、脳波計の有無が強みになります。アルツハイマー病などを診る先生は、MRIを導入したがる傾向があります。

脳の萎縮を調べたいからです。脳波計は脳の波形を見るための機器なので、神経系の検査に強みがあります。

循環器内科であれば、カテーテルなどを導入することで強みになります。

眼科であれば、3D検査機器など、投資が必要な分野です。

医師の性格とクリニックの雰囲気

(高山)ツールを使わわずに強みを作ることはできますか?

(大西)強みは、設備投資だけでなく、先生の性格も関係してきます。

(高山)性格ですか?

(大西)医師の性格とスタッフの性格は似ていることが多いです。

開業時に、自分と似た性格のスタッフを集める傾向があるからです。

無意識のうちに、似た者同士が集まってしまうのです。

あえて逆の性格のスタッフを採用すると、辞めてしまうことが多いです。

性格は強みにも繋がります。

先生の性格に惹かれて、患者が来院するケースもあります。

クリニックでは、よほど特殊な医療を提供していない限り、技術の差はそれほどありません。

一般的なクリニックでは、医師の性格が強みとなります。

強みを活かす、言語化の重要性

(高山)医療の本質ではない部分で患者が集まるのは複雑な気持ちになりますね。

(大西)だからこそ誤解が生じやすいのです。「優しい」「丁寧」「迅速な対応」「話が上手い」、少ない情報で患者を納得させるのも強みです。専門分野も強みになります。

これらの強みを意識して活用することが重要です。強みを言語化し、理念に繋げることが大切です。

開業前に強みを明確にしておかないと、「自分の強みは何だったっけ?」と迷子になってしまいます。

どのような軸を設定するか、自分で縦軸と横軸を決め、強みを見える化し、分かりやすい言葉で伝えることが重要です。

第三者に意見を求めるのも良いでしょう。開業前にインタビュー形式で強みを引き出すことで、先生自身が強みに気づくこともあります。

(大西)スタッフの強みもありますが、それはまた次回にお話ししましょう。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。

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この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。

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