To me 20240811
わたしのなかの山荷葉
永い心の雨を吸い込めば
しあわせと呼ばれる花弁は透明に
雨にうたれてしまったなら
白を失う前に容易に散りゆくそれは
透明でも目には見えなくても
確かに咲いているのだと
気付いてしあわせと名付けた人はだれ
冷たく湿気ったひとけのない高地にそっと息衝く
容易くは会えない姿に親愛という言葉を与えたのはなぜ
わたしのなかの山荷葉
教えて
どうしてそんな場所を選んで
触れられれば花を落とし
雨露を吸ったなら消えていきながら
しあわせも
親愛も
誰にも定義されない
〈あなた〉だけが形作る
わたしに出遭う
わたしのすきな藤鼠色をしたその実は
小さな中にいくつもの種を抱え
そして
甘いのだと
そういわれている
「味見?
いいえ、遠慮しておくわ。
大丈夫、
わたしは眺めているのが好きなの。
ありがとう。
だからお気遣いなく、
あなたはどうぞ、おひとつ召し上がれ。」
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