dear diary 20240325 パンのかけらをわたしに、光る小石をあなたに。

陽が東へ沈む国で生まれた者がいた
星に逆らう人を止める事はしない
あなたももう、行くのでしょうか

陽が西から昇る朝に月を追うのはわたし
一緒に沈みゆくのをどうか止めないで
あなたの手も触れずに行こうか

石橋を叩いて叩いて叩いて壊す
もう戻らないで
追うこともしないから
前も見ず歩いて歩いて歩いてただ歩いた先
もう戻れないな
道なんて覚えていないから

わたしの落とした紫色の影をどうやって見つけたの
見えない目で、子どもみたいな指で、ざらついた声で
…つかまえないで

こんな生温い夜から太陽を拾ったんだって
青いおそらに閉じ込めておけばいいのに
影と引き換えに月を隠していく
わたしは月を見失っていく
御伽噺は溶けて
今と混じって

わたしたちはヘンゼルとグレーテルじゃなかったみたい
だって、
光る小石も甘いお菓子のおうちも宝石も
帰りをよろこぶ者も
全部、無かったんだよ
それなのにこの物語からどうして抜け出せない

陽が東へ沈む国で生まれた者がいた
変だと笑う者を許すことはしない
あなたの小さな拳を包みたい

陽が西から昇る朝をわたしたちは止められない
沈みゆく月に手を降ってくれる?
その拳を大きく開いて 少し背伸びして
わたしたちが大切にしていた月を
わたしは還ってしまった同じ場所から
あなたは辿り着いた場所で
一緒に見送りましょう
二度と昇らない月を

この御伽噺がちゃんと終わりますように。

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